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エッセイ*未練タラタラの中華丼

割と最近の話。

zoomで社内のなにかの説明会があって、参加者が50人近くいたと思う。

こんなにいるなら寝ててもバレないかななどと思いながら聴きながしていたが、主催者が顔見知りだったため、話題を振られてしまった。

「椿さん!ここについてなにか意見ある?」などといった無茶振りだった。

あたふたしながら適当に答えた。

どうにもこういう説明会では無茶振りのリアクションを求められることが多い気がする。

少し疲れたので、帰宅して早めにベッドの上に横たわった。

しばらくしてスマホの画面が光る。

佐藤健の公式LINEかなと思った。

見慣れないアイコンだけど、私が最も目にしたかった名前の持ち主からLINEがきた。

「今日、いたでしょ」

目頭が熱くなる。

動悸がする。

どんなに連絡がほしかったか分からない。

でも急に来られても困る。

気まぐれ以外の何者でもないと分かりきっているのに。

頭の中を100通りの返信が駆け巡る。

もういっそ未読無視で寝てしまおうかとも思った。

だけど知っている。

彼はまるでシンデレラだ。

日付を越えて朝になれば、どんな返信を送っても、それに対してはおそらく何も返ってこない。いや見もしないだろう。

私は日付が変わるギリギリくらいの時間に、短く返信を送った。

返事はすぐに返ってきた。

軽く近況なんかを話しているうちに、
そういえばわたし、一人暮らし始めたよ、と話題を振った。

私の中の奥底で、もしかしたら彼がきてくれるのではと期待している。

へええ自炊なんかもするの?

期待した返事ではなかった。

するよ。するけどレパートリー少ない。
なんかおすすめある?

昔の癖からか?付きの文を送ってしまう。

中華丼

一言で返ってきたが、その後レシピを教えてくれた。

作れば写真を送る口実ができる。

作った。写真を送った。

だけど返事は来なかった。

仕方ないからそのまま食べた。

未練タラタラ味。

醜く足掻く惨めなわたしの中華丼。

ちっとも美味しくなかった。

レシピとコツを教えるなんて残酷だ。

恋心はもはやない。

だけどいまだに私は中華丼は作れない。

*あとがき

ああ、この人とは未来はないなと思う人とよく恋愛をしました。

そんな相手との間にトリガーとなるような記憶を残してしまうと、のちの人生に影響しますね。(中華丼ぎが食べられない😂とか)

個人的な見解ですが、どうでもいい女からの昇格はほぼ不可能。

足掻く恋愛は自らを傷つけるのだなと思いました。

といっても若いうちの恋心は止められないので、諦めがつくまで若いうちに暴れておくのが吉とわたしは思います。


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