ええかげんにせーよ、というお話
ドローン界隈の問題
間違った呼び方を広めるな!という話です。ドローン界隈ではなんかしらんけど、ドローンは新しい画期的なものだから従来のものとは違う、みたいなんがはびこってまして用語の扱いが酷い。ので、ここに書いておきます。誰が見にくるか知らんけど。
その1 ローター問題
回転翼機における主翼は『ローター』です。ローターの各部は以下のようになっています。これはDJI Mavic Proのプロペラ。
そうです。『これ』全体を『ブレード』と呼ぶのは誤り。ブレードは羽1枚のことを言います。1丁って言ってもいいけど。でまあこれがプロペラ、、、え?プロペラだっけ?
本来プロペラは『推進機』の意味で推進力を得るのがプロペラです。船のスクリューもプロペラ。
だからドローンの場合でも回転翼は本来はローターと呼ぶのが正解です。ここで質問。これ何だっけ?
マルチコプター?マルチローター?
まあ大体において4枚羽ならクワッドコプターかクワッドローター機です。主翼は回る羽なんだからローターと呼ぶのが正しい「はず」。んじゃなんでプロペラって言い出したかというと、初期には「プロペラ」を使ってたから。なんじゃそりゃ?と思われるでしょう。今のようにドローン専用の部品が無い頃には飛行機用のプロペラを流用してたのでプロペラが定着してしまったのではないかと。だからこれはもうしょうがないとしか言いようがない。
だがしかしブレードはダメです。ブレード(単数形)で飛べるもんなら飛んでみなさい。いやまあ1丁ローターってなくはないけど。
その2 無線従事者問題
頼むから勝手に名前を付けるな。ほんとに。
"アマチュア無線4級"
なんじゃそりゃ!というか、そんな資格は存在しません。だって法律、政令、省令に書いてないんだもん。この件に関しては「どちらでもいい」という話はまったくなくって、公的な、しかも国家資格は正しく呼ぶ「しか」ありません。正しくは『第四級アマチュア無線技士』。略称は『アマ』なので『4アマ』。「アマ4」でもいいでしょ?という話はありません。もし、どうしてもそう書きたいのなら「正式名称は4アマですが私はアマ4と書く方が好みなのでアマ4と書きます」と注釈でもつけとけと。
同様に「特殊陸上無線」も存在しません。陸上、海上を含むやつは『特殊無線技士』。略称は『特技』。なので正しくは『陸上特殊無線技士』、略称は『陸特』。だから『第三級陸上特殊無線技士』は略称は『3陸特』です。
略号の記載方法は総務省の資料では各略号に第三級陸上特殊無線技士を陸特三、第三級海上特殊無線技士は海特三としているものもあるので、これは逆でもOK。ただし同じ資料でもアマチュアに関しては3アマ、4アマなので逆はNG。なお、記入すべき書類で略号を記入する場合には何を書くべきかの指示があるのでそれに従う必要があります。
無線従事者資格は電波法第4章40条
各種の特殊無線技士は電波法施行令第3条
その3 "免許問題"
無線の免許には局の免許や人の免許がヤヤコシイので云々言ってるところがあるのですが、その理解もないのに従事者を名乗るんじゃねえ、と言いたいところです。というわけでどうぞ。
電波法第2条第5項では無線局を
と、ありますね。え?見たことがない?おっかしいなこれ法規の頻出問題なのに。
まず『無線従事者』は正当な資格を有する『人』のことで、言い換えれば無線従事者資格を有する人のことです。
電波法第2条第6項
ただし、資格は有しているけど免許証を持っていないのはアウトです。なぜならば、無線従事者はその業務に従事している時には、免許証を携帯していなければならないからです。
電波法施行規則第38条第9項
無線従事者資格を要するドローンを操作中には免許証を携帯していないと違法となります。アマチュア無線は業務じゃねーだろ!と言いたいそこのあなた。電波法上の位置付けは『アマチュア業務』です。
アマチュア業務は電波法施行規則第3条第1項第15号
です。
『無線設備』は電波を出すことのできる機器なので、普通のラジコン式ドローンだと「受信のみを目的とする」ものなので無線局の要件には当てはまりません。テレメトリあるいはFPVで電波を出すことができるものは無線設備となります。(ラジコンで使われる送信機・テレメトリ付受信機で技術適合しているものは無資格者でも扱えるものです。この場合には無線局免許状等を必要としません。)
上記の無線設備+人に対して与えられるのが『無線局免許状』で、無線局に対して与えられる免許、つまり「無線設備及び無線設備の操作を行う者の総体」に対して与えられるのが『無線局免許状』です。
アマチュア局の場合には免許人=無線従事者です。つまり自分ちの無線設備を他の無線従事者に『貸す』ことは違法になります。なぜならば無線局免許状は無線設備+従事者(免許人)に対して与えられているにもかかわらず、その無線局に許可されている従事者以外が使用するからです。例えばFPVドローンで、アマチュア局の免許状が与えられているものを他の人に貸すことは、その人がアマチュア無線技士の資格を有していても違法です。ただしクラブ局(社団局)のように複数の従事者が操作することを許可されているものは別です。複数人で同一の機体を運用したいのなら社団局として免許を受ける手はあります。(家族で無線機を共用する手段は開局してる人ならまあ知ってるよね。)
※無線局(基幹放送局を除く。)の開設の根本的基準第六条の二の三『その局は、免許人以外の者の使用に供するものでないこと。』
なお、業務無線では『主任無線従事者制度』というものがあり、これは主任無線従事者の監督下であれば無資格者でも無線設備を操作してもよいことになっています。今のところこの制度はアマチュア無線局に対しては認められていません。
ただし特例があります。『FPVドローンの体験』利用については無線従事者の監督下(アマチュア無線技士でも)で行わせることが可能とされています(注:ドローンの場合についてのみです。アマチュア無線自体を体験させることができるものではありません)。
なお、『有料』の体験会(受講料を取るとか)をやってもいいかどうかは判断が難しいので総通にでも確認してください。なぜならば、アマチュア無線の商用利用はできないからです。ですが商用とは「金銭上の利益」であり、実費に相当する額であれば金銭上の利益とは見なされないので受け取ることは可能です。勝手判断は危険なので「こういう形態でこういう料金を徴収するが、どう判断すれば?」と総通等に確認するべきでしょう。
さらに誤解のある点として「アマチュア無線」の免許では商用利用できないので「陸上特殊無線技士」の免許を取るというのは誤り。アマチュア無線技士と陸上特殊無線技士のそれぞれの資格は『操作範囲』が異なります。このため陸上特殊無線技士の資格でアマチュア無線局の操作は行えません。ですので、そもそも「アマチュア局」として免許されているドローンは陸上特殊無線技士の資格では操作ができないので、アマチュア無線局として免許されたFPVドローンを操作することはできません。操作できないだけでなく、アマチュア無線局自体が商用利用は禁止されていますから、無線局そのものが商用利用できないので無線従事者資格によって商用利用可になることはありません。
商用利用したいのであれば陸上特殊無線技士の操作範囲で業務無線局として免許されたドローンが必要となります。
理解した?
試験の問題に出てなかったから『知らない』ではすみません。無線従事者免許を持っているのなら当然知っていることが要求されています。
さらに何か見た:『無線機の免許』。そんなものはねぇ。アマチュア無線の場合は『無線"局"の免許』。無線"機"には免許されません。無線機を使うために必要なのが "無線従事者免許" 。その上で無線局の免許が必要です。
2022/11/16 追記。
今後、法改正により無線従事者の監督下で無資格者によるアマチュア無線局の運用が可能となるかもしれません。その場合、本記事は法と整合しなくなりますが、投稿時の情報として修正せずに残しておきます。