翻訳部署のない会社での社内翻訳のあるある
翻訳に関わる働き方としては、個人事業主として在宅で翻訳をする、翻訳会社内で翻訳をする、一般企業内で翻訳をする、などがある。
私は最後の例、いわゆる社内翻訳をしてる。
社内翻訳も、翻訳専門の部署で翻訳をする場合と、翻訳部署のない会社の一部署で翻訳する場合がある。
これまで、後者の環境で翻訳することがほとんどだった。今日はそんな環境でのあるあるを書いてみる。
依頼される仕事内容
もともと社内で翻訳や英語の担当という求人に応募したわけではなく、やりますアピールをして翻訳や英語関連の仕事をさせていただいている。
そういう流れでこれまで受けた依頼は、
・翻訳会社に出す程の量ではないけど、自分達でするには時間がかかる翻訳や英作文
・すでに翻訳版があり、原文の一部更新に伴う部分翻訳
・自分が書いた英文の文法面のチェック
・翻訳やチェックだけでなく、資料全体を見て意見が欲しい
・他の文書との整合性チェック
などがある。
文書の種類も技術、品質保証、海外営業に関わるメール、会議資料、申請書類、レター、チラシ、説明書、パンフレット、分析レポート、マニュアル、など
その人の英語観を見る
社内翻訳をする場合、人によって求める度合いが違うので、どこまで求められているか、事前に聞いたり雰囲気を察したりしてその都度対応を変えている。
翻訳専門の部署がない会社は、そもそもあまり翻訳の必要がない会社がほとんどだと思うけど、中には社員の英語力を上げるためにTOEICも義務化して、個々の英語力で仕事をしてほしいという方針の会社もあると思う。
後者の場合、これまでの経験上、なるべく自分の英語で書いてみたいけど、チェックや添削、アドバイスして欲しいという人が多い。こういう方には、訂正した理由や文法ルールの説明、「これでバッチリです!」というコメントが喜ばれ、依頼が増えていく。
中には、解説はいいいからサクッとチェックと訂正だけしてくれればいいという人もいる。そういう人はスピード重視なので、余計な説明はつけずに簡潔にする。
まれに、TOEICも社内基準をクリアしてるし、翻訳専門の人なんていらないのさ、という自信満々な人もいる。そういう方の上司から、その人の英文チェックの依頼が来た時は、自分の訂正が間違ってないかよくチェックするし、何よりも添えるコメントに気を使う。
全否定せずに、
「この表現だとこういう意味になってしまいますが、こちらはいかがでしょうか」
「こちらはこういう意味で書かれたものと解釈しましたが、合っていますか」
「こちらは〇〇の誤記と思われますが、いかがでしょうか」
気は使っても、言うべきことは言う。
ただし、気を悪くしないように工夫する。
気持ちよく仕事をしてもらい、次の依頼をもらうため(笑)
自分の訳にチェックが入らない責任
海外に留学や駐在経験のある人がいる場合、たまにチェックしてくれる場合もあるけど、ほとんどは自分が訳したものがそのまま使われる。
チェックでうっかりミスを見逃して、真っ青になったことも。(結果オーライだったけど)
文書の重要度が高いほど、プレッシャーもある。
できる限り確認しても、時間は限られている。
そこは、腹をくくる。これが今のベストだと。
どちらの単語がいいか聞かれた時、辞書の意味や実際の用例をチェックして、ハッキリと示す。
迷う人は「これでいきましょう!」の一言を待っているから。
文書全体を良くするやりがい
翻訳の依頼には、翻訳だけでなく、文書の構成も含めた提案が採用された時は、社内翻訳ならではのやりがいだと感じる。
例えば、英語の経歴概要を出す場合。
既に提出済みの英語ネイティブの人のものが最新の肩書から過去に遡る順で、仕事の功績もアピールした書き方ばかりのところに、
上司から「英語の履歴書これです」と送られてきたのが古い年代から新しい年代へという順で、所属部署名のみしか書かれてなかったら、
「他の人と体裁を合わせたいので、新しい順にしませんか。また、ここでは実績アピールも必要なので、今までの担当業務や結果を教えて頂けますか」
と提案して、見栄えが良くなった。
他にも、図が混ざった技術的な文書で、本文と図の数字が合ってない時はそれもコメントつけて確認する。急ぎの仕事で、似たような図が続くと、コピペの連続でこういう間違いもある。
また、どう考えても分かりにくいデザインの表があったら、自分がいいと思う表も添えて、
「この表だとより分かりやすいと思いますがいかがでしょうか」
のコメント付きで送る。
製品をよく知らない人向けのプレゼン資料などは、素人感覚を最大限に活用して、
「こういう一言が始めにあると入っていきやすいです」
「いきなり細かいデータだと戸惑うからまずはざっくりとした説明からではどうでしょう」
という意見が重宝された時もあった。
そうすると、だんだん翻訳だけにとどまらず、原文や構成から一緒に考えて欲しい、という依頼も来るようになった。
この、ゼロから一緒に何かを作り上げていくプロセスが楽しい。そこで、英語で役に立てればなお嬉しい。
さすがに、行ったこともない学会のレポートを書いてと言われた時は、お断りしたけど(笑)
まとめ
今日は社内翻訳あるあるをまとめてみた。
社内翻訳というと、他の雑務もやらないといけない、電話も鳴るし集中できない、などマイナス面が取り上げられるけど、マイナスばかりでもない。
翻訳+クリエイティブな面もあるし、
目の前の人の反応が見える、
専門用語や知識、現場の空気が学べる
プロジェクトの進行に立ち会える。
会社側にとっても、
すぐそこにいるから依頼しやすい
進捗が分かりやすい
英語関連をまとめて任せられる
など、いいところがあると思う。
「へ〜こんな世界もあるのね」と思ってもらえたり、社内翻訳に興味がある人の参考になれば幸いである。
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