同調圧力 〜日本社会はなぜ息苦しいのか〜
鴻上尚史 佐藤直樹 著 講談社現代新書
小さい頃から漠然と、集団で何かをするのが苦手、と言うか嫌いだと感じていた。
だけど周囲に合わせられない者は落ちこぼれ、将来社会に出て困るなどという雰囲気の中、必死にうまくやろうとしてきた。
だから息苦しかった。
しかしそこにはそれを息苦しいと感じることさえはばかられるような雰囲気があった…
これこそまさに同調圧力だったんだなぁ…
その頃に、同調圧力についての知識が少しでもあれば…だいぶ楽に過ごせたのかな…
確かな理由は見当たらねど、漠然とでも毎日の生活に息苦しさを感じている人にぜひ読んでもらいたい。
《「同調圧力」とは「みんな同じに」という命令です。同調する対象は、その時の一番強い集団です。多数派や主流派の集団の「空気」に従えという命令が「同調圧力」です。数人の小さなグループや集団のレベルで、職場や学校、PTAや近所の公園での人間関係にも生まれます。
日本は「同調圧力」が世界で突出して高い国なのです。
そして、この「同調圧力」を生む根本に「世間」と呼ばれる日本特有のシステムがあります。》p.5
世間を構成する4つのルール
①お返しのルール
・お中元やお歳暮
・結婚や出産に対しての内祝い。
・旅行でのお土産。
・Lineの既読無視が問題視される。
②身分制のルール
・部活の先輩後輩。年齢が1つ違うだけで片や王様、片や奴隷。
③人間平等主義のルール(強いねたみ意識)
・コロナ禍での自粛警察。緊急事態宣言下で営業店舗に嫌がらせの張り紙をするなど。
・有給を使って旅行に行っても社内では楽しかったと素直に言えない。「疲れただけです」「雨に降られました」などと言う。
④呪術性のルール
・香典半返し
・企業がビジネスで作った習慣、バレンタイン、恵方巻きなど。
そして。日本には「世間」の外にある「社会」に意識が向けられていない。だからネットで匿名の誹謗中傷などを平気でやる。
対して海外には社会しかない。だから海外では個人に重きをおく。日本では個人の前にまず「世間」がある。
同調圧力にはプラス面もある。「世間の目」が犯罪抑止力となっている。震災後の避難所での冷静な行動は海外メディアを驚かせた。
しかし、同調圧力によるストレスや息苦しさにより海外よりも自殺者が多い(特に若年層)。これっていい世の中と言えるのか?と著者も問いかける。
しかし、「世間」を日本から無くす事はできない。
日本語がそもそも世間だと著者は言う。
英語では1人称 I (アイ)
2人称 You
と1つしかないのに対し、日本語では相手によって複数を使い分ける。
また、日本の宗教が一神教でない事も原因か。
「世間」があたかも神のようになってしまっている。
ではどうすべきか?
《複数の弱い世間に所属する》p.157
例えば定年後みじめな生活を送っている元企業戦士について。
《会社という強い世間1個だけではなくて、会社に行ってるときから、例えば絵画のサークルに入るとか(中略) 要は自分をたった一つの強力な「世間」で支えようとしない、ということ。》
これって子どものイジメ問題にもよく言われていますよね。学校(すなわち「強い世間」)以外にも習い事など複数の居場所を持つことが大事だと。学校が全て、にならないようにと。
そして。
《息苦しさを与えている「敵」の正体を知るということです。》p.175
《息苦しさの正体は、あなたを苦しませているものの正体は、まさに世間であり、同調圧力。》p.175
《あなたは負けたわけでも、弱いわけでもない、「世間」から圧力を加えられているだけなんだから。けっして恥じる必要はないし、責任を感じる必要もない。》p.175
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