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サービス業の“見える化”? デジタル時代の『真実の瞬間』は? 【アナザーストーリー】


ルイ・ヴィトンの伝説をご存じだろうか?


1912年4月14日豪華客船タイタニック号は初めての航海中に、北大西洋上で氷山に接触し、翌日未明にかけて沈没した。

犠牲者数は乗員乗客合わせて1,500人強の当時世界最悪の海難事故。


ルイ・ヴィトンはヨーロッパ中のセレブから認められていたスーツケースを作るブランド。

この航海の乗客の多くがルイ・ヴィトン製の旅行用トランクの愛用者だった。


【伝説1】

沈没する時、ルイ・ヴィトンのスーツケースだけは完全に防水となっていたため、浮かんで、それに捕まった人を何人も救った。

【伝説2】

後日引き上げられたルイ・ヴィトンのスーツケースを開けると衣装が全く濡れていなかった。


この話を裏付ける証拠があるわけではないが、本当であるとも嘘だとも言えない。

言えることは、100年以上続く世界ブランド:ルイ・ヴィトンの努力と挑戦があるからこそ、そんな伝説が語り継がれいく。



この企業をイメージさせる

『象徴的なストーリー(シンボリックストーリー)』

競争戦略やビジネスモデルと結びついて、顧客やステークホルダーに

『“共感”の源泉』

として心に刻まれる。


図1


サービス業は提供するものが「無形」


金融機関(銀行・証券・保険)、自動車メーカー・ゼネコン・住宅メーカー等は、会社名だけで取扱商品が思い浮かぶ。


家電メーカーは、取扱商品は“電化製品全般”というイメージできるが

「どの分野に注力しているのか?」

という質問には即答できない。


「“会社名”だけでは、何を(商品・サービス)扱っているのか?イメージできない会社は多い」

テレビCMやHPの説明を聞いて、読んで、少しイメージできるようになることもあるが、【 ”会社名” = ”商品・サービス” 】とは限らない。


「〇〇といえばあの商品・あの会社」

という意識がターゲット市場に根付いていれば、多額の広告費や販促費を投入して集客活動を行わなくても顧客を獲得することが可能だろう。



サービス業と一口に言っても、その業種・業態はさまざまだが、共通する特徴として、

提供するものが「無形」、“形がない” ということだ。


さらに

① 「同時性」ということも大きな特徴

消費者は、製品を買うときのように事前に手で触れたり、目で見て確認したりすることができないので、体験してみなければその良し悪しはわからない。

② 「非反復性」ということも大きな特徴

サービスを提供する人の技能が違えば、サービスの質も異なる。


サービス業は基本的に目に見えない「人」がもたらす影響なので

人材品質がそのままサービスの品質、会社の品質として映ることになる


サービス業には常に「サービスの質の向上」という課題がある。



『インターナル・マーケティング』とは?


顧客満足(CS)を与えるような教育と動機付けを、企業が従業員に対して与えること

従業員満足度(ES)が増せば、業務に誇りを持てることで、質の高いサービス提供が期待できる という考えだ。


社内研修などで自社の理念や目標、自社が提供しようとするものの価値を明確にし、組織内に周知徹底を図っている浸透させていることとは思うが、効果が簡単に現れるわけではない。

この『インターナル・マーケティング』の考え方は理解できても、サービスの“見える化”の具体策がピンとこない。


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サービス業のHP等の自社評価の特徴


レストランの評価を星の数で表す“ミシュランガイド”

飲食品のCMでは、よく耳にする“モンドセレクション”

消費者の選択基準のひとつにはなっているようだ。


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サービス業のHPには

「●●調査による顧客満足度№1」

「◆◆業界人が選ぶ業界№1」

という外部機関の評価が掲載されている。


さらに、『お客様の声』 として

「本当に、心温まる対応頂き感謝です。」

といった絶賛の嵐を自ら記載している。


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ここで疑問が浮かぶ。

「同じ業界内に、数多くの“お客様満足度№1企業が存在するの?」

「どの調査機関が信用できるのか?サッパリわからん。」

「お客様の声を紹介するって“自慢”?」

と感じてしまう。


当該企業の広報担当は、どんな目的で?どんなターゲットに向けて掲載しているのだろうか?

と疑問は拭えない。



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ジェットブルー航空の「神対応」


ジェットブルー航空は、アメリカ合衆国の格安航空会社。
国内線に加え、メキシコ、カリブ海諸国、南米北部への国際線を運航している。


2012年アメリカ・コネチカット州の小学校で銃乱射事件が発生し、26人(児童20人含む)が死亡した。

この犠牲者の従兄弟にあたるシアトルに住む5歳の少年が

「柩に自分で書いた手紙を入れたい」

と母親に懇願した。


困った母親が、このことをTwitterに呟いたところ

ジェットブルー航空の担当者から

「私たちが運びましょう」

と申し出があり、無事に手紙を柩に入れることができた。



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デジタル時代の『真実の瞬間』


高い顧客満足の実現を考える上で『真実の瞬間』というキーワードがある。

1980年代にスカンジナビア航空が経営再建に取り組んだ際の同社を復活に導いたサービスマネジメントの考え方で、当時の社長兼CEOだったヤン・カールソンが出版した書籍「真実の瞬間」で紹介された。

簡単に言えば、

お客様は、その企業に接する瞬間(ほんの短い時間)で、その企業のサービス全体に対する”良し悪し”を評価するもの


お客様と接点も持つ『瞬間』

それは、“フィクション”や“やらせ”ではない。


デジタル時代の現在、主な情報源は「検索結果」


消費者の多くが、商品購入にあたって、スマートフォンで事前に商品やサービスについて調査しているはずだ。

すなわち、ネット検索によってHP等を見る瞬間が

『真実の瞬間』 だ。




今後のマーケティング戦略の着眼点


人は“感情”で動く

常連客やお得意様の基準は、価格・料金ではない“自分独自基準”を満たす限り、付き合いは続く。


人は“勘定”で動く こんな顧客は長続きしない

価格・料金が基準の一見さんは、安い店が見つかれば簡単に移っていく。


“差別化”ということは、他社・他者と“比較”しているのであって、それが優位になるとは限らない。


“独自化” を目指すべき


「同時性」 「非反復性」という特徴があるサービス業の『インターナル・マーケティング』の重要ポイントは?

「貴社の最大の“ウリ”は何ですか?」

という問いに、全社員が簡潔に分かりやすく、説明できるようになること
ではないだろうか?



『アナザーストーリー戦略』 とは?


前述のジェットブルー航空のような、従業員の一人のアクションが、
「神対応」として瞬く間にSNSで拡散され

「ジェットブルー航空の人は素晴らしい」

と、企業全体のイメージとなって勝手に一人歩きする。


逆に、従業員の一人の不祥事によって

「この企業は悪いんだ。」

マイナスイメージも瞬時にSNSで拡散される。



どんな企業にも、企業名に様々なドラマが隠されていて、ロゴマークに創業精神が込められているものだ。

ところが、このことを幹部社員ですら知らなかったり、語れなかったりする企業も多いのは事実だ。


企業の“シンボリックストーリー”は、不変の“物語”?

企業として“象徴的”な物語が忘れられているのは、なぜか?



社内に、時の流れと共に、多くの新しい“物語”は生まれている。

この新しい“物語”は、これまでの“シンボリックストーリーをベースにして生まれている。


社内の人には、気が付きにくいが

企業の強みを象徴している“人的”な物語

企業戦略に合致した“人的”または“組織的(業務プロセス)”といった“物語”

が社内には沢山埋まっているものだ。


私は、シンボリックな物語を補足・補完する物語を「アナザーストーリー」と呼んでいる。

そして、クライアント企業と一緒になって、顧客の選択に“スパイス”のようなインパクトをもたらす「アナザーストーリー」を見つけ出すサポートを行っている。



経営陣でも従業員でも、人にはそれぞれの企業戦略・方向性とシンクロする話の一つや二つはあるはず。



この話は、『真実の瞬間』



それぞれの人が持っている“アナザーストーリー”



【追伸】 ロールスロイスの神話


あるイギリスのお金持ちが、ロールスロイスで「砂漠を横断する」旅に出た。

砂漠の横断中に、あまりの暑さでロールスロイスが故障してしまった。

用意していた無線で業者に問い合わせをすることに。

「旅の途中でロールスロイスが故障してしまった。修理を頼めないだろうか?」 と業者に問い合わせをした。

すると業者は、飛行機で新車を持ってきて、故障したロールスロイスと交換したのだ。


その後、見事に旅を成功させたイギリスのお金持ちは、業者からの請求を待っていた。

しかし、待てど暮らせど、業者からの連絡はない。

しびれを切らしたイギリスのお金持ちは業者に連絡した。


「ロールスロイスの故障の件で、いつまで経っても請求がこないが、どうなってるんだい?」

業者の回答は
「当社はそのようなサービスをしておりません。」

イギリスのお金持ちは、
「いやいや、実際にロールスロイスが故障した時に飛行機で来てくれたではないか」 と、迫ったところ


話を遮るように、業者はこう言った。

「お客様、ロールスロイスは故障致しません」



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