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青果流通の未来を変える!現場と作る情報連携サービスの開発【株式会社インダストリー・ワン|事業紹介・実装報告】

​​青果流通において、青果物は消費期限が短く収量の変動が大きいため 、収量の変動に応じた迅速な需要者(小売店・仲卸業者)との数量調整が必要となる。しかし、多くの生産者は1〜2名と少数で営業機能を担っているため、販路開拓・数量調整を消費期限内に実施することが難しい。結果として廃棄・投げ売り・欠品が発生し、経営が安定しないことが課題となっている。

そこで、各産業におけるDXの戦略立案からシステム開発、デジタルビジネス創造を支援している株式会社インダストリー・ワン(以下:インダストリー・ワン)は、仲卸商流(生産者→仲卸→小売)と直売商流(生産者→小売)を対象に、青果流通において新たな取引機会を創出するためオンラインサービス開発のための実装プロジェクトを進めている。仲卸商流からは仲卸会社として「横浜市場センター株式会社」が、直売商流からは愛媛県松山市にある「エフ・マルシェ古川店」と協力し意見交換を行ってきた。
その中から、直売商流である「エフ・マルシェ古川店」の事例を中心に紹介する。


「エフ・マルシェ古川店」(直売商流)が抱えていた課題と解決策

「エフ・マルシェ古川店」は、直接生産者から多くの青果物を仕入れているため、生育状況や時期によって収穫量が大きく変動してしまうことがある。現在の業務フローは以下の通り。

■現状の業務フロー
・「エフ・マルシェ古川店」が青果物の収量を予想
・売り場のレイアウトを決定
・実際に入荷された量をみて調整
・SNSでの情報発信やポップを作成
・日中に在庫チェック
・在庫が少ない場合は、生産者にメールもしくは電話で連絡
・生産者が追加出品

現在のフローだと、予想していた収量よりも、実際出品された商品数が少なかったり、逆に出品量が多く、全てを売り場に並べることができず溢れたものは、売り場の下の方に並べることになるといった事例が発生している。
生産者は売り場の状況や他の生産者の出品量などを把握する術がないため、いざ売り場に来てみると売り場の出品量が少なく「自分はもっと出品する余力があったのに・・・」という機会損失が起きていた。

そこで、インダストリー・ワンは、オンラインサービスを活用して事前に収量や出品量の情報共有を行うことで、小売店と生産者双方がうまく連携することができると考えた。

■理想の業務フロー
・オンラインサービスを利用し、事前に収量・出品見込みを生産者が入力
・エフ・マルシェ古川店の担当者が出品数を確認後、売り場づくりを行う
・SNSでの告知やポップ制作を行う
・他の生産者の出品量を確認し、余力がある生産者は追加出品

このように、最新の商品情報・出荷可能量を円滑に連携することにより、それに対応した売り場づくりをすることができる。例えば、旬の野菜の収量が事前に分かれば、特設ブースを設ける、売り場を広くする、産地状況に応じた商品拡販施策(新商品の導入、イベント開催、SNSを活用した販促施策等)を講じることができる。また、青果物をフレッシュな状態でロスなく販売することができる仕組みづくりを実現することによって、需要者と生産者双方の売り上げ向上だけではなく、消費者の購買意欲向上に繋がる。

今年度の実装

今年度は、現場で使えるオンラインサービス開発のために、需要者と生産者が連携し、商品を拡販していくために必要な業務フローおよびデータ項目を明確にした。実際に行ったのは以下の3つ。

(1)生産者・需要者インタビュー
・生産者が販売業務において抱く課題および取得しているデータ項目を確認
・生産者が抱く課題を解決しながら商品を拡販していくために必要な要素を確認

(2)生産者・需要者合同ワークショップの開催(2回)
・サービス運用にあたっての課題および解決施策に関するディスカッションを実施

(3)サービスモックアップの作成
・生産者・需要者双方の意見を反映したサービスの画面イメージを作成する

この中から、特に活発に意見が出たワークショップについて詳しく紹介する。

生産者を交えた合同ワークショップでサービスの要件を明確化

これまで、インダストリー・ワンと「エフ・マルシェ古川店」、「横浜市場センター株式会社」とで何度も協議を重ねてきたが、実際に生産者が使えるものにしなければ意味がない。

そこで、生産者を交え、商流別で2回のワークショップを開催。需要者から生産者に対して、課題と改善策、現在考えていることなどについて直接共有することで、サービス活用のメリットを理解してもらう目的があった。また、システムを使うとするならばどのような機能があると便利かなどの双方の意見を出し合うことでサービスの要件の明確化を目指した。

■2月15日(木)第1回ワークショップ

第1回ワークショップは、仲卸商流(生産者→仲卸→小売)をターゲットに、新商品導入から定番商品化までをスムーズに実現していくために必要な 要素について検討が行われた。

<参加者>
【需要者】
横浜市場センター株式会社

【生産者】
栗林農園株式会社
百姓百品村株式会社
農ぷらす愛媛株式会社
有限会社フローラルクマガイ

<生産者から出た意見※一部抜粋>
・年や天候によって収量が変動するため、取引量を確約することはできない
・差別化要素や商品の特長を考えることを苦手とする生産者が多い
・自社の生産規模だとどの小売と取引ができるのか、どのような商品規格が好まれるのか、などマーケット側の情報が不足している
・仲卸事業者の業務への理解が深まり、取引機会創出に向けて連携できる可能性を感じた

■2月29日(木)第2回ワークショップ

第2回ワークショップは、直売商流(生産者→小売)向けに開催された。

<参加者>
【需要者】
株式会社フジ・リテイリング

【生産者】
風早山本農園
蕃茄屋
木下美穂さん

<生産者から出た意見※一部抜粋>
・入力はできるだけ簡単にしてほしい
・生産者だけの情報ではなく売り場で何か売れているのかなどの情報が見えると嬉しい
・農家同士は競合にもなるので、プライバシーを守った方法で商品情報の見える化をしてほしい
・入力が難しい情報もある
・月別や週別、時間別などで販売数の情報などがチェックできると良い
・野菜の予約システムがあると嬉しい
・お客様からのフィードバックがあるサービスだと良い

<ワークショップの成果>
・生産者から挙げられた入力時の課題に対して、生産者・需要者で議論して解決策を導くことができた
・生産者が負荷なく入力でき、かつ需要者の拡販施策を策定に繋げられるデータ項目を明確にすることができた
・ワークショップを通して整理したデータ項目に対して、全生産者が「入力にあたっての課題はない」と回答した

今年度の実装・ワークショップを終えて

■株式会社フジ・リテイリング 寄川さん

株式会社フジ・リテイリング 寄川さん(左)・梅本さん(右)

ワークショップを通して、デジタルを使った新たな商流のスタートラインに我々も参入できたのではないかと実感しました。一番大切なのはお客様にいかに不便なく地域の食品をお届けするかですので、それを実現するためには生産者さんや、それを販売する我々のような小売店が連携していかなければいけません。そのためのデジタルツールを、インダストリー・ワンさんのお力を借りながら作り上げていけたらと思います。

■風早山本農園 山本さん

蕃茄屋 田原さん(左)・風早山本農園 山本さん(中央)・木下美穂さん(右)

私はエフ・マルシェさんに商品を出品している生産者の代表を務めさせていただいております。ワークショップに参加して、非常に将来性を感じました。我々生産者の意見もしっかりと聞いていただけたので、このシステムが完成し、我々生産者が実際に使える日がくるのを楽しみにしています。

■株式会社インダストリー・ワン 大山さん・和田さん

■ 大山さん
ワークショップを実施してみて、生産者のみなさんのご要望と、小売店様のご意見が一致していたことがとても良かったと思います。同じ方向に進んでいくにあたり、様々な視点でご意見をいただけたことは、非常に今後のシステム作りに役に立つと感じています。

■和田さん
元々お取引があった生産者さんとのワークショップということで、非常に盛り上がったと思います。最初は生産者さんから「入力が難しそう」という不安なご意見があったものを、ワークという形をとったことで、「毎日見えるものにしよう」というアイデアをみんなで出し合えたことが非常に成果が高いと感じました。

▼株式会社インダストリー・ワンHP

今年度現場が求めるサービスの要件を明確化できたことで、来年度は引き続き需要者と協力しながら、売り上げ向上、ロス削減、業務効率化、継続的に使えるオンラインサービスの開発を進めていく。

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