見出し画像

書評:「Deep Skill」が予想以上にディープだった

ディープスキルとは、人と組織を巧みに動かす、深くてさりげない技術

DeepSkillとは何か?:社内政治力


ディープスキルとは、「人と組織を巧みに動かす、深くてさりげない技術」。
私の言葉で表すと「社内政治力」が最も近いかなと思います。
社内政治力というと、したたかで、ずる賢いイメージを持つ方もいらっしゃるかと思いますが、帯にあるように「ずるさ」ではなく「したたかさを磨け」というのが、まさに本当にそれ、だと私も思います。

その要素として、個としては、「話し方」「思考法」があり、上としては「抜擢」「組織力学」、そして付き物なのが、「裏切り」「対立」「権力」という、帯に書いていることがまさにそれ。

・・・ということで「DeepSkill」という本を読んだのですが、あまりにディープで語りたくなってしまったので、この度、愛を込めて6000字超えの書評を書いちゃいます💛

本はこちら:


人間心理と組織力学:清濁合わせのむ

この本には出てきませんでしたが、私はよく「これは清濁だね」と、「清濁」というキーワードを使っていました。「清濁合わせのむ」の略です(笑)

本当はこれがやりたいけど、上が望むことをしないと進められない、だから不本意でも、時間がかかってしまっても、両者が叶う形で行こう、という判断をする時に使う言葉。

それはまだもう少し上の視点になれていない時の話で、上(経営側・出資側)の視点、バードビューで語ると「人間心理」「組織力学」という表現になると思います。

今の私は、両者の気持ちがわかるので、「人間心理」「組織力学」という視点で語れますが、普通は自分の気持ちでいっぱいいっぱいです。
そこまで達観して動ける様になるには、そこそこ失敗経験量なのか、サポーターが必要だと思います。

「したたか」に働く:上司をうまく利用する

ずるいと上司に嫌われるし、
信頼がないと上司に信じてもらえない。
上司は助けたくても、組織の風向きにより助けられない時がある。
上司を立ててコミット感出すには、一枚上手であるべし。

これは、私も全部経験してきました。
上司がいての私。組織の風向きを読んでの動き。

基本、上司は味方です。
味方なのに、敵や邪魔者のように思うのは本当にもったいないので、そこで上司と対立するのは不毛すぎですが、上司にとってもうまく利用されてなんぼの世界、上司をうまく利用できるのは一枚上手な証拠なので、それができるとDeepSkill上級者、社内政治力高め社員。最高ですよね!

上司は対立するのでなく、うまく利用すべし。

目次だけでもDeep!
わかりみが深いです
本当にそれ!の連続。
したたかトークも共感しかない

「余計なことを言って気を悪くされるよりも、味方につけておいた方が得」
本当にそれ、です。

グッとこらえて、何が目的合理性にあっているのか、冷静に判断して進めること、私もよくあります。

余計な正論をぶつけている現場を見たら、私はその場では何も言わず笑顔で対応、敢えて数時間後立ってから、清濁の話をフィードバックすることが多いです。

冷静になれずにカッとなって余計な事を言う、熱くなっているところで火に油を刺すよりも、冷めてから振り返った方が気づきがある事が多いからです。

清濁と言うのもポイントで、本当は清濁と言っても両者「清」と思っているが、それを説得しようと思っても頑固な人は無駄なので、濁と割り切ってしまう。濁過ぎて我慢できなかったら切り札だってあることも伝えると、気が楽になります。当事者なら「退プロジェクト」、上なら「クビ」ですね。

退社の選択肢を持てるのは、結構なプロ人材

「のらりくらりとかわしつつ、別の作戦を実行するパターン」は、上級者。
それをしながら、退社の選択肢を持てるのは、結構なプロ人材。
新卒入社の若手でそれができるのはなかなかの逸材。大人の選択肢だと思います。
自分の中での確固たる成功パターンがイメージできるのであればアリだと思いますが、初めての経験でその作戦を取るのは危険すぎ。

退路を断つのではなく退路を作るのも一手ですが、本人のキャリアフェーズにもよるので、よく考えた方が良いと思います。

「正論ですよねー、でも現実的にはどんなアプローチだと、動きそうですか?」と聞くこと多いです。

「正論ですね!で、実際にどうやって進めます?」「多分、正論ぶつけても、相手は思うように動くイメージ、私はないです」
と、正直フィードバックすると、理解してもらえることが多いです。

そうそう、実践的な知恵!


波風を立てる:危機感を煽る


「このままじゃヤバいよ」と煽って組織を動かすのは、変化を嫌がる組織では難題です。

ただ、新規事業がうまく進まない組織は、変化を嫌がる組織
特に経営陣が変化を嫌がっていたら、新規事業など誰も意思決定しないし協力もしてくれません。

新規事業を頑張る会社の共通点は、経営者が「このままじゃヤバいよ」という危機感を強く持っていること。

新規事業が頓挫する会社の共通点は、経営者が変化や失敗が怖くてチャレンジを進められないこと。

社長自身が危機感を感じて動くパターンもありますし、社長以外が動き出すことも。仕掛ける人が社長以外の場合は、波風のたて方が非常に重要になると私も思います。

波風!

私も「風を吹かしてくれる存在」と言われる事が多かったです。

この組織に新しい風邪を吹かしてください!
と、よく言われました。

その風がうまくいくこともあれば、うまくいかないこともありました。

うまくいく時は、勝ち馬に乗りたい人たちが協力してくれる時。
うまくいかない時は、孤立するパターン。

その要素の殆どは、もちろん数字や実績もありますが、政治力ある「上」を味方に付けられるか、なのだと思います。

会社で「深刻」になるほどのことはない:金と睡眠があれば、心病むほどの事はない

人にもよると思いますが、社内起業は心病まなくても良い、事業開発の絶好の場所だと思います。

金問題が無い


ケースにもよるかもしれないですが、特にお金の心配がないので、起業家がよく話すような「預金残高が・・・」「社員に給料払えない・・・」「借金ウン億・・・」という問題がありません。

その分、大金持ちになるという可能性や夢はありませんが、そうなった所で人生激変して幸せが壊れるリスクも高まるので良し悪しは人次第。

睡眠不足問題がない


勤務形態も会社に守られているので、起業家が陥りがちな生活リズムの乱れ、例えば「休み無しの徹夜が続いて寝れていない・・・」「お昼まで寝て、午後から朝まで仕事」という事も、ほぼあり得ません。

その分、コミット量が限られてしまうので、起業家には負けてしまうこともあると思いますが、使えるアセットもあるので、良し悪しは人次第。

健康が害されず、お金にも困らず、幸せが壊されないチャレンジができる社内起業は、最高だと私は思います。

社内起業でも、裏切られたり、変な人がいたり、ひどいことされたり、騙されそうになったり、色々ありますが、上記記載のように人を狂わせる金問題・睡眠不足問題さえなければ、あとはRPGレベル。

その時は大変でも、時間が経てば「トークネタ」です。

弱者でも抜擢される戦略思考:マイノリティだからこそ抜擢される戦略

これは私が言うと説得力あるのではないかと思います。

女性で、若くて、キャリアもコネも無い、圧倒的武器不足で戦闘力低い私が、どうやって戦闘力高いエリートと戦えるのか?
弱者の私は、戦い方を選ばないと生き残ることはできません。

私のことを知る人は、もしかしたら「椿さん弱者なんだ」と思う人いるかもしれませんが、社会的に見たらまだまだ圧倒的弱者です。

どのタイミングで弱者ではなくなるのでしょうか。おそらくそれは持つ「肩書き」なのかもしれません。

弱者の戦略は、勝てそうな土俵で戦うこと。


戦略とは競合優位性
私は総合的に基礎戦闘力が低いので、土俵や敵をよく見て、勝てない所では戦いません。

どこの土俵であれば勝つことができるか、選びます。
時には、小さくても弱くても土俵を自分で作ることもあります。

だから私も、新規事業を伴走する時には、競合優位性を常に言語化して、強みを活かした戦い方で勝てるイメージを軸に、戦術をプランニングしていきます。

他社の「脳」を借りて考える:壁打ちで巻き込み、広げる

ー壁打ちしてもらうー これは私の生存戦略。
迷ったり止まりそうになったら、オンラインでもアポを入れる。
私の考えをオープンにしてダイレクトにフィードバックをもらう。
フィードバックを貰ったら、次のアクションが見えてくる。
あとは実行あるのみ。それを繰り返すと、必ず進化します。

「壁打ち」はmtg依頼のテーマとして頼みやすい



どうやってお時間を頂くかの声の掛け方として、「壁打ち」は目的がわかっておすすめです。

「相談」というと重いし、求めるだけのスタンスがずるい。聞いて欲しいのか、アドバイスが欲しいのか、何をして欲しいのかよくわからない。

「雑談」だと、時間泥棒のよう。

「壁打ち」だと、率直にフィードバックして相手の役に立つようなことを正直に伝えて、自分も思考トレーニングやインプットができてプラスになり、少しフェアな感じ。

相手がどう感じるのか考えてしまって頼みにくいと、結局行動できないので、なるべく相手にもメリットがあるような内容にしたいという力が働いてしまいます。

壁打ちの最低条件として自分の考えをまとめて、調べて、伝えて、少しでも相手のインプットとなるようにすること。そうすると、自分のインプットにもなり、自信を持って壁打ちができます。

ちなみにこの壁打ちというもの、どういうことかというと、後で出てきますが、

事実+仮説=意見なのですが、どう思いますか?

という話をします。
意見を求めるからには、「事実+仮説=意見」というのを言語化します。

そうやって事前に言語化していても、新たな質問やフィードバックで、必ず新たな発見があります。
また、思考の優先順位の違いや思い込みにも気づきます。

ロング空回りより、ショート空回り


まずは先程の壁打ちの言語化で陥りがちなのが、ロング空回り。
要は、準備しすぎてながーく空回りしてしまうこと。

新規事業開発は、空回りしがちです。正解のわからない中突っ走るので、空回りは日常茶飯事。

突っ走るのは必須条件ですが、ロング空回りは無駄です。
空回りは不可避ですが、やってみて空回りに早めに気づくことが、回転数を増やすポイントだと思います。
だからおすすめは、ショート空回り。

よく、誰にもうまくいかないと言われたけれど、自分を信じて続けたら大成功したというエピソードがありますが、そういう人も、自分の中では確固たる自信を持てる裏付けがあるわけですよね。
何をもって空回りかと判断するかも、量をこなして学びがあります。

ショート空回りにプライドは無用



そうそう、壁打ちが苦手な人はプライドが高い人。
「中途半端な状態で見せるのは恥ずかしい」
このパターン、多いですね。

9割の完成度で30点のロング空回りより、
6割の完成度で60点のショート空回りで、残り40点を磨いていった方がいい。

ショート空回りの必須条件は、行動量。

逆に、行動量がないと、情報も得られないし説得力ないですよね。
現場の情報収集、SNSでの情報収集、情報収集力は、説得力と相関関係。

事実+仮説=意見
この事実の量と質、そして仮説の深みが、意見というか事業ストーリーになりますよね。

機嫌の良さ、私は必須だと思っています。
特に弱者は機嫌が良い人じゃないと、誰も近づいてくれない(笑)
顔色を伺ってもらうような関係性より、いつもオープンでフランクな方が好きです。

企画力と風向き


社内の風向きを呼んだ企画力。
これは社内政治力、レベル5くらいでしょうか。

私のような外部の人間は、この風向きがわからないので、だいたい
「勝手に客観的SWOT」をシェアして、トップや幹部の本音を聞く、というプロセスで、だいたい風向きがわかります。

社内のキーワードを設定していればわかりやすいのですが。
私が現場の事業責任者をしていたときは、Qや月ごとにキーワードを設定することが多かったです。社内の共通言語にするために。

撤退基準を決めておくことは、組織として大事。


社内ではない起業は、お金が無くなった時点で終了。
社内起業は、様々な事情でお金が枯渇するという現状に陥りにくいので、終了ポイントがないのがデメリット。

撤退基準をおかずに、なぁなぁに続いてしまうのが一番危険です。

既に会社で撤退基準があれば良いのですが、無いと初めのうちから基準を決めるのはなかなか難しい。

「やり切った挑戦の上での失敗は賞賛される」



私は心から賛同するし、私も同じようなカルチャーで育ったので大いに共感なのですが、このカルチャーがない企業でこのカルチャーを浸透させるのは、なかなか一朝一夕でできるものではありません。
このカルチャーの浸透を、トップも伝え、体現しながら行うというのが実現性高いアプローチだと思います。

できる大人のディープスキル

ところで私のDeep Skillは?


偉そうなことを書いていますが、私のDeep Skillはどんなものでしょう。
レベル10が最高であれば、レベル8くらいでしょうか。いや7かな。

今でも、周りの顔色を気にしないので、パワーバランスを上手に読んだり、権力を味方につけるような器用さや想像力は高くはありませんが、

弱者としてのポジショニングと、他者の脳を借りること、達観思考、失敗を強みにするのは得意です。

レベル10の方はどんな方かというと、百戦錬磨の大企業経営者出身の方は、明らかにレベル10。
本当に上記Deep Skillがすごいです。
特にパワーバランスや権力の動き、風向きを深読みする力が魔法レベル。
占い師かと思うくらい「観察力」「読み」がすごい。感動レベルです。


そして、20代の私にこの本を読ませてあげたいですね。

圧倒的弱者な私は、社内政治に正面からぶつかり、そして負け、土俵を変えて生き残れる場所を探し続けていました。

特に商社時代は上記ディープスキル、レベル0ですね(笑)

とはいえ商社時代にディープスキルを磨こうとして、ゴルフ漬けでお酌して気に入られるように動くような適応能力が無くて、よかったと思います。

むしろ早めに土俵を変えて、Deep Skillがなくても、弱者でも、抜擢される環境に移って、若くして土俵に立てたこと、そこからの経験量が膨大だったことが、最高の強みになったと思います。

私もまだアラフォー。60代まで20年もあります。

経験の量でDeep Skillの深みが増すと思いますので、どんどん経験を重ねて深みを増していきたいと思います!

こちらの本では、大ベテランで私もとてもリスペクトしている著者の石川さんの頭の中を言語化していただき、とてもディープで貴重なインプットになりました。
さらっと読めましたが、語りたくなる内容で最高でした。語らずに書きましたので、共感して頂ける方はlikeでもシェアでもコメントでも是非反応いただけると嬉しいです!

本はこちら:
https://www.amazon.co.jp/dp/4478116733/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?