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蛇をのぞく時、蛇もまたこちらをのぞいているのだ

ここ最近、朝起きて鏡を覗くと、メデューサが立っている。
前日の夜、どんなに完璧に髪を乾かして寝ようが、丁寧にブラッシングしてようが関係ない。

お前の思い通りになどなるものかという、確固たる意志を感じる。

肩にも届かない長さだというのに、急激に得体の知れない生き物になってしまう。

寝癖直しスプレーをシュシュッと吹きかけ、ドライヤーをそっと当ててみる。

ただでさえジメジメして蒸し暑い中、ドライヤーの熱を浴びせられ頭上のメデューサはますます勢いを増して暴れ狂っている。

なんでいうこときかないの。

早く身支度を整えて、仕事に行かねばならないのに。悠長にしている暇はない。

こうなったら暴力的解決だ。手にしていたドライヤーとブラシをかなぐり捨て、新たな武器の電源を入れる。

ほどなくして、使用可能のランプが点灯した。さっきは寝癖直しスプレーという助っ人がいたため手加減してやったが、今度は本気だ。

鏡の中でなお暴れ狂っているメデューサの一部をむんずと掴む。
200度の焼きごてではさみ、そのまま引っ張る。なんならよからぬ方向を向いていた者たちも収まりがよくなるよう若干内巻きに矯正。

私は試練に勝ったのだ!

残りのメデューサも次、また次と矯正してやった。

みたか、ヘアアイロンの威力を。

朝の長い戦いに終止符を打ち、電源を落とす。
冷ましている間に化粧をすませ、着替えをする。
まだ、余裕がある。
勝利の余韻に浸りつつ、日課の『虎と翼』を鑑賞。

ヘアアイロンも冷めたころ、ちょうど家を出る時間。

玄関を開けた途端に湿気と熱気が襲いかかってくる。外に出ただけで汗がにじむ、気持ちが悪い。

急いで車に乗り込み、21℃でクーラーをガンガンにかける。

ハンドルを握りしばらくすると、吹き出し口の風が冷風に変わった。安堵した。これで快適に職場に向かえる。

混み具合を確認しようとバックミラーを目をやった。鏡に映る自分の姿を見て愕然とした。

またメデューサじゃん……

闘いは今日も終わらない。

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