【note特別対談Vol.1】 選ぶ言葉で未来は変わる―― コルク佐渡島社長&トライト笹井社長が語る仕事観
誰にでも、仕事において壁に直面する時があるでしょう。
そんな時、皆さんはどのように向き合っていますか?
今回は、かねてから親交のある当社社長の笹井と、大ヒット漫画の編集者であり、クリエーターエージェントのコルク社長佐渡島さんの対談を通じて、楽しく働くためのヒントを探ります。
プロフィール
コルク株式会社 代表取締役社長CEO
佐渡島 庸平(さどしま ようへい)
1979年生まれ。東京大学文学部を卒業後、2002年に講談社に入社。モーニング編集部にて、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)、『空白を満たしなさい』(平野啓一郎)などの企画を立ち上げる。2012年に講談社を退社し、「物語の力で、一人一人の世界を変える」をミッションとするクリエイターのエージェント会社、コルクを創業。著名作家陣とエージェント契約を結び、作品編集、ファンコミュニティ形成・運営、新人作家の発掘・育成などを行う。著書に『観察力の鍛え方 一流のクリエイターは世界をどう見ているのか』『感情は、すぐに脳をジャックする』など。
株式会社トライト 代表取締役社長(トライトグループCEO)
笹井 英孝(ささい ひでたか)
1967年生まれ。東京大学法学部卒業、コロンビア大学経営大学院修士課程(MBA)修了。国内大手銀行、外資系コンサルティングファーム等を経て、2005年医療機器メーカーであるオムロンコーリン株式会社(現フクダコーリン株式会社)の社長に就任。その後、セント・ジュード・メディカルやライフドリンク カンパニー等で経営トップを歴任。2019年10月、トライト代表取締役社長 兼 トライトグループCEOに就任。
自分の役割を見極める
― 佐渡島さんは33歳の時に、出版社を退職してコルクを創業されました。笹井さんは37歳で社長に抜擢され、企業のトップとして複数社を経験されています。2人とも、30代で会社員から経営者に転身されましたが、社長としてどのように仕事に向き合っていますか?
(佐渡島)僕が先に答えるのは恥ずかしいですね(笑)。当社のようにベンチャー企業の場合は、フェーズによって仕事内容が変わります。創業当初は人がいないから、全ての仕事を自分がやります。次のフェーズに上がると、他のメンバーに仕事を任せて、組織として運営していきます。自分にできないことを人に任せることは簡単ですが、得意なことを手放すとなると難しくて。特に、編集は属人性が高く仕組み化しにくいとい われる職業です。自分が口を挟まずに、組織として質を担保するにはどうしたらいいかと考えると、次のフェーズではミッション、ビジョン、バリューといった企業理念が必要になり、さらに個々が同じ方向へ行動できるカルチャーが必要になり、どんどん変わっていきます。会社のフェーズが変わるごとに、どこは委ね、どこは任せ、どこは自分でやるのか、ということを見極めていくことが大事だと考えています。
▼佐渡島さん公式note「物語の力で、一人一人の世界を変える「チーム」を目指して」
(笹井)佐渡島さんは一番得意な分野で起業しているから、コルクは佐渡島さんを中心とした会社ですよね。僕の場合は、もともと存在する会社に外部から社長として入ったので、会社との関わり方が佐渡島さんとは全然違います。そもそも、会社の経営者が変わる時は、そこに何等かの理由があるわけです。トライトを含めて4社の社長をやってきた中では、会社から求められるミッションに集中してきました。これは社長業に関わらず、自分が期待されていることの優先順位や判断を誤ると、正しいことをやっていてもどこかで齟齬が生じてきてしまうんですね。だから、自分が果たす役割を見極めることは仕事をする上で非常に重要だと感じています。
ゴールのイメージがあると、プロセスも楽しい
― お二人とも大きな責任やプレッシャーがのしかかる立場であるとお見受けしますが、お話を聞いていてポジティブオーラがすごいというか、本当に仕事を楽しんでいらっしゃるなと感じます。実際のところ、お仕事は楽しいですか(笑)?
(佐渡島)基本的に楽しいことしかしないです(笑)。それでも、やりたいことに到達するためには、得意なことばかりではないですよね。得意じゃなくてもやりたいことのために必要なことと捉えて、結構楽しんでやっています。ゴールのイメージがあると、なんでも楽しんでやれるのかなと思います。
(笹井)たとえそれがつらくても、プロセスや手段として捉えれば、楽しさに変換できる。気持ちの部分も大きいですね。
言葉によって次のステップが変わる
(佐渡島)大変なことはあっても、つらいことはないです。つらい、しんどいって決めているのは、結局、自分の主観だったりするので。例えば、時間がかかる、なかなか前に進まないということはあっても、それに対してつらい、という言葉を当てはめることはしないようにしています。起きている出来事に対して、自分の心がネガティブになる言葉は使わないようにしていて。例えば、前に進まないことに対して、未経験なことをやっているから前に進まないとか、複雑性が高い仕事なんだな、だからもう一回見直してみようとか。名付ける言葉によって次のステップは変わるんですよね。
(笹井)言葉はとても大事。物事が上手くいかない時に、「問題だらけ」と言うリーダーは負けてしまうと思っていて。逆に、「ダメなんじゃなくて伸びしろしかない」と言える人が勝つと思いますね。同じことを言っていても、使う言葉で結果が変わるような気がしてます。
(佐渡島)「問題だらけ」という言葉と、「伸びしろしかない」という言葉は、一見、どちらも現状を指しているように見える。でも、前者は、もはや変えることができない過去について、後者は未来について言及している。言葉のニュアンスの中に過去が含まれているか未来が含まれているかで、その後の行動も変わるから、現状について説明する時も、「変えられる未来」に注目できる言葉遣いをすることを大事にしています。
(笹井)どう名付けるか、どう見るかという視点は、マインドセットにも影響が大きい。よく社員にも言っているのですが、せっかく多くの時間を費やして仕事をするのだから、楽しくないともったいない。楽しいか楽しくないかというよりは、楽しいと思ったもの勝ちなんじゃないかなと思います。仕事での成功や失敗は、概して私生活にも影響を及ぼすわけなので、だとしたら楽しくいないといけないんじゃない?と。時間は有限なので、一日一日を無駄にしたくないし、夜ベッドに入った時にやり切った!と思って寝たいですね(笑)。
(佐渡島)僕の場合は、働いているという概念があまりなくて。会社の時間も、子育ての時間も、理事を務めている雲孫財団※という財団のための時間も同じなんです。基本的に全部楽しいです。
※雲孫財団HP: https://unson-foundation.org/
未来は考えるけど、日常は目の前のことにフォーカスする
― 楽しんだもの勝ちともいいますが、どうしたらそんなに楽しめるのでしょうか?
(佐渡島)未来を指す言葉を使うようにしたり、未来のことを考えたりするのは楽しいですが、実は、日常的には目の前しか見ないようにしています。
(笹井)日常の楽しいことって、何をしていますか?
(佐渡島)僕は、楽しみを感じるポイントをたくさん持っていて、例えば、今は、5本指シューズを履いていて。歩く時って、一般的にはかかとから着地しますが、この靴では、足の指から着地してアーチを使って歩くことを楽しんでいます。大体1日1万5,000~2万歩くらい歩いていて、毎日毎日挑戦するんですが、なかなかうまくいかない (笑)。歩き方以外でも、日常の至るところに楽しみを作っています。呼吸の仕方だったり、1日の食事のとり方だったり。細かく、小さな目標をいっぱい用意し、それをやり続けることで長期的にはやりたいことに繋がっていくような、そんなやり方を目指しています。
▼佐渡島さんの公式noteはこちらからご覧いただけます▼
*編集後記*
経営の最前線で活躍されるお二人のお話を伺い、アメリカの心理学者ウィリアム・ジェームズの言葉を思い出しました。「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる。」
言葉の選択により、思考も行動も、そして将来も変えられそうな気がしました。仕事の壁にぶつかった時は、チャンスと連呼して(笑)、楽しみに変えていきたいと思います。(トライト広報)
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