“オープンイノベーション”が中小企業の生き残り策(その8)~音楽の持つ“エンパワーメント力”~
人を動かすのは「みずから動きたくなる気持ちを起こさせること」で、そのためには “働きかけ” が必要
不安や迷いの原因は、「感激」「感動」「感謝」が足りないことだ。
『ESなしにCSなし』
企業が利益を上げるためにはCS(顧客満足)が必要であり、CS向上のためには、ES(従業員満足)が必要だ。
ESを向上させることがCSの向上につながり、継続的に会社の価値を高め、CSを高めていくためにはESの向上が必要不可欠。
ESの低下による従業員のモラルの低下は、会社の業績、経営自体にも大きな影響を与るほどのリスクになりかねない。
『“エンゲージメント”を高める』
“エンゲージメント”は、社員の会社に対する“愛情”や“思い入れ”を指す言葉
社員一人ひとりが、会社が掲げる方向性や目標に共感して「戦略・目標」を適切に判断し、自発的に自分の力を発揮する貢献意欲を高めることだ。
『“エンゲージメント”と“モチベーション”と“ロイヤリティ”の関係』
(1) “エンゲージメント”と“モチベーション”の違いは?
「誰のために頑張るか」という基準で整理できる。
個人を動機付けるものが “モチベーション”
会社に貢献したいという気持ちが “エンゲージメント”
“エンゲージメント”には、自分一人さえよければいいという考え方はない。
(2) “エンゲージメント”と“ロイヤルティ”の違いは?
「個人と組織の思いが合致しているか」という基準で整理できる。
会社が社員を従える縦の関係性が “ロイヤルティ”
会社と社員が対等な横の関係性が “エンゲージメント”
従って、会社と社員両者の意思が一致している場合に【“エンゲージメント”が高まる】
「ES向上!CS向上!」と口にするのは簡単だが、どうするの?
“エンゲージメント”戦略を明確にして、さまざまな取り組みを連携させながら取り組んでいくマネジメント
というフレーズになるのだろうが、これでも抽象的で具体的でない。
ここで“エンパワーメント”という考え方が必要になってくる。
“エンパワーメント”(empowerment)の一般的定義は?
『個人や集団が自らの生活への統御感を獲得し、組織的、社会的、構造に外郭的な影響を与えるようになること』
“エンパワーメント(湧活)”の定義は?
『人びとに夢や希望を与え、勇気づけ、人が本来持っているすばらしい、生きる力を湧き出させること』
“音楽”は”歌”は、エンパワーメント商品
“音楽”を全く聴かない、“音楽”を聴くのが嫌いだという人は少ない。
好きなジャンルは違っても、何らかの“音楽”は好きだろう。
『No Music No Life』
『“音楽”なしでは生きられない』
“音楽”は生きている人にとって欠かせないもので、生活の中でとても重要な割合を占めている。
近年では科学的な面でも裏づけがされようとしていているが、音楽を聴くことによって、幸せな気分にも、リラックスした気分にもしてくれ、悲しい気分を和らげてくれたり、集中力を高めたり、“元気”“勇気”“やる気”を与えてくれる不思議な力を持っている。
アーティストの勘違い
“弾き語り”でのライブに拘ってきたアーティストにとって、ライブイベントが簡単に開催できなくて、縮小開催しか出来ないのは死活問題だろう。
赤字覚悟のライブ開催目的は?
“弾き語り”を観て聴いてもらうことでアーティスト自身が“満足”したいのなら“オンライン配信”で十分。
ファン離れ防止が目的であれば、ファン限定“オンラインライブ”で十分。希少価値があり高収益も期待できる。
通りすがりの流れ客を期待しているのなら “それは今じゃない”。
赤字幅縮小に向けた無理な集客による“信用喪失”が、取り返しのつかないことになる“最悪の事態”になるだけ。
「消費者は、商品そのものが魅力的であるのなら、店頭販売でもオンライン販売での購入する」
アーティストと中小企業の老齢経営者の共通点は?
『批判されたり、注意されたり、指示・命令されたりすることがない立場』
になってしまったことだ。
外部環境変化についていけずに、自社&自分が【やれること】の範囲内でしか考えられない状態なので、目先のことへの対応でアップアップになっている。
自分で冷静に【やるべきこと】を考え直さない限り、衰退の一途を辿るだけだ。
過去に“カリスマ”と呼ばれていたとしても、今は“エンパワーメント”とは程遠い存在の人になってしまっている。
ビジネスシーンのテレワーク推進によって“対面会議”と“Web会議”の違いが分かったら、双方のメリデメと効率性を理解した上で併用していくのがベター。
音楽ビジネスでも同じで、単なるライブ中継ではなく、オンラインライブとしての商品性を追求することが重要。
リアルでは表現できない、オンラインだからこそできるクリエイティブな演出で工夫して、画面の向こうにいる観客に高揚感を与えるというのは、アーティストにとってもクリエイターにとっても絶対に楽しいはず。
そして若い世代のユーザーにとっては、リアルだろうがオンラインだろうが、価値のあるコンテンツに課金するのは“当たり前”になってきた。
中小企業とアーティストとの“オープンイノベーション”のご提案
アーティストは、ステージの上から、観客に向かって”歌詞“や”言葉“で熱いメッセージを届けてきた。
“同じ時間”“同じ空気”そして“熱”が伝わるというライブ会場という“シチュエーション”を利用したエンパワーメント(湧活)そのものだ。
ライブステージ以外でも、現にエッセンシャルワーカーである医療従事者に対して、アーティストが“歌”を届けて、“元気”“やる気”に繋がっているという多くの事例が聞こえてくる。
中小企業経営者の皆さん!
人を動かすのは、「みずから動きたくなる気持ちを起こさせること」で、そのためには“働きかけ”が必要です。
アーティストの“エンパワーメント力”で、社員への方針説明会や決起集会を盛り上げてみませんか?
コロナ禍の危機管理下の今だからこそ、競争論理でなく協力論理で“オープンイノベーション”。
【補足】 音楽が歴史を変えたコンサート
① 1978年「ワンラブ・ピース・コンサート」
1976年、ジャマイカの政治的緊張が頂点に達していた。
ボブ・マーリーは、平和を取り戻すきっかけを作ろうと無料の「スマイル・ジャマイカ・コンサート」を計画したが、二大政党の対立抗争に巻き込まれ、狙撃されて重傷を負う。
(負傷したまま無料コンサートに出演し、翌朝バハマへ亡命。)
1978年にジャマイカに舞い戻り、「ワンラブ・ピース・コンサート」に出演。
コンサートを見に来ていた二大政党の党首をステージ上に招き、和解の握手をさせた。
② 1985年“LIVE AID”
LIVE AID は1985年7月13日に開催された20世紀最大のチャリティーコンサート。
「1億人の飢餓を救う」というスローガンの下、「アフリカ難民救済」を目的として行われた。
国とジャンルを越えて、賛同した多くのミュージシャンが参加した。
③ 2016年 前座がオバマ大統領? ローリング・ストーンズ「ハバナ・ムーン」
2016年3月20日オバマ大統領が、米大統領としては実に88年 ぶりにキューバを訪問。
冷戦時代の対立から一転、54年ぶりにアメリカとの国交が回復した。
その後3月25日、キューバの首都ハバナにある屋外スポーツ複合施設にて約120万人にもおよぶ大観衆を前にローリング・ストーンズのフリー・コンサートが開催された。
ストーンズのキューバ公演は、両国の新たな時代の幕開けで、奇しくもその直前となったオバマ大統領のキューバ訪問は、「ストーンズの前座」と言われた。
ストーンズの音楽が キューバの歴史を変えた瞬間だ。
④ 2017年 アリアナ・グランデ 「ワン・ラブ・マンチェスター」チャリティーコンサート
2017年5月22日アリアナ・グランデのマンチェスターでコンサート直後に爆破テロ事件が発生。
死者22人、負傷者50人以上と多くの犠牲者が出る悲劇となった。
テロ事件から数日後、アリアナ・グランデは被害に遭われた方々のため、6月4日にマンチェスターでチャリティーコンサート「ワン・ラブ・マンチェスター」を行うことを発表。
事件の当日コンサートに行っていた観客は無料で招待され、約45,000枚のチケットはわずか6分で完売。
コンサートの収益金約3憶9000万円の義援金として寄付された。
⑤ 2020年4月19日 レディー・ガガ主導バーチャル・コンサート『ワン・ワールド:トゥギャザー・アット・ホーム』
新型コロナウイルスの感染拡大が世界各地で広がるなか、対応に当たっている医療従事者を支援するために、非営利団体のグローバル・シチズンとレディー・ガガ共同で主催し、WHOがタッグを組んで開催されたグローバル・ストリーミング・コンサート。(6時間の「前座」と2時間の「本番」で構成)
寄付金1億2790万ドル(約137億円)はWHOの「COVID―19連帯対応基金」に送られた。