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市販のワイヤレス温度計

まずはダメな話

ダメな話からします。最近、ワイヤレスの温度計売ってますね。安いのも。室内の温湿度に加えて屋外や別な部屋の温湿度も測れて便利ですが、うかつに手を出しちゃダメです。特に安いやつ。通販系で結構お安く売ってるのがありますがね。
なんでダメなのかというと電波法違反なんですよあれらは。実は安いのは433MHz帯の電波を使うやつが多くてアマチュアバンド内で勝手に送信してるので免許を受けないで使うと違法(資格もないと違法)になるからです。んじゃあアマチュア無線の免許があればいいのかつうと、そう簡単な話ではなくて、アマチュアバンド内で送信するには免許を受けないといけないだけでなく、コールサイン(呼出符号)を付けないとダメなんです。コールサインを送出できるように改造する?んなことしないよね。仮に改造できたとしても今度は電波の『質』が問題になるので、そう簡単な話じゃあないっつうことです。
割と安直に入手できるので注意してください。使うことは『違法』です。

何買えばいいの?

では何を買えばいいのか。日本国内で免許を受けずに使用が許可されているのは「特定小電力」タイプのやつです。特定小電力はトランシーバ等にもありますが、ある周波数帯である出力までのやつなら免許を受けなくとも買って勝手に使ってもかまいませんよ、というタイプです。ただし『技術適合証明』を受けている必要があります。"技術的"にはOKであっても技術適合証明、いわゆる技適を受けていないと使用は違法になります。
ワイヤレスの温湿度計で自分がみた範囲のものだと、315MHz帯の特定小電力タイプがこれにあたります。
温湿度計は"テレメータ"の一種ですから、下記リンクに示されている周波数帯が特定小電力で使える周波数帯となります。

別表9-1 テレメーター用、テレコントロール用及びデータ伝送用特定小電力無線局の周波数表

ただし、繰り返しになりますが特定小電力に周波数や出力など技術的には適合していたとしても技術適合証明を受けていない無線設備は勝手に使ってはいけません。

素人にはわからん!

そうですね。わかりません。なので適合していないものを売ることを違法にしろという意見があるのも知っています。なぜ売ることが合法なのに使うことが違法なのかは説明しませんが世の中にはそういうものがたくさんあります。
では買う側としてはどうすればいいのかというと基本は簡単で、技術適合証明、要するに技適を取得しているものを買えばいいのです。そんなんわからん!となりそうですが「ちゃんとしている」メーカーなら、ちゃんと書いてあります。
例えば以下の製品
ドリテックのコードレス温湿度計です

[仕様]のところを見ると"技術基準適合証明番号"というのがあります。そこをみると
O-429(子機):(R)211-221006
と、書かれています。この番号を取得しているのであれば技適を取得していることになります。まずはこういう情報をチェックしてください。

別なもので以下の製品

こちらはWebの仕様のページや取説には書いてなさそうです。そんな場合には総務省の以下のページで調べることができます。

シチズンですと子機、つまり送信する側の型番は"TR-THM527"となっていますので、"型式または名称"のところにTR-THM527と入力して検索してみてください。もし出てこない場合には「技術適合証明書等の種類」の箇所のチェックボックスをすべて付けて検索してみてください。
で、結果なのですがこの場合はシチズン自体が適合証明を取得しているわけではなくOEM/ODM元あるいは送信モジュールのメーカーが受けていることがわかり426MHzの特小であることがわかります。

あーめんどくさい。そんなめんどくさいことしなくちゃだめなの?と思うでしょ。そりゃまあそうです。まあでも基本の判断基準は簡単です。『名の通った日本メーカー/ベンダー』ならまあ間違いありません。ドリテックとかシチズンならみんな知ってますよね。そういうところならまず間違いはありません。とにかく、よくわからんメーカーのを安いからといって買って使うと違法になる可能性があるよということです。

ここからはちょっと技術的なお話になります。

315MHz テレメータ面白そうじゃない?

普通の場合は送信機と受信機を同一メーカーのものでペアにして使うので何も気にしなくても使えるのですが、どんなデータを送っているか気になりませんか?私はなります。

んで、用意したものはSDR(RTL-SDR)のドングルと適当なアンテナ。試しにドリテックのものを受信してみることにしました。
ドリテックのものは2~3分間隔で子機、つまり温湿度計が送信しているらしいのでSDR用のソフトウェア(この例ではSDR#)を使って、315MHzで「張って」待ちます。そうするとこんな感じでたまにデータが飛んでいることがわかります。電波が飛んでいるのを確認するだけならば、このあたりの周波数が受信できるレシーバーでもかまいません。

中心周波数をよくよく観察すると314.995MHzにあることがわかります。
そこで次にRTL433というパッケージを使います。自分の場合はLinux(Raspberry Pi4)でRTL-SRDを使っているのでapt-getで一発インストール可能。

sudo apt-get install rtl-433

をするだけ。
このパッケージ何物かというと433MHz帯のデータをデコードするというやつで、さまざまなセンサーやらに対応しています。なんで433MHz帯かというと、海外ではここを使ってるものが多いため。名前こそrtl-433ですが、周波数は明示指定すれば315MHz帯でも、もちろん使えます。
ドリテックの温湿度計なら以下のようなコマンドでデータを受信/デコードすることができます。

rtl_433 -f 314.995M -C si

-f は周波数指定、-C は単位系の指定で、摂氏で表示するなら単位系は"si"にします。なお、.confファイルは作らずコマンドライン指定のみで動かしています。
しばらく待っていると以下のような感じでデータが受信できます。

これはrtl-433が「知っている」センサー「だろう」ということでよしなにデコードしてくれているのですが、たぶん「中身」的に同じものが使われているのではないかと思われます。モデルとしてはBresser-3CHで、ちゃんと温度と湿度がデコードできています。
だいたい、この手のワイヤレス温湿度計、親機1に対して子機複数という構成なのですが、子機1に対して親機複数という使い方はできないので、こうやってデコードできると便利じゃないかと思います。だって、例えば屋外温度を居間と書斎とか別な場所でも見たいじゃないですか。
もっともこれやつるにはSDRのドングルとRaspberry PiみたいなLinuxマシンが必要になってしまうのですけれども。

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