島第2弾、青ヶ島道中記その1


1月5日〜7日に青ヶ島に行ってきた。速報はすでに投稿したが、それだけでは、青ヶ島の素晴らしさと行きにくさと感動とが全然伝わらない、伝わってないので、アルバムを作るのと同時に、また道中記を書こうと思う。ちなみに今回言いたいのは「一回青ヶ島行ったほうがいい」ということです。それだけ。
2週間前くらいから、天気予報ばかり見ていた。ネットで天気図と週間予報と波予測のページを、ひたすらぐるぐる見ては10日後は晴れかな、7日後の海は穏やかかな、気圧配置は、等圧線の間隔はどうかな、と一喜一憂していた。
青ヶ島は、東京から300km南にある八丈島のさらに南約70kmにある、離島の中でも到達難易度S級とされる、かなり離島ランクの高い島だ。というのも、島に向かう交通手段が2種類、9人乗りのヘリコプターか就航率5割の船しかなく、しかもどちらも八丈島からしか出ていないのである。まあ、八丈島に行くまでは飛行機も1日3便あるからいいとしても、そこからヘリ9人乗りって。船就航率5割って。特に1月2月なんかは悪い年だと就航率3割台だったりもするって。そんな、とても行きにくい、予定通り行って帰ってこれるなんてのは夢みたいな島なのである(実際、島に行ったはいいものの、帰りの便が出ず一週間足止めとかはザラみたいだ)。
そんな島になぜ行きたかったのかというと、まず地形。青ヶ島は伊豆諸島の他の島と同様、火山島で、火山の頂部だけが海から顔を出している形なわけだけども、これがまた綺麗な2重カルデラになっているのだ。そして、島の最高地点からは、360度、海とそのカルデラが見渡せるというとんでもなく美しい風景が広がっているのだ。これは見たい。
次に星空。星空がきれいな島としても有名だ。人口が160人くらいで、少し集落を離れると人工の明かりがほぼなくなるので、それはすごい数の星が見えるらしい。
そして地熱釜。現役バリバリの活火山である青ヶ島は、地面から蒸気が噴出している場所が至る所にある。その蒸気を利用して、料理ができる地熱釜があるのだ。そこで卵だとか魚だとかソーセージだとか焼売だとかを入れてふたをして、蒸気がでるコックをひねると、あとはただ待つだけで、めちゃめちゃ旨く調理できるらしい。書いているだけで腹が減ってきた。
実際行ってみるとそれ以外にも見所がいろいろあって、2日あっても全然飽きることなく満喫することができた。
そんな青ヶ島に行く日がやってきたのである。できることなら往復ともヘリで行きたかったが、12月頭の予約開始日に130回近く電話をかけて予約センターにようやくつながったけれども既に満席。八丈島往復の飛行機、青ヶ島の宿、レンタカー、帰りのヘリとすべて予約はしたが、行きの青ヶ島までの足がない(というか船が就航することに賭けるしかない)、という状態でひとまず八丈島に向かうことになったのである。まあ、そういう行き当たりばったりな旅もいいな、と同行のおばっちゃんと話したりしていたが、やはり気が気ではなく、冒頭書いた通り直前は天気ばかり気にしていた。
出発当日朝も、起きてまず波予報と気圧配置をみた。西にできた気圧の谷が気になるものの、冬型の気圧配置も前日あたりから緩んで波も2m程度。雨だろうとなんだろうと、波さえ穏やかなら船は運行するので、これはいけるんじゃないか?と思って期待を持ちながら家を出る。羽田に着いたところで船を運行する伊豆諸島開発に電話すると「条件付き出航」とのこと。「行くだけ行くけど、接岸できなかったら引き返すかんね、覚悟しといてね」ということだが、とにかく島の姿を拝むことはできそうだ。同行のおばっちゃんと合流し、飛行機に乗る。八丈島に行くのは今回で4回目だが、行きが飛行機というのは初めてでなんだか新鮮だ。いつもなら11時間かけて夜行の船でいくところなのに1時間弱であっという間についてしまった。なんだか味気ない感じもして、やっぱり島に行くなら夜行の船だなあと思いつつも、今回はそんなことを言っている場合ではない。とにかく青ヶ島に到達することが最優先だと思い直して、八丈富士の目の前、八丈島空港に降り立つ。八丈富士登りたい。が、今回は青ヶ島だ。
空港から港まではタクシーで向かう。迎車を頼んでいる他の旅行者たちの車は続々ときて、電気自動車とかハイブリッド車とか新しい車ばかり来ていたので、八丈島のタクシーは近代化が進んでいるのだなと思っていたが、我々のときに来た車だけはなんかボロかった。そういえば自分自身のことを思い返せば、八丈島できちんとした車に乗ったことがない。床が穴空いてたり、片側のドアが鋲で止められてあかないようになっていたり、坂道で10km/hくらいしか出ない車だったり。それが島だという気もするし、面白いからいいのだが。
で、今回の(ボロ)タクシーの運転手は結構よくしゃべるおじさんだったが、そんなに声が大きくなくて何を言ってるか聞き取りづらい上に、右側の席のひと、と話し相手を指名してくるので港までの10分間が結構油断ならなかった。坂本龍馬とかの話をしていた(気がする)。
港についたら、ちょうど東京からの橘丸が入港するところだった。あおがしま丸はすでに港にいる。どうやら船に乗るのは15名くらいのようだ。海は穏やかに見えるが、船は結構揺れている。2〜3mは平気で前後しているみたいだ。それで普通に乗れるのだろうかと不安になりつつも、乗船時は意外と揺れることなく乗れた。船室は雑魚寝の大部屋ひとつであった。奥のほうに陣取ったのち、デッキへ向かう。八丈島を南東方面から見るのは初めてで、なんだか新鮮な感じがする。露天風呂から海が一望できる「みはらしの湯」を海側から見る。デッキに双眼鏡が備え付けられていたので、どのくらいの倍率なのか性能テストをしてみたが、人は全然見えず、「みはらしの湯」の屋根くらいしか見えなかった。
船は次第に八丈島を離れていく。付近はここ数日クジラの目撃情報があるエリアのようだが、白波も立っており、クジラのブローを探すのは素人には無理ゲーだった。
船内に目をやってみると、あおがしま丸は3フロアしかなく非常にこじんまりとしているが、通路に青ヶ島の空撮写真などが飾られており、期待は高まっていく仕様となっている。あと、バリアフリー対応になっていてトイレもとても綺麗だった(青ヶ島自体が急坂だらけでバリアフリーではないが)。
しばらく船室で横になって過ごす。揺れもそんなになく快適だが、となりでおばっちゃんが急に静かになり不安になる。おばっちゃんが静かになるとろくなことがない。なんか「やばい」とかまで言い出した。(そのくせ船を降りたら全然揺れなかった、余裕だった、と吹いており子供みたいな態度の変わりようの男である。)
と、船内放送が入る。はっきりは聞こえなかったが、クジラが近くにいるらしい。さっき探してこりゃ見つかるわけねえよ、と絶望的な気分になっていたのであまり期待はせずにデッキに上がってみてみたら、今度はみえた。結構近いところに2,3頭のクジラがいた。ブローも周りの白波とは明らかに異質で、はっきりわかった。なんだ、やっぱり違うからこれは余裕でわかるよね、とこれまたすぐに言うことがころころ変わる。
クジラが見えたのと反対側には、青ヶ島がだいぶ大きく見えるようになってきた。おおおおお!!!!!!島の周囲は一面崖だ!!写真では見ていたが、海から2,300m一気にせりあがる崖は実際見ると迫力が違う。船は島の西側を回り港に近づいていく。外輪山の外側を集落から港へ向かう道が見えてきた!その法面が盛大に崩落してる!それを盛大に補修している!地図だけを見ると、ここに道をとおせばいいじゃん、と簡単に思うが実物を見ると、それがいかに絶望的なルート取りであるかがよく分かる。ちなみにその崩落している道は都道236号青ヶ島循環線である。Googlemapで見ると、いまだ道が生きたまま表示されているが、15年以上前から余裕で崩落している。これだからIT企業は。一回でも現地来てみろよ、と。あのストリートビューの車持ってきてみろよ、と。なんだかふとITの限界を感じてしまった。
そんなことを思っているうちに、港が近づいてきた。外輪山を通した道、それを崩壊させた土砂崩れ、それを補修した跡、すべて迫力がとんでもなかったが、港も近づけば近づくほど要塞のようで迫力がある。斜面から海まですべてコンクリートで固めた巨大な建造物だ。
無事接岸し(それでも下船用のタラップ?は波にあわせて2〜3mくらい動いていたが)、無事青ヶ島に上陸!!というかようやく上陸!!
(つづく)

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