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2024年度 ぶんなり森人キャンプ ご報告②【活動について】

担当:大豆村 伸也(まめむら しんや) 【キャンプネーム】しんちゃん

「ぶんなり森人キャンプ」。担当の大豆村(しんちゃん)です。
前回は食事や洗濯といった【生活について】書きましたが、今回は、それ以外の時間。つまり、森の中を散策したり、川で遊んだりといった【活動について】の投稿です。1ヶ月という長い期間で、子どもたちがどんなことに挑戦し、やり遂げてきたのか、担当者目線で印象に残ったことを中心にまとめていきたいと思います。最後まで読んでいただけると嬉しいです。

【そもそも、ぶんなり森人キャンプでの活動とは】
 参加する子どもたちは「川で釣りをしてみたい」「虫を捕まえたい」など様々な思いを持って参加しています。なので、日ごとの活動は私たちスタッフが事前に決めているのではなく、毎日の子どもたちの話し合いをもって決まります。つまり、いろいろなことができ、うまくいかなくても再挑戦できるということがこのキャンプ最大の特徴です。
どうして、子どもたちの様々な「やってみたい」を叶えられるのか。それには2つの理由があります。1つは、白川郷には森や山、大きな川から小さな川、池や湖といった多種多様で魅力的な大自然が広がっているため、活動に適した場所に行くことができます。そしてもう1つは、そんな白川郷の自然が好きで働く私たちスタッフやそこで生まれ育った村民など、様々な大人が活動に関わり、専門的なスキルや知識を補いながら一緒の時間をすごすことができるからです。
様々な環境で、様々な人と交わることで、できることは無限大。時間もたっぷりあるので、失敗しても大丈夫。挑戦し放題です。

とはいえ、決まっている活動もあります。キャンプ中盤に行う「JAPAN TRAIL を歩く30kmの旅」とキャンプ最後に行う「72時間ブッシュクラフトキャンプ」です。これらは子どもたちにとって大きなミッションであり、チャレンジになりました。この2つについてはこの記事の後半で紹介します。

【印象に残った活動① 私が落ちるための穴】
 突然ですが、私は以前まで当校のYouTube動画の担当をしていて、少しだけ動画撮影や編集ができます。そんな私のことを知った子どもたちが活動で「動画を作ろう」と決めた日がありました。はじめに、どんな物語にするか、キャッキャ キャッキャと子どもたちの中で話し合う時間がとられました。細かなところはつながらないものの、とりあえず「しんちゃん(私)が悪者になり、落とし穴に落ちる」ことだけが決まりました。どうしてそういう流れになったのか、子どもたちは「落とし穴を作りたくて、動画をつくるのか」「動画の中でしんちゃんを落としたくて穴を掘るのか」今となっては覚えていません。ただ言えることは森の中で大人1人隠れるほどの穴を掘るのはとても大変だということです。地面の中は土だけでなく、石や木の根が複雑に絡み、固まっています。道具は準備できるものの子どもたちの体力やモチベーションが完成までにもつのか、活動をはじめるまでとても心配でした。

 さて、スコップなどの道具をそろえ、いざ本番。掘る場所はできる限り、木の根などがなく、動画にした時の背景などを考慮し、子どもたちが決めました。作業の進め方は11人全員がスコップを使い同じ場所を掘り始めると、狭くケガが起きる恐れがあったため、作業する人と日陰で休む人に分かれ、交代交代で掘ることになりました。さあ、準備は整いました。いざ、落とし穴づくりスタートです。

交代交代、みんなで協力!大きなスコップで土を削り、小さなスコップで小石を拾い、バケツで土を外へ。徐々に穴は大きく、深くなっていきます。そのモチベーションはどこから来るのかと不思議に思ってしまうほど、はじめはやる気に満ち溢れていました。

しかし、案の定、長くは続かず、スピードは遅くなり、作業する子どもたちから笑顔が消えてしまいました。それは子どもたちが悪いのではなく、とても天気がよく暑すぎたのが大きな要因でした。やる気はあるけど、できない。一緒に作業する私も安全とのせめぎあいの中、頭を悩ませました。

そんな中、1人の男子が「タープ張ろうよ」とナイスアイディアを出してくれました。恥ずかしながら、その考えが浮かばなかった私からすると「たしかに!さすが!」と盲点をつかれたような気分でした。なにより、自分たちの活動は自分たちが主役であることをしっかりと意識し、その時間をより良くしようと頭を働かせていたことに感心!他のメンバーもその意見に賛同し、みんなでタープを張りました。

作業場が日陰になり、さあ、作業再開です。大きな石がとれた時は歓声があがり、疲れた人がでてきたら、交代の掛け声があり、「こうした方が早いんじゃない?」など新たなアイディアがでたりと当初私が持っていた心配は払拭され、子どもたちの頼もしさ、たくましさに驚かされっぱなしでした。
午前と午後と合計5時間くらいを使い、見事に私がしゃがめばすっぽりと収まる大きな穴が完成しました。達成感に満ち溢れた子どもたちの表情は今でも忘れられません。

さて、作った動画はというと、、、
一般公開はせず、私達だけの楽しみにすることで決まったので、ここでお見せすることはできません。ただ、どんな物語か簡単に説明すると、、、
私はお酒(料理酒やみりん)を飲みながら子どもたちを馬車馬のごとくこき使い、暴言を吐きまくる悪者。森人たちは私をこらしめようと作戦会議をし、落とし穴に落とすことで合意。作戦決行日、私を優しい言葉で誘い、手を引きながらどこかへ連れていく森人たち。私が連れて来られた場所には大好物のおにぎりが。私は一心不乱にかけよるとそこには落とし穴があり、ズドン。上から水をぶっかけ見事復讐を成し遂げた森人たち。びちょびちょになり、泣きながらおにぎりを食べる私。チャンチャン。という感じです。
(↑あの時のことを思い出しながら文章にしたので、書きながら笑ってしまいました)

【印象に残った活動② 水路でダム(プール)づくり】
 拠点となる合掌家屋を取り囲むように流れる水路は子どもたちにとって、足を浸からせ涼むためのものになったり、アカハライモリなどの水生生物を捕まえ、観察する場所になったり、飛び越えられるかどうかの度胸試しとして利用されたりとキャンプ中、子どもたちにとって特別な場所になっています。
 ある日、1人の男子のアイディアで「この水路の流れを止めてダム(プール)を作ろう」となりました。何のために作りたいのか理由を聞きましたが、野暮な質問だったようで、返ってきた答えは「楽しそうだから」でした。子どもらしく、純粋で最高な発想ですよね。

 この日はもともと、テントやタープ張りの練習をする予定で、天気もよかったため、水路をまたぐようにタープを張り、落とし穴づくりの時のような辛さを味わわないよう、作業がしやすい環境をつくってからスタートしました。

この活動が私の中で印象に残っている最大の理由は、落とし穴づくりの時と違い、私が道具を準備し、安全のために手順を指示するようなことはせず、全て子どもたちの話し合いだけで作業が進んだことです。発起人の男の子がリーダーとなり、「落とし穴づくりででた石を拾ってこよう」とか「すき間を埋めるために草を集めよう」など、全員がそれぞれ役割を見つけ、やることを見出し、協力する姿が見られました。みるみるうちに水路の水は塞き止められ、深くても足首くらいまでだったのが、太ももまで浸かれるほどの水深になりました。

 さて、このダム(プール)は作り終わった後、どうなったかというと、、、作り終わったその日の午後はプールのように使いました。全員で水を掛け合い、全身ビショビショになるほど遊び、暑い夏にぴったり。みんなで最高に盛り上がりました。
 その後、水路を飛び越えるための足場として利用されたり、水生生物を飼う場所として利用されたりしました。

ただ、この活動でひとつだけ残念に思っているのは子どもたち自身に片付けをしてもらうことができなかったことです。最後まで遊び場所として利用できたため、片付けのタイミングを逃してしまいました。1カ月間のキャンプが終わり、子どもたちが帰った後、私が片付けたのですが、草は腐敗していたようで、かなり臭いました。この臭いを子どもたちにもかいで欲しかった。これは嫌がらせしたいのではなく、水の流れを止め、汚れがたまることで、水質はどう変わるのか。白川郷の川はキレイで臭いが気にならないのに、都市部の流れのゆるやかな川がどうして臭うのかを体験的に学ぶことができたのではないかと思います。学びの場を作れなかったことが私の中の心残りです。森人たちにはぜひ、嗅ぎに来て欲しいと思います。(笑)

【JAPAN TRAIL を歩く30kmの旅】
 キャンプ中盤、子どもたちには大きなチャレンジとして「JAPAN TRAIL を歩く30kmの旅」がありました。これはトヨタ白川郷自然學校から30km離れた場所にある大白川という場所をスタート地点とし、日本全国をトレイルコースとしてつないだ「JAPAN TRAIL」に登録されたルートを歩き、トヨタ白川郷自然學校へ2日間かけて歩きつくす旅です。
 事前にスタッフで下見していたものの、子どもたちと歩くのは初めての試みだったため、私達にとっても大きな挑戦で、何が起こるのか、ドキドキワクワクしていました。

 旅の前日、バスで大白川へ移動し、そこにあるキレイな湖をボートで渡ったり、ワイルドな露天風呂に入ったり、巨木が立ち並ぶ原生林に囲まれたキャンプ場にてテント泊をしたりと、今までの環境とは違い、人間の世界から離れた、より深い森での時間をすごしました。

 突然ですが、この旅一番の危険は熱中症です。白川郷は大自然が広がっているとはいえ、夏の天気の良い日は非常に暑いため、歩く時間は早朝から昼までの間とし、できるだけ涼しい時間帯に歩くことにしてありました。
 なので、子どもたちには早起きが求められます。これまでは5時起きを基本としていましたが、旅の期間中は4時起き。苦手でも頑張って起きなければいけませんでした。

旅の1日目、みんな眠たい目をこすり頑張って起き、テントなど道具の片付けを始めました。ただ、睡魔に勝てなかった人が何人かいたため、動きが遅く、朝食を食べ始めたのは5時30分。歩き始められたのは6時30分ごろになってしまいました。
 2日間かけて30km歩くのがどんなものなのか。どのくらい暑いのか。想像出来ていなかった子どもたちが朝の遅れによる影響を身に染みて感じるのはもう少し後のことでした。

自分の荷物は自分で背負い、森人の旗を掲げ、みんなで声掛けし、「JAPAN TRAIL を歩く30kmの旅」はスタートしました。はじめの数時間はみんなテンション高め、歌を歌ったり、おしゃべりしたり、虫捕りや景色を楽しむ余裕がありました。1日目は大白川から平瀬キャンプ場を目指すルートとなっており、白山公園線という道路を歩きます。道中、キレイな川がいくつも流れており、開けた場所では壮大な景色を楽しめたり、灯りのない真っ暗なトンネルがあったりと、見所満載。一緒に歩いている私は「この様子だと案外楽勝なのでは」と思ってしまいました。

しかし、歩き始めて3時間たったころ、何人かから笑顔が消えました。心配していた熱さを子どもたちは痛感し始めたのです。ですが、こういう辛い環境をみんなで乗り越えられるのが森人です。まだまだ余裕がある人が辛そうにしている人のリュックを代わりに背負ってあげたり、台車を引っ張る人、旗を持つ人を順番に変わったり、鼓舞する声があがったりとゴールするために、全員がそれぞれ今できることを考え、頑張っていました。また、そんな辛さを味わっている最中に「ノイチゴ」のおいしさに出会うことができたのはラッキーでした。見つけては食べ、見つけては食べ、みんなで分け合う姿に私はほっこりしました。

スタートから4時間30分で1日目の行程15㎞を歩き切ることができました。とにかく全員休みたいところでしたが、キャンプ場の私たちが使うエリアには小さな木陰しかなく、みんなで休むためにもタープを張らなければ、なりませんでした。「面倒くさくてもやらなければならない事がある」のがこのキャンプです。ただ、これまで何回もタープを張ってきたので、みんな段取りは完璧。スムーズにタープを張り、椅子やテーブルを組み立て、寝たい人用に銀マットを敷き、みんなでしっかり休みました。爆睡している人たちの寝顔と昼食にみんなで食べたインスタントラーメンが最高に旨かったのを今でも忘れられません。

平瀬キャンプ場では、あれだけ疲れていたはずなのに、近くを流れる庄川で川遊びしたり、石積みして遊んだり、ゆったりのんびりタープの下ですごしたりと各々ここならではの特別な時間を過ごしていました。
夜、夕食を食べた後、今朝の失敗から、みんな4時には絶対起きてテキパキ行動することを約束しました。なぜか私は子どもたちから「ちゃんと起こしてね」と注意を受け、「今朝もちゃんと声かけたわ!」と思いながらも、いつもの和気あいあいとした雰囲気で旅の1日目を終えました。

旅の2日目、朝4時に私が声をかけると、びっくり!みんなちゃんと起きてくれました。起きるだけでなく、テキパキと片付けを行い、昨日よりも30分早く動き出すことができ、6ː00「JAPAN TRAIL を歩く30kmの旅」後半戦がスタートしました。
昨日の雰囲気と同じようにはじめは余裕で歩けるだろうと誰もが思っていましたが、そうはいきませんでした。

スタートして間もなく、最後尾を歩いている男の子の表情が明らかに暗く、スピードが遅かったのです。どうやら関節や筋肉に痛みを感じている様子でした。その子は虫捕り網を常に持っているほどの虫好き。関係のない時間でも虫を捕りにいってしまうのは、たまにきずですが、笑顔の絶えない明るい性格。1日目も虫捕りをしながら歩くほどの余裕をみせていました。そんな姿を見たことがなかったので、頭を悩ませました。

スピードを合わせるために、進んでは待ち、進んでは待ちの繰り返し。休憩時には少し手も痛みを和らげられるようストレッチをしました。しかし、痛みをかばいながら変な歩き方をしてしまっていたため、症状は良くなりませんでした。

しかも、こういう時に限って問題は重なります。その子のことを気遣い、一緒に歩いていた男子数人に気持ちが伝染したのか、辛い表情に。昨日よりも早くスタートしましたが、スピードが遅いため、陽が登り気温が高くなったところで、歩くコースが日陰の多いエリアから、日陰が少なく、車通りの多い国道になってしまいました。全員疲労困憊。みんなで乗り越え、助け合える雰囲気ではなくなってしまいました。

そこで一度、日陰に入り、「どうしたら遅れている男の子も含めて全員でゴールできるか」みんなで話し合う時間をとりました。荷物を持ってあげよう、ペースを合わせてあげよう、声を掛け合おう、荷物を運んでいる台車に乗ってもらおう。など様々な意見がでてきました。しかし、当の本人はこれまでのみんなとの関わり方の中で自分がみんなに迷惑をかけてしまっている状況を素直に受け入れきれず、もともと持っているプライドが邪魔しているようで、「大丈夫。自分で歩く」の一点張り。みんなはその子の「歩き切りたい!」という強い思いを受け止め、尊重し、歩くのを再開しました。

しかし、10:00すぎ。限界を迎え、道路脇でしゃがみこんでしまったため、「本当にごめん」と一声かけ私の判断でリタイアしてもらいました。「歩きたい」という強い意思をもっており、気持ちが折れているわけではなかったので、本当は最後まで歩かせたかったです。ですが、私とその子の気持ちを優先することで、その子だけでなく他のメンバーにも影響し、ケガや事故が起こってしまってはいけません。苦渋の決断でした。

緊急車両が到着し、その子は車の中に入るやいなや横たわってしまいました。悔しい気持ちでいっぱいだったと思います。全員がその子へ一声かけ、その子の思いを背負って歩き切ることを決意。歩くのを再開しました。

当然のようにこれまでよりもペースは上がり、難所であった国道沿いをクリア。あとは山道をのぼり、トヨタ白川郷自然學校まであと数キロです。最後坂道を登る場面では荷物を運ぶ台車を交代交代で引っ張ったり、シマヘビを捕まえ大喜びし、少し噛まれるハプニングを笑い飛ばすなどの余裕が見られました。残り100m。見慣れた景色が広がり始めたポイントでリタイアした子と合流。どうやら車の中でしっかり寝て休めたようで、思いのほか元気な表情を浮かべていました。

そして12:20。約6時間かけ、全員で見事ゴール!とてつもない大きな達成感を味わいながら、合掌家屋の安心感に包まれながら全員倒れるように休みました。
「JAPAN TRAIL を歩く30kmの旅」は子どもたちにとったアンケート結果でも一番強く印象に残っており、中には「次は往復60km!」と意気込みを語る人もいました。本当に本当に頑張ってやりきった子どもたちの功績を心からたたえたいと思います。よく頑張った!
また、このキャンプを担当する私としては「リタイア者が出てしまったこと」に対して、もっと適切な処置をしてあげたり、安定した休めるポイントを作ってあげたりと来年に向けた改善点が見えてきました。もっと子どもたちを支えられる知識や技術を身につけたいと思っています。

【72時間ブッシュクラフトキャンプ】
 この活動はキャンプ最後の3日間、合掌家屋を離れ、キャンプ場でも何でもない森の中に入り、テントを使わず寝泊まりする、ワイルドなチャレンジです。使える道具はロープ、シート、木の板だけ。それ以外は森の中で調達し、自分の寝床を作ります。トイレもないので、使うのは災害時用の簡易トイレ。正直、全員が最後までやり遂げられるか、一番心配していた活動でした。しかし、私の心配とは裏腹に森人たちはこれまで培った知識や技術を活かし、各々やってみたいことにも挑戦でき、とても充実した3日間だったと思っています。

というのも、森人たちはキャンプに参加する前、私とオンライン面談をしており、その時から、キャンプを締めくくる活動であることを意識し、キャンプ当初から高いモチベーションを持っていました。ロープワークを覚える時間や簡易トイレになれる日を事前に設けていたのですが、とても楽しそう!ロープで木に登ったり、ハンモックやブランコを作ってみたりと森人という言葉にぴったりな無邪気に笑いあう姿が見られていました。簡易トイレに関しては当然嫌だったと思いますが、気持ちを切り替えることができていたようで問題なく使いこなせていました。

その練習の成果を十分に発揮し、それぞれ個性あふれる寝床を作っていました。長い木をくみ合わせティピーテントのようなものを作る人や、合掌家屋のような三角屋根のシェルターを作る人。ツリーハウスのように木の上に寝床を作る人もいました。私も多少は手伝ったものの、ほとんどを自らの手で作り上げられていました。また、早く終わった人がまだの人の手伝いをしたりする様子も見受けられ、仲間意識の高さも感じられました。逆に他の人の手伝いをあえて断り、「自分だけで作り上げたい」という意思を示す人もいて1カ月間一緒にすごした子どもたちの成長とたくましさを肌で感じ、嬉しく思いました。

完成した寝床では2泊したわけですが、1泊目は良く寝れた人とそうでない人がいました。また、シートの隙間が空きすぎていた人や、寝袋に包まることができなかった人に関しては虫刺されが多かったようです。ここで感心したのは1泊目の経験から改善点を洗い出し、寝床を修繕する人がでていたことです。同じ失敗をしないよう、考え行動できていました。

 この3日間は寝床を作り続けていたわけではありません。これまでと同じようにごはんを作り、食べ、森の中で活動する時間も設けていました。川遊びしたい人、火おこししたい人、釣りに挑戦したい人、タープの下でのんびりしたい人。子どもたちには「この3日間は各々自分にあった時間の過ごし方をしてほしい。最後まで悔いの残らないように、やってみたいことに挑戦して欲しい」と話していたので、全員が自分の意見を素直に言葉にし、心の底からこの時間を楽しめていたと思っています。
 何より釣りに挑戦した人たちに関しては1日目、数匹しか釣れなかったのに、2日目は13匹も釣り上げ、釣果を上げていました。失敗も成功も経験し、それをバネに、どうすればよくなるのかまで考え、結果までだすなんて、すごすぎます。なにより、自慢げに帰ってきたあの表情は今でも忘れられません。

 実はこの「72時間ブッシュクラフトキャンプ」は単に大きな挑戦をさせたかっただけではなく、「快適な環境で寝られない、すごせない」「使えるものに制限がある」など少しだけ災害時をイメージしていました。もしもの時にも生き抜ける人になるために、その状況を経験して欲しいと思っていたのです。もちろん災害時だけでなく、これからの人生には楽しい事だけでなく、辛い事、我慢しないといけない事、たくさん嫌な事があると思います。そこから逃れる、より良くする、心を切り替えるなど、自分にあった最適な手段を使って「心にゆとり」を持った人になって欲しいという願いを持っていました。
 もしかすると森人たちにとっては余裕な活動だったかもしれません。ですが、そこまでの感覚を持てるまでになったのは1カ月間という長い時間で様々経験をした成果。ここでの経験が将来少しでも役立ってくれたら嬉しいです。

 非常に長くなってしまいました。思い出がありすぎます。書こうと思えば、本になってしまうので、【活動について】はここまで、最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。