忘れられないカメラ
プロカメラマン10年目、やっと周りの視界が晴れてきたように昔できなかった事、やりたかった事をポツポツと思い出してやりだすようになりました。
その前まで恥ずかしいことに目の前のことにがむしゃらすぎてこんな事は出来なかったのです。やっとスタートラインのようなそんな気分で生きています。
突然ですが私には忘れられないカメラがありましてね。ポーランド製の変な形のカメラなんです。卵型でクリッとしていてカラーリングもかわいらしい飴玉みたいな洒落たカメラなんです。35mmフィルムを使えるので今でも誰でも使えます。
欲しかったのに当時20000前後、独立したばかりでとにかくお金がありませんでした。
都会の片隅の細い路地を通ると人知れずある中古カメラ屋で売られていてお金のない私は泣く泣く離れたのです。
35を使うにしろカメラなんてデジタル時代、そんなもの使わないだろうって物欲を抑えて10年、やっぱり忘れられなくて初めて店主に声をかけました。
10年前に買えなかったカメラが欲しい、今でも入荷してるのか画像を見せて。
昔は話しかけにくくて話しかけれなかった店主はあの頃よりなぜか簡単に話しかけれた。私が老いたからかもしれない。
店主は笑顔で「一年前にはあったなぁ、今でも入荷する時はあるからおいでよ」と優しい声で言ってくれた。
一年前かー!誤差で行ってたら出会えたのに!と悔しい気持ちで帰宅の途について衝動的に文を書いているのですが、このカメラにはいつ私は会えるのだろうか。
会った時素直に買えるだろうか?未来は何もわからないけどこのカメラ屋でポーランド製の変なカメラを買う時私は一歩また大人になっている気がする。