『チェルノブイリの祈り』感想文
📕『チェルノブイリの祈り』感想文
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※著者のスヴェトラーナ・アレクジェーヴィチさんは、ロシアのウクライナ侵攻に対して批判声明を出しているノーベル賞受賞作家です。
下記の感想文は、5年前の2017年3月に私が書いたブログ記事を、加筆修正したものです。
「原発の爆発」の直後、消防士として駆けつけた夫は、信じられないほど大量の放射能を浴びていた。彼は2週間後に亡くなったー。
本書の第1章は、その消防士の妻のインタビューで幕を開けます。
入院中の夫の元にかけつけた時、周りの者や医者は
「夫に触れるな。近づくな。君にも病気が移るぞ!」
と止めます。
しかし彼女は夫を抱きしめ、キスをし、
放射能のせいで外見の変わり果てた彼を見ても、気丈に笑顔を見せ、最後まで看病し続ける。
「だって、私の愛する夫ですもの」
「夫を愛していました。私たちは新婚でした。幸せでしたー。」
…本書は、チェルノブイリ原発事故の悲劇の記録であると同時に、誇り高き、愛の記録です。
恐ろしい事故が起こりました。それでも、愛する人を最期まで愛し続ける勇敢な人々を描いた、美しき叙事詩でした。
このような事故を二度と繰り返してはならないと思います。
自分が同じ立場に置かれた時に、家族を守り抜けるのだろうか?
ーそう、自分自身に問いかけながら、涙なしに読めない本でした。
まず日本語訳を読んでから、英語訳も読みました。
どちらの言語で読んでも、詩のように美しい文ということに、変わりはありませんでした。
ルポとしてはもちろん、文学的価値も高い文体です。
そして、平和への願い、政府の隠蔽への怒り、それを告発する勇気に溢れる本でした。
チェルノブイリ原発事故の被爆者と、その家族への、数々のインタビュー。
政府関係者やマスメディアでなく、普通の住民、被害者の家族達に丁寧に取材することで、多くの事実を浮き彫りにしています。
男性は「政府の隠蔽工作、ずさんな対応への憤り」を。
女性は「夫や子供への気遣い、家族への愛」を吐露しています。
どちらも私達が耳を傾けるべき声だと思います。
私がこの原発事故について初めて詳しく読んだのは、
中学の頃に毎週買っていた「少年マガジン」の「危険な雨」という漫画でした。
チェルノブイリから発生した黒い雲が、大都市モスクワに流れるのを阻止するため、
ソ連政府は近隣の小さな農村に人工的に雨を降らせ、
何も知らされなかったベラルーシ・ロシア・ウクライナの農村の人々が、今でも病気に苦しんでいる・・・。
信じられない事実が描かれていました。
この漫画を読んだ時、当時中学生だった私は、「何なの、それ⁉︎」
怒りのあまり、目の前が、真っ暗になりました。
どうしてこんな酷いことが起こっているの?
被害にあった人たちの気持ちを考えると、悔しくて、やるせなくて、涙しか出ませんでした。
ところが、日本人中学生の私が、漫画を読んで、事件の周辺の話を知っていたのに、
本書「チェルノブイリの祈り」は、著者の本国のベラルーシで、出版されていないというのです。著者はノーベル賞を受賞しているというのに、現在はドイツに亡命し、執筆活動を続けています。
恥ずかしながら、私自身がこの本を知ったのは、著者のノーベル文学賞受賞がきっかけでした。
事件の詳細が世界的に注目されるまで、あまりにも長い時間が経過しています。
当時はネットが普及していなかったとはいえ、権力者が意図的に情報操作・隠蔽することに、改めて危機感を感じています。
本書はまさに、「読まれ、語り継がれるべき本」だと思います。
🌸 スヴェトラーナ・アレクジェーヴィチさんについては、3/18リリース予定の高校生用ニュース教材で詳しく取り上げる予定です。
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