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この遊び心。まさに若冲。

出光美術館 伊藤若冲「鳥獣花木図屏風」をみてきた。


すごかった。

絵画構成をセル化したモジュールで試す。
デジタルにも通じるフレーム化とモジュール構成の遊び

フレーム化することとフレームを超えること。
その群像を通して全体の世界観を提示するというのがまた、面白い。

細かい区画化で手法を簡略化、試行錯誤を大量に試した結果、一枚の絵が人間の「ものの見方」のサンプル群の様相を呈している。加えてセルの反復・展開および超越、全体が存在する。

特に鹿の子に見られる面白い奥行きの作り方。
一見ピクセルやタイルのようなドット絵に見えて、セル内や枠を利用することによる全く別な表現としての奥行き。起こりうる偶然を試したのか利用したのか、錯覚のなせる技に見どころがある。筆の動きやリズムがむやみやたらとアナログであることも含めて面白い。

ひとつの枠の中での簡略化されたフレームの表現方法を試しているかと細かく見ているところには、鳥の眼や像の輪郭のようにフレームを超えた上書き。超越のインパクト。一筋縄ではない。

見ているだけでアイデアがどんどん湧いてくるような構成。
平面的なルービックキューブの動作展開をみているような表現。

同じ部屋の別の一角に『群鶴図』が展示されているのも、なお面白い。

よくぞ別次元のクオリティで「鶴」モチーフをパターン化&反復、緻密に再現するものだな。と、こちらの作風の方が若冲の本来と思われるが、しげしげとみてしまう。そうか、このモチーフのパターン化&反復が琳派っぽいのでここに展示してあるのだな。

絵なぞゆっくり見る暇もないといわれる現代人には、方法論的なモジュールモチーフの集積である「鳥獣花木図屏風」の方がワクワクするだろうが、ここにひとつ、本作があることでさらに驚きと感動がある。

「軍鶴図」では、さらなる緻密さによって、モジュールモチーフの集積であることが一見、隠されるためだ。

よくもまあ同じ人物の手で、まったく違う作風の絵、しかも見方によってはパターンがわかりやすい例をあげたものだ。見事に楽しい。
美術館のキュレーションにまで、若冲を踏まえたフラクタルが見えてくる。

この動画で紹介されていた宇多田ヒカルのPVも見てみた。
紹介と印象程度でピクセルの再現は追求されていない様子。各種異次元の表現なので、実物を見ないでおくのは勿体無い。

https://youtu.be/tBXVOjPMKaQ?si=V69YWSDvBfdnFKIq

社長室にこれの実物大レプリカがあるような企業で働いてみたい。

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