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まったく大人になれない話

「ご冥福をお祈りする」という言葉が、夜になって間欠的にぐるぐると巡る。心にしっくりとこない。眠れない。

あの世の福よね。ご冥福。

この世では、数々のあの世が描かれてきたけれど、我々の誰もが本当の「あの世」なぞまったく知らず、未知のままに死んでいく。

ご冥福。

あると仮定する「あの世」での福を祈ることが、社会的な生と生の間を容易に通過するための儀礼であるなんてことは、言葉にしなくたって全くもって、ぜんぜんわかっている。

闇の中で招き猫でも宙に浮かんでいそうな。おめでたいモチーフなのに、不穏な言葉。そこにあるのは好奇心の先にあるワクワク感ではなくて、すぐそこにあったのに気づきたくなかった、「失い」の表出だ。

いいたくない。なんかいや。ご冥福って。

なんと言ったってまだ、目が覚めない。
つい昨日には、ただただ的確に現状を再構築した言葉の中に、ゴーストの存在感あるねぎらいを聞いたばかりだったのだから。

毎日目覚めているけれど、私たちは、毎日のように眠るのだし。
起きていようが生きていようが、ご冥福はいつだってそこにある。
死なない限りは。

なんだかよくわからないけれど。
祈らずに ご冥福を手に かける夜。

今日の不眠が、終わりそうもない。

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