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掃き清めから1日が始まる。まさに禅の境地

インド先住民ワルリ族の村にホームステイをさせてもらうようになって知ったこと。ニワトリのコケコッコ〜は、あたりが真っ暗なうちから響き渡るということ。そして土間で啼く声は鼓膜直撃の爆音だということ。

コケコッコ〜の次に訪れるのは、シャッシャッという終わりなき環境音。謎だった。しばらくして、執拗とも思える早朝のシャッシャッは、ホウキで掃く音だとわかった。

ワルリ族の村に訪れるようになって瞬く間に9年がすぎた。街のホテルから通ったのは初回だけで、再訪してからは、自然と村の中でホームステイさせていただくようになった。

きっと家に泊まらせてもらわなければわからなかったと思う。先住民の人たちは本当に掃除を欠かさない。ある朝、寝ぼけまなこで見ていたら、小雨降るなか、家の前にある畑も掃除していた。赤茶色の土はほっこりしている。その上には余分な葉っぱ一枚落ちていない。牛が通れば、この土の上に糞をする。それはカゴに大切にしまわれる。自慢の牛たちも、車好きの人の車を連想させるほどピカピカだ。この村が異様に美しいわけである。

日本の禅寺は、空気がぴんと張っている。あの感じ。確かにあの村にあった空気感と同じだ。

ホームステイさせていただいたお宅のお父さんは、身体を直すシャーマンで、時々ごはんも作るし、鶏もつぶすし、ホウキも作っていた。

写真は彼が作ってくれたホウキだ。「市場で売っているのよりずっと丈夫だよ」と。椰子の葉で作ったホウキは使い込めば小さくなって、最後は卓上ホウキにしてもいい。これもまた、そこにあるもので作る美しいもののひとつと言える。

スーツケースにいれて大事に持ち帰った。


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