【きっとあれは初恋だった】

小学校高学年の頃
『オレンジ・プラネット』という少女漫画が大好きで、恋というものに憧れました。

その憧れからバレンタインを意識するようになったのですが
“恋をする”という感覚がどういうものか知らず、いわゆるイケメン男子なら誰でもいいと思い
好きでもないのに“本命”のチョコレートは毎年しっかり準備して渡していたのです。
恋に憧れすぎて、好きでもないのにラブレターを渡したこともありました。

そんなわたしが中学生になり、相変わらず異性を好きになるという感覚がわからずで
そもそも、わたしの地元は田舎の中の田舎で
同級生はわたしを含めて７人。
そのうち男子は４人で、もはや異性という意識さえなく
もちろんいじめなんかもなく、どの学年よりも平和で仲が良かったのです。
他の学年にイケメン系やカワイイ系男子はおりましたが
“かっこいい”“かわいい”と言うだけで、それ以外には何も感じませんでした。

ある日の授業中、私は今までに感じたことのない感情に出会いました。

技術の授業の時。

生徒たちが教卓の前に集まり、先生の指導に注目している中
わたしの目の前に男子がいて、わたしよりも背が高く教卓が見えにくいような状態でした。
その男子の背中の右から覗いてみたり左から覗いてみたりするうちに
なんだかだんだん背中から目が離せなくなってきて
先生の指導が耳に入らないような感覚になるのでした。

そして、突然“この背中に抱きつきたい”
そう強く思うのです。

あまりに強烈な衝動で、わたしは理性を保つため、先生の指導を聞くんだと必死で自分に言い聞かせたのを覚えています。

その甲斐あって理性を保ち、無事にその時間を乗り越えることができたのでした。

その男子は小学生の時に転校してきて同級生になり、目が二重で大きくて髪が茶色くサラサラで足が速く運動神経も良く
他の学年の女子からも当時人気があり
わたしも以前バレンタインで義理チョコを渡しておりました。

これが恋だとは気付かず
わたしは変態なのかもしれないと思っておりましたので
突然の感情に戸惑いつつ、この気持ちに蓋をしようと誓ったのでした。

その日から、その男子のことが気になりだしたようで
授業のチームが一緒になると嬉しかったり、放課後は他の同級生も含めて一緒に帰ってみたりと
今思えば完全に恋しておりました。

仲の良かった友達にも言わずだったのですが
初恋について、つい最近妹と話していた時
この思い出が蘇ったのです。

実はここ数年その男子が夢に度々出現するものですから、きっとこれは初恋相手なんだなと夢がきっかけで気づき
あの頃のわたしは変態ではなく、初恋だっただけなのだと安心したものです。

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