やよいの湯、フィンランドサウナができたとのことで、ひとっ風呂浴びてきた。
「どうやら改装中のやよいの湯には、フィンランドサウナが導入されてしかもロウリュができるそうだ」
昨年の師走の事である。そんな情報がこの街に飛び交い、そしてサウナ―達がどよめいていた。奇しくもサウナ事情が良いとは言い難いこの近辺、昨今のサウナブームで利用者こそ増えてはいたがハード部分での物足りなさが浮き彫りになっていた。そんな最中に届いたこのニュースにどれだけの人が胸をときめかせ、目を輝かせまだ見ぬやよいの湯サウナに想いを馳せただろうか。
新装開店は1月5日。
待ち遠しかったものの、混雑に辟易している僕は近寄りたいのに近寄れない狭間にいた。かわいいあの娘に近づきたいけど、みんながチヤホヤしてて近寄りがたいあれだ。(あれか?)
やよいの湯には2種類の大浴場(和風・洋風)があり、フィンランドサウナは洋風風呂に設置されている。男女で曜日ごとに交互に利用できるシステムで、男性は偶数日にフィンランドサウナ部屋こと洋風風呂を利用できる。
今日は偶数日やんか、と1日おきに気になっていた。気になっていたのに、近づけなかった。
一方で、今日の僕はなぜかイライラしていた。誰かが悪いわけでは無い。怒りの対象があるわけではない、しかし、業務の電話が鳴るたびにどんどん雁字搦めになっていく様で、仕事を頂けるのはありがたいと思う反面、こうして一生が終えていくのかと思うと半ば絶望のような怒りを感じていた。強いて言うなら、この怒りの対象は自分自身に対してであったように思う。夕方業務時間が終わるころには、そうした気持ちが臨界点を迎えていた。
何かを発散したい、内なる衝動のようなものが溢れていた。
「そんな時はサウナに限る」
妻の一言が、僕を気になって気になって仕方がなかったやよいの湯へと誘った。
到着は20時10分、ものすごく残念なことに「本日の営業時間は21時まで」という表記が目に入り、萎えそして焦る。お風呂にインしてから1時間は必要なのに。3ループは難しいか。
期待と焦りを胸に脱衣室へ向かうと、筋肉パイセン(胸厚が凄い)がひとっ風呂浴びた直後だった。ニカっと笑いながら「よく来るん?」と。
改装後は初めての旨を伝えると、「それなら20時半からロウリュやけん、入っとった方がいいよ」と教えてくれた。
筋肉パイセン優しい。
そそくさと服を脱ぎ、体を清めあたりを見渡す。おや、噂のフィンランドサウナはどこだろう。
これまで見慣れたサウナ室(こちらは遠赤外線)の横に、見慣れぬスペースが表れていた。「メディテーションサウナ」と書いてある。
僕はサウナ室で大声で会話する人が苦手で、むしろ嫌いですらある。その会話のせいで誰かの”ととのい”を奪っていることを自覚してほしい。
そこに来てのメディテーション(瞑想)とは、なるほど「黙れ」ってことか、素敵すぎる。
中に入ると、むぁっとする杉の木の香りが鼻をくすぐる。父が大工をしていて製材を手伝っていた時の記憶がフラッシュバックしつつ、懐かしくもとてもいい香りで充満している。
ちなみに佐伯市の森林組合は、持続可能な林業を目指して生育から伐採製材迄一貫して行っており、東日本でも名の知れた林業地帯でもある。直見杉などのブランド木材もあり、そうした関連性をサウナを通じて感じられるのはなかなかに心憎い演出だと思った。
肝心の温度は80℃、噂では温度が低いと聞いていたが体感的にはそんなことは無く、良い熱量を感じた。
フットライトのやや薄暗いサ室の真ん中に鎮座するのは「METOS IKI」。人工石のサウナストーンがその円筒に敷き詰められた様は、美しさの中に強さを感じさせる。石の隙間から煌々と赤く光る熱源が顔を覗かせている。かっこええ。
その鉛直上には、どうも俺がオートロウリュですと言わんばかりのノズルがそのサウナストーブの上部を飾っていた。
なんか知らんけど、ため息がでて思わず笑みがこぼれてしまった。
サウナストーブと対面し、押し黙りその形状を見つめる。汗がにじみ、額を、胸をその軌跡が流れていく。
それはもう突然に。
2本のスポットライトが眩しいほどに明かりを照らし、その中心のサウナストーブを照らした。(いや、ほんとに眩しい。)
例のアレが始まるぞとボルテージが一気に上がる、さぁロウリュはどうなるんだい!
バシュッッッ!!
破裂音に近い音に、凄く驚いた。凄く驚いた!(2回目)
ノズルからは拡散ミストが降り注ぎ、サウナストーンに降り注ぐ。ミストのシュシュ―音とサウナストーンが蒸発させるジュージュー音が混ざり合い、豪快に室内の湿度を一気に上げていく。
湿度を伴った熱波が顔から体からを包み込み、発汗が更に促進させらる。
ロウリュの醍醐味たる、湿度を伴った熱波がとても気持ちよく体を包みこむ。汗が、拭きでる。
誰だ、ロウリュサウナの温度は低いって言ってたのは。
水風呂を求めてサ室から飛び出た。
浴場には見当たらず右往左往していると、露天スペースに「水風呂に入る前は汗を流してください」の文字が。
おや?外?
出てみると、露天風呂が3スペースもある。たまたま湯船につかっていた知人に、「水風呂どこです?」と聞いてみると。
「これぜーんぶ、水風呂!」と、ニカっと笑って教えてくれた。ちなみに筋肉パイセンではない。サウナ―はニカッと笑うみたいだ。
洗面器で露天の水をすくい体にかけると、確かに冷たい。
ざぶんと浸かり冷水に体を締めてもらう。あぁぁぁぁ、声が漏れる。
ふと横を見ると、ブクブクと泡立つスペースが。こ、これはもしやバイブロというやつでは。
もともと寝湯で使用していたスペースがそのまま水風呂になっている。温度の羽衣をぶち破る泡の効果、気持ちよすぎる。ホントーに、ナイスアイデア。
整いイスに腰掛け、冬の夜空に煌めく星々を眺めながら、日中に感じていたイライラ感が消失していることに気づく。
だからサウナはやめられない。
今日は入店時間が遅く、2ターン半でしたが、”ややととのい”を感じることができました。
佐伯市にできた、フィンランド式サウナ、是非ともご体験をば♪
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