イノベーション創出が実現できるヒップホップ型組織への期待感
組織づくりやチームワークについて語るとき、スポーツ・チームをビジネス組織のメタファーとして使う人がいますが、私は、この喩えが適切であるとは思っていません。
ビジネスの目的は、顧客に価値を提供することであり、競合他社よりも優れた商品やサービスを提供することで、収益を上げることが目的です。
スポーツとビジネスの最大の違いは、目的が異なることです。
スポーツは勝利を目的としており、競争と勝ち負けが中心です。
しかし、ビジネスにおいては、単に競争することだけでは不十分です。
スポーツも音楽も、プレーヤー同志の協力とチームワークは必要不可欠なのですが、音楽がスポーツと違うのは、「競争」ではなく、「共創」であり「共奏」ということです。
そして目的が「勝ち負け」ではなく、オーディエンスに「感動」「感激」を与えることです。
そこで、音楽を創造する組織を例に挙げることで、ビジネスにおいても協力やチームワークが重要であることを示すことができると考えました。
そこで、次の3つの音楽演奏形態をビジネス組織のメタファーとして考えてみることにしました。
① オーケストラ型組織 ② ジャズ・コンボ型組織 ③ ヒップホップ型組織
この3形態の組織を比べてみると、演奏するにあたっての指示命令系統や演奏者の考え方、組織全体としても考え方に大きな違いがあることが分かります。
ヒップホップは、サンプリング技術を駆使して音楽を制作するため、過去の音楽を再利用することで新しい音楽を創造してきました。
過去のジャズやR&Bには、アフリカ系アメリカ人の歴史や文化が反映された音楽が多くあります。
これらの音楽からインスピレーションを得て、現代的な要素を加えることで、新しいメッセージを発信することを実現する、柔軟な『融合力』は素晴らしいです。
ヒップホップは、アフリカ系アメリカ人が創造した音楽文化に根ざしており、ブルース、ジャズ、R&B、ソウル、ファンクなどの様々な音楽ジャンルからの影響を受けています。
そしてテクノロジーの進化によって、今までの音楽シーンには無かったアプローチを実現していきます。
ヒップホップ・ミュージックは、まず「音楽は楽器演奏ができること」という固定観念を壊しました。
DJプレイは、レコード・プレーヤー製造メーカーの想定外の使用方法で活用し、スクラッチという技法で、レコード盤も、新しい楽器・新しい音声としてライブ・ステージでも使用されています。
ブロック・パーティの盛り上げ役であったMCは、ラッパーとして、それぞれのメッセージを詰め込んだ歌詞(リリック)を語り、韻を踏み(ライム)、歌いまわしともいえる(フロウ)をリズムに乗せます。
ヒップホップにおいて、フィーチャリング(客演)は頻繁に行われる一般的なことです。
ラッパーが、他のラッパーを客演に呼んで、ラップをやってもらったり、ラッパーがR&Bのシンガーを客演に呼んでフック(サビ)を歌ってもったり、フィーチャリングそのヒップホップの醍醐味でもあります。
ヒップホップ型組織は、同じ企業内・組織内に留まらず、他の企業や業界、そして個人とのコラボレーションを積極的に進める「オープン・イノベーション」体制です。
この組織形態には、あらかじめ用意された計画やスクリプトに縛られず、柔軟性を持って状況に応じて行動できる能力を持ったインプロバイザー的人材が必要です。
そして、組織運営を円滑に進めるプロデューサーの存在も欠かせません。
「ITリテラシー」「情報リテラシー」および「マーケティング」という能力も必要です。しかし、全てを持ち合わせていなければならないということではなく『シェリング』という考え方で、柔軟に迅速に行動することが大切です。
このヒップホップ型組織の肝は、あらゆる可能性を実現に向けた異業種・異文化の『融合力』です。
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