行き着く先はドゥエイン様かコロッセオの剣闘士か
リビングでいそいそと服を脱ぎ始める夫。
突然、パンツ一丁になったかと思ったら、おもむろに片脚を突き出してきた。
「ねえ、ねえ、なんか大きくなったと思わない?」
夫の太ももに目をやる。
「……確かに」
夫は最近、ジムでマンツーマンの指導を受けている。
週に2回、指導時間以外の休憩時間も筋トレに励む指導熱心なトレーナーさんにみっちり鍛えられていた。
見ると太ももの筋肉がムキッと張っている。20代の頃こそ人並みに筋肉質だった夫だが、40代になった今ではまるでマッチ棒のようにどんどん痩せていた。それが、今や着々と古代ローマの剣闘士に近付いている!
これは、見せたくなるのもわかる。
「すごい! 筋肉ついてきたね!!」
当初は「なんでお金払ってわざわざ辛い目に遭ってるんだろ。意味がわからん……」なんてぼやいていたのに。
私は知っている。
そのセリフを言い始めたら、筋トレ沼に片足突っ込んだようなもんだと。
自分では気づいてないかもしれないけど、あなた、2日に1回は「効果出てきたよね?」って聞いてるからね。
大腿四頭筋(太ももムキっ)、大胸筋(胸パーン)、上腕二頭筋(力こぶもりもり)、三角筋(肩メロンがなるところ)、筋トレで鍛えまくってるところ見せまくってるからね。
腰痛対策で始めたとはいえ、自分で気付いてないみたいだけどもう筋トレにハマってる状態だからね。
夫の気が変わらないよう、静かに見守りつつ応援しよう。
あわよくばドゥエインジョンソン様くらいになって、私を片手で軽々持ち上げられるようになったらいいな。
そうなったらわが家の剣闘士にグラディエーターサンダルをプレゼントしよう。