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ジャズコンボ型組織が『破壊的イノベーション』を創造しやすい理由を野中郁次郎教授のSECIモデルで説明
マイルス・デイヴィス信者の私にとって 彼こそが『真のイノベーター』であると思っています
誰だっていつもと違うことをやらなければならない状況に置かれたら、特別な考え方をしなきゃならない。
もっと想像力を働かせ、創造的にも革新的にもなって、冒険をしなきゃならない。
ジャズは ダイバーシティ(多様性)によって創造されていった音楽で インプロヴィゼーション(即興力) インタープレイ(相互作用)によって構成された 想像力を必要とするものです
野中郁次郎教授の『SECIモデル』とは?
『SECI(セキ)モデル』とは 一橋大学大学名誉教授の野中郁次郎氏らが提唱した広義のナレッジマネジメントにおける基礎理論
個人が持つ知識や経験などの暗黙知を形式知に変換した上で組織全体で共有・管理することで それらを組み合わせるて また新たな知識を生み出すフレームワーク
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ジャズは 『暗黙知』の”かたまり” です
音楽指導者は 「こんな感じで 強弱をつけて、、、」 といった言葉と楽器を使いながら『形式知』を伝えますが 言われたら上達するものではありません
そこは自分で 練習を重ねていくことで 表現できるようにしていくしかありません
マイルス・デイヴィス曰く
必要なのは才能じゃない。練習、練習、練習、それだけだ。
憧れの存在であるジャズマンの真似をして 一緒に演奏する楽団の諸先輩の背中を見て 盗み 覚え ながら 成長していきます
これが【①共同化(Socialization):『暗黙知』→『暗黙知』】の状態です
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【②表出化(Externalization):『暗黙知』→『形式知』】
他者から学んだ『暗黙知』を『形式知』にしていくには 文章化(譜面)にすることはひとつの方法ですが ニュアンスが伝わり難い部分も多いので
メタファー(比喩)で相手にイメージしやすいようにする
「今の例え話でイメージできたよ」
と「気づき」を与えることが重要になります
昨今『デザイン思考』の重要性が言われているのは?
『暗黙知』を図像化して『形式知』にする思考方法
と考えていいと思います
ジャズメンは
「音の強弱」「音の高さ」「音色の違い」の聴覚情報と「リズム感」と触覚情報 そしてプレーヤーの動き・表情の視覚情報 によって得られた情報を 知識としていきます
【③連結化(Combination):『形式知』→『形式知』】
現場における作業手順などは「マニュアル化」しやすく アップデートしていくことで 効率化につながります
「なぜ?この方法がいいのか?」
「この方法は こんな過程から生まれた」
「自分の担当分は どれほど重要なことなのか?」
といった『全体像』を 腹落ち しているか?いないか?は 各メンバーのモチベーションにも関係します
『物語り化』『ストーリー化』させることで 当事者の ”やりがい” にも繋がっていきます
ジャズメンは
【全体最適】を頭にいれた上で ソロ演奏パートで最高の【部分最適】インプロヴィゼーションを披露します。「自分だけが目立てばいい」という考え方では バラバラの演奏になってしまいますから インタープレイ(相互作用)という概念が存在しています
【④内面化(Internalization):『形式知』→『暗黙知』】
組織は この『形式知』によって行動していき 価値を生み出し この行動を繰り返すことによって 新しい『暗黙知』が生まれ『形式化』していくサイクル が始まります
マイルス・デイヴィス曰く
音楽は競争じゃない。協調だ。一緒に演奏して、互いに作り上げていくものなんだ。
※ このアルバムの ♬Walkin'♬ の緊張感が好きです
ジャズコンボ型組織のユニークさ
オーケストラ型組織や スウィング時代のビッグバンド型組織では 譜面通りに演奏することが大原則なので
上記の 新しい『暗黙知』が生まれ『形式化』していくサイクルは
『持続的イノベーション』の創造には結びつく可能性は秘めていると考えられます
マイルス・デイヴィス曰く
そこにあるものではなく、ないものをプレイするんだ。知っていることではなく、知らないことをやる。変化しなければいけない。それは呪いのようなものだ。
この考え方が『即興演奏』である ジャズコンボ型組織の”最大のウリ”です
下図をご覧ください
A:この【④→①】が 組織内で行われていく流れです
B:他社・他者が持っている『既存の知』を管理職が勉強にいく
この A・B は どんな組織にも「ありがちなパターン」です
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C:他社・他者の【⑤共同化】と自社の【①共同化】を”協働”するオープンイノベーションのイメージです
VUCA時代には オープン・イノベーション という考え方は 必須とも言われています
大企業のオーケストラ型組織では「今のフォーメーションのパートを入れ替えるだけ」という考え方になりがちなので マッチングする相手の選定にも迅速性に欠ける感は否めません
まずは 中小企業のビッグバンド型組織(プレイング・マネージャーが牽引)とのマッチングを模索するのがいいと思います
そして 今の大企業にない発想が?
D:個人が外部の【⑥共同化】に勉強に行く
これは 外部でのジャム・セッションへの武者修行をイメージしたものです
サッカー日本代表チームが 欧州のクラブチームで活躍しているプレーヤーが中心となったチーム構成になっていますが それもジャム・セッションと同じで より厳しい環境に身をおいて 自分を磨き続ける
そして この”個”の力があって 組織の”力”になります
ビジネス・パーソンが ジャム・セッション 出来る環境作りは必要と思います
どちらの組織形態も 一長一短 あるとは思いますが
メンバーシップ型雇用のオーケストラ型組織で「没個性・均一化・同質化」を尊重していては 『持続的イノベーション』止まりでしょう
ジャズコンボ型組織は「個性歓迎・多様化・異質の取り入れ」といった考え方もあるので『破壊的イノベーション」が期待できると考えています
組織の価値観とプロセスの適合度合の違いによる考察
クレイトンM.クリステンセン教授の『イノベーションのジレンマへの挑戦』を参考にしたもの
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【Aの領域】価値観もプロセス(仕事の進め方)も適合度が高い
ここは 組織内の既存メンバーで対応する オーケストラ型組織
コンダクターが全体を管理して プレーヤーは譜面通りに演奏していけば問題解決に導けます
大企業が得意とする領域ではないでしょうか?
【Bの領域】従来の組織の価値観に近いがプロセスが違う
ここは新しい仕事の進め方が必要なので オーケストラ型組織とビッグバンド型組織 の両面を合わせていく組織
新しい仕事のやり方を即導入するのは 外部のビッグバンド型組織と連携する方法がスムーズに進められるでしょうし アウト・ソーシング と方法もあるでしょう
ただ中途半端な形態では 混乱を招くだけです
【Cの領域】従来の組織の価値観と違っているがプロセスは近い
従来の組織の価値観になかった 仕事の進め方でないと問題解決に導けないのですから
社内の既存組織からスピンアウトした ジャスコンボ型組織を結成して 外部のジャム・セッションに武者修行にいって 新しいプロセスを学んびながら オープン・イノベーションで外部のジャズコンボ型組織と連携を模索することが重要でしょう
外部から持ち帰ってきた『暗黙知』を『形式知』にしていく SECIモデル を高速回転させる俊敏性が必要です
【Dの領域】価値観もプロセスも違いが大きい
ここは想定外の危機管理下での問題解決にあたる組織が参考になるでしょう
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カリスマ的なリーダーが引っ張っていく ジャズコンボ型組織
マイルス・デイヴィスのようなリーダーが引っ張っていく ジャズコンボ型組織が 最適です
『破壊的イノベーション』を創造しやすい組織形態
マイルス・デイヴィス曰く
グループを作る場合は、いろいろな人間を混ぜないと駄目だ。持ち味ってもんが違うからな。偉大なバンドを作り上げるためには、全員の犠牲が必要で、それなしじゃ何も起こらない。
まとめ
野中郁次郎教授の『SECIモデル』などを悪用(笑)して ジャズコンビ型組織が『破壊的イノベーション』を創造しやすい組織である という こじつけを書きましたが
論理はイノベーションを生みません
【腹落ち(共感)】⇒【本質直観】⇒【直感】⇒【跳んだ仮説】⇒【検証】
『暗黙知』を様々な方法で『形式知』して更なる『暗黙知』を創造する