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Großbürger vs. Kleinbürger ... 市民とは!?

「20世紀美術の軌跡  ― 市民が創った珠玉のコレクション」と題して、#ルートヴィヒ美術館展 が日本で開催中。@国立新美術館(9月26日まで)その後、京都国立近代美術館に巡回。

ケルンのルートヴィヒ美術館はいわば地元の美術館であり、個人的に少し思い入れがあるので、門外漢ながら紹介させていただきます。
 
✨ 見応えのある数多の作品を所蔵している同美術館ですが、#ロシア・アバンギャルド の有数のコレクションを持つことはあまり知られていなかもしれません。ロシア以外では、Stedelijk Museum Amsterdamに並ぶ一大所蔵数を誇るのではないでしょうか。
 
その昔、大学時代に露文の故水野忠夫先生に感化され、ロシア・アバンギャルドの文学、演劇、そして美術作品に憧れました。しかし当時、日本ではなかなか作品を目にする機会はなく、もどかしい思いをしました。
 
渡独後、わりと近いケルンの美術館で、有名な作品の数々を目の前にして感動しました😍 巨匠のマレーヴィチだけでなく、それにつならる一連の作家の作品が集められているのが素晴らしい。

あの時代にこれらの作品をいち早く集めた蒐集家ルードヴィヒ夫妻の先見の明には、ただただ脱帽するしかありません。👏
 
❓ 蛇足ですが、翻訳者として今回の展覧会に関して一つ気になることがあります。展覧会タイトルにある #市民 の言葉です。ドイツ語の #Bürger からの訳語でしょうか。実業家だったルードヴッヒ夫妻を「市井の人」として括ることに少し違和感を抱きます。
 
その前の時代は、政商のような産業界のボス(#Industrielle )たちが美のパトロンだったことを考えれば、同美術館の寄贈者たちは市民に近いことは確かなのですが・・。
 
🔎 ちなみに、ドイツ語には #Großbürger#Kleinbürger の区分がありますが、日本語でいう市民は、「小市民」寄りの言葉に聞こえます。これが #ブルジョワ となると、また別のニュアンスになります。
 
英語のサブタイトルでは、#Civic Commitmentsとなっています。なんとなく公民運動を想起させる言葉です。ケルン市のプレスリリースを読むと、どうやらこれは #bürgerschaftliches Engagementを訳したもののようです。
 
✏ 明治維新以降にできた外国語由来の #翻訳語 は、元々は、それまでに日本になかった概念を表すために作られた #造語 です。ヨーロッパの都市におけるような「市民」の誕生の歴史をもたない国の訳語だから、微妙なズレを感じるのかもしれません。
 
👉 そんな言葉の蘊蓄はともあれ、一見の価値ある展覧会だと思います。
六本木にGO!

MUSEUM LUDWIG COLOGNE. History of a Collection with Civic Commitments, National Art Center, Tokyo, Japan, 29 Jun - 26 Sep 2022

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#国立新美術館 #京都国立近代美術館


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