THE FIRAT SLAM DUNK 〜井上雄彦が描きたかったもの〜

【映画のネタバレを含みます!未視聴の方は絶対に読まないで下さい!】










映画版スラムダンクを観てきた。

原作未履修、アニメ履修。


結論から言うと、観て良かったと思う。
面白かった。

ストーリーとしては、山王戦の合間に、リョーチンのストーリーを挟むって感じ。
まぁリョーチンが主人公やね。
そうなると、花道の存在意義……笑

CGについては、初めこそ違和感あったけど、観ているうちにあまり気にならなくなった。

まぁ慣れやね。

「CGやなー」

って思う時もあったけど、面白さに水を差す程ではなかった。

キャスト陣については、実は花道以外はあまり違和感がなかった。
幼少期の夏休みに、エンドレスエイトよろしく毎年スラムダンクを観てきたオレが言うんだから、往年のアニメファンでそう思った方もいるのではないだろうか。

知らんけど。


花道については、花道というキャラクターの特殊性と、ディレクションと、あとは当時と今の井上雄彦が描きたいものの差……なんだと思う。

まず、花道はやっぱり異質。
主人公でありながら、不良で、素人で、1番のギャグ要員。
描き始めの頃の、ストーリーを動かすキャラとしては使い勝手が良かったんだろう。

だけど、途中からそうなったのか、はたまた初めから理想はそうだったのか、井上雄彦はバスケットボールの漫画を真剣に描きたかった。

その為には、主人公であるはずの花道に付加された、不良や非常識といったギャグ要素が、邪魔だったのではないか?

それが、今回の木村昴の演技にも現れているような気する。

オリジナルキャストの草尾毅さんは、不良でありながらバスケットボールに真剣に打ち込んでいく花道の成長を、ギャグ・シリアス使い分けて、上手に演じ分けられた。
幼少期のバイアスもあるだろうが、完璧に演じた……と表現しても、多くの人が賛同してくれるだろう。

もちろん、それは花道に限った話ではないのだが。

しかし、花道のギャグパートは、ギャグすぎるのだ。
草尾さんのコミカルな芝居が、井上雄彦の描きたかったスラムダンク……とりわけ、山王戦には合わなかったのではないだろうか。

先述した通り、他のキャストについては、あまり違和感がなかった。
正直に言うと、新キャストの皆さんは、批判に晒される事も覚悟して、オファーを受けていたはずだ。

特に木村昴は、ドラえもんのキャスト陣刷新を経験している。
十分に理解しているはずだ。

そして、どのように演じるかをそれぞれが考え、(ディレクションもあったと思うが)、多くのキャストは「オリジナルキャストに寄せる」事を選んだ。

特にミッチーなんかは、「今の置鮎さんか?」と思うシーンもあったほどだ。

そんな中、あまりに草尾さんとは異なる芝居をする木村昴に、とても違和感があった。
もちろん、声質からして全然違う。
だけど、芝居すら、草尾さんに寄せようという気が感じられなかったのだ。

これも先述した通り、草尾さんのような振り切ったギャグの芝居は、井上雄彦の描きたかったスラムダンクには、合わなかったのではないか。

少なくとも、今の井上雄彦が描きたかったスラムダンクには。

そこで、あえてギャグ要員としての花道の芝居をフラットに寄せる事で、バスケット漫画の一因としての親和性を高めたのではないか。


もちろん、木村昴の技量を問う意見もあるだろう。
しかし個人的には、過去に木村昴の演技を何作か観て、決して演技力のない役者ではないと思っている。

どんな立場から喋ってんだって感じだけどw

呪術廻戦東堂?を観てもわかる通り、振り切ったギャグだってできる。
ヒプノシスマイクの一郎のように、木村昴を感じさせない芝居だってできるはずだ。

しかし、今回はゴリゴリの木村昴だった。
しかも、草尾さんの花道とは似つかぬテンションの低さ。

これについて、木村昴個人の技量に言及するのは、どうしても違和感があるのだ。

言うならば、木村昴はもっと「草尾毅に寄せられる声優」のはずだ。

それを敢えてしなかったのは、木村昴個人の大きな決断か、もしくはそのようなディレクションがあったからだろう。

木村昴は、大規模なキャスト刷新を経験しているからこそ、既存のキャラクターを自分なりに演じることの大切さを理解していた……というロジックも、あながち的はずれなものではないだろう。

結果として、花道はやや没個性化し、相対的に主役としてのリョーチンが大いに引き立った。

違和感は残りつつも、間違いなく、声優木村昴の功績でもあるのだと思う。


最初にも述べた通り、個人的には楽しめた。
特に、映画版スタッフに対する批判も聞こえてくる本作だが、やはりスラムダンクの持つ魅力は大きい。

原作ファンも、旧アニメファンも、ぜひ観てから判断してほしい。

個人的にはリピートも全然あり。

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