MFクラウドとfreee

”MFクラウドとfreee”から1年

1年と少し前の2018年10月17日、僕はクラウドチップスという「クラウドツールのチップスを共有する」という勉強会的な集まりで、登壇しました。ネタは特に指定されたわけではなかったのですが、Evernoteのネタ帳を眺めてチョイスしたのが、この「MFクラウドとfreee」でした。

"MFクラウドとfreee"の背景

「ネタ帳?!」と思われた方も多いはずなので、少し背景も説明しておくと、「自分の知識や考え方をまとまった形で外に出していく」ことを税理士受験生をしているときからちょこちょこやっており、WordPressでブログを作ってみたり、Mediumで書いてみたり、いくつかのメディアに寄稿してきました。なかなか継続ができずに、書いたり書かなかったりを繰り返してきたのですが、「書くネタを思いついたときはとにかくメモる」ということはずっと続けており、それを眺めながら文章を書く、ということをやってきたわけです。

そのネタの中で「これはたぶん面白いけど、文章で伝える自信がない」ということでお蔵入りしていたのが「MFクラウドとfreeeを値段や機能じゃなくてコンセプトの違いから比較する」という内容です。今でもそうですが、「MF freee 比較」とかでGoogle検索すると、いくつも比較記事がヒットしますが「仕訳をちゃんと入れたい人はMF」「仕訳とかが分からない人はfreee」みたいな表層的な比較記事ばかりで、僕が感じている2つのソフトの違いを適切に説明したものはありませんでした。

会計業界というのは職人芸の世界であり、非常に閉鎖的な社会です。ソフトウェアも垂直統合型で、スイッチングコストは高く、1回囲い込んでしまえばそこから継続的に収益が上げられるという典型的なパッケージ産業です。T◯Cなどは「クラウド会計を推進するなら除名する」などという昭和の価値観を今でも大真面目に振りかざしていて、僕が好きなIT界隈のオープンな雰囲気とは真逆です。(そういう背景もあって、税理士事務所からITベンチャーに転職してたりします)

税理士や事務所の職員は、この業界でしか働いたことがない人が多く、ITリテラシーも高くありません。なので、そこをターゲットにした「旧式パソコンとの抱き合わせ販売」のような詐欺商法がまかり通ってしまう業界でもあります。

MFもfreeeも会計ソフトとしては後発でありながら、Webブラウザで使える完全クラウド型、銀行やクレカの明細の取得、自動仕訳ルールによる処理という機能で、短期間で中小企業のユーザーを確実に増やしてきました。正直、リリース当初からこの2つのソフトがものすごく優れていたとは思いません。圧倒的なユーザー数を誇る既存の会計ソフトも、ユーザーが「便利!」と感じるこれらの機能を開発することは可能だったはずです。例えば、クラウド会計の代名詞とも言える銀行やクレカの明細の取得ですが、技術的には2000年代前半にアカウント・アグリゲーションとしてほぼ確立されており、それを会計取引に変換することは可能だったはずです。でも、やらなかったのです。そして、MFとfreeeの台頭を許した、ということになります。

台頭といっても、クラウド会計のシェアは日本ではまだ10〜15%程度。XeroがシェアNo.1であるオーストラリアなどではクラウド会計のシェアは80%を超えると言われています。エンタープライズ領域は処理の複雑さやセキュリティ、データ量などの関係でまだまだオンプレ型会計ソフトの独壇場だと思いますが、中小企業においては、これから10年のスパンでは日本でもクラウド会計がスタンダードになっていくと僕は感じています。

"MFクラウドとfreee"の恩恵とこれから

さて、そんな思いで作ったスライドでしたが、何気なくSpeakerDeckにアップして、Twitterでシェアしたところ想像を遙かに超える反応をいただきました。同業者である会計士・税理士はもちろん、freeeやMFの中の人、そしてさらにはSaaS界隈の人まで、概ね好意的な反応やコメントをいただき、作成者として嬉しい限りです。

もともと税理士だけで勝負していくつもりはなかったのですが、このスライドが一定の支持を得たことで、仕事として確立されていない「業務設計」という分野でやっていこうという覚悟もできました。また、初対面の人にも「MFとfreeeのスライド見ました」と言っていただくことも増えてきて、ネットワークもこの1年でもの凄く広がりました。

まだ何者でもなかった自分が、このスライドによってこの1年は本当に助けてもらった、と感じています。自分で作ったスライドで「助けてもらった」というのも変なのですが、一度リリースしたものは自分とは別のものだと考えているので、文字通り「MFクラウドとfreee」のおかげです。

昨年設立した会社も2019年9月で一期目が終わり、二期目に入りました。いつまでも「MFクラウドとfreeeのスライドを作った」人では終わらないように、これからの1年はバックオフィスとSaaS、業務設計と業務効率化という分野で多くの企業をサポートできる存在になっていきたいと考えています。

まだ、詳細は詰めている最中ですが、2019年12月にはこの1年で感じたスモールビジネスにおけるバックオフィスの課題を解決することができるサービスのリリースも予定しています。

これからも引き続きリベロ・コンサルティングをよろしくお願いいたします。

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武内俊介@業務設計士
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