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「サザエさんドリブン」が世界を救う

1.「サザエさん症候群」はいつまで続く?

 サザエさんもきっと困惑しているはずです。お魚くわえたドラ猫を裸足で追いかけていってしまうほど、買いものしようと街まで出かけたのに財布を忘れてしまうほど、そんな陽気で、愉快で、元気な「サザエさん」が、憂鬱な気分や倦怠感の代名詞に使われるなんて…。もちろん「サザエさん」そのものが悪いワケではありませんが、作者の長谷川町子先生だって「サザエさん症候群」なんて言葉がこんなに日本中に広まるとは、思いもしなかったでしょう。
 日曜日の夕方頃になると気分が落ち込む。楽しい休日が終わるタイミングで「明日からまた仕事か…」、「仕事行きたくねぇ…」とネガティブな気持ちになる。「サザエさん症候群」はそんな症状を表すスラングですが、「Wikipedia」では以下のように定義されています。

サザエさん症候群(サザエさんしょうこうぐん)とは、日曜日の夕方から深夜、「翌日(月曜日)からまた通学や仕事をしなければならない」という現実に直面して憂鬱になり、体調不良や倦怠感を訴える症状の、日本における俗称である。
主に学生や会社員など、月曜日から学校や勤務が始まる人に起こりうる症状とされる。ごく軽度のうつ病又は適応障害の一種とする説もある。
(参考:Wikipediaより「サザエさん症候群」

 ふと「サザエさん症候群」っていつ頃から使われるようになったんだろう?と思い調べてみたところ、“鼻から牛乳~♬” でおなじみ!?の嘉門達夫さんが、1993年にすでにこんな歌を歌っていました。

“サザエさん見てると ちょっぴりユウウツ
 日曜日もオシマイ 明日は会社に行かなきゃ”

(『NIPPONのサザエさん』作詞・作曲・歌:嘉門達夫、1993年、ビクターエンタテインメント)

 まさに「サザエさん症候群」です。ということは「サザエさん症候群」は1993年以前には、すでに世の中に広まっていたと言えます。つまり、私たちはもう30年も「サザエさん症候群」の状態にあるわけです。
 厚生労働省が実施している調査によると、日本の気分障害患者数は「1996年には43.3万人、1999年には44.1万人とほぼ横ばい」でしたが、「2002年には71.1万人、2005年には92.4万人、2008年には104.1万人と著しく増加している」とあります。その後のデータを見ると、2011年には一旦減少(2005年と同程度)しているものの、2014年に111.6万人とまた増加に転じ、2017年には127.6万人と過去最高となっています。直近20年間で約3倍にも増えていることが分かります。このデータだけを見ても、「サザエさん症候群」の症状を感じている人は、いまだに多く、いまだに増えていることがわかります。

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2.「サザエさんドリブン」ってなに?

 私たちはいつまでこの状態を続けるのでしょうか?いつまで「サザエさん症候群」と付き合っていくのでしょうか?いつになったらそんな人たちをなくすことができるのでしょうか?そのためにはどうしたらいいのでしょうか?そんなコトをずっと考えています。
 そこで出たひとつの答えが「言葉から変えてしまえ」です。「言葉は現実化する」と言われます。「言霊」なんてものもあります。であるならば、「サザエさん症候群」なんてネガティブな言葉はなくしてしまえ。その代わりにもっと前向きな、ポジティブな言葉を使おう。そう考えたのが「サザエさんドリブン」の成り立ちです。
 「◯◯ドリブン」という言葉も最近あちこちで使われるようになり、もはや「バズワード」の感もありますが、あらためてこの「◯◯ドリブン」の意味するところを確認しておきましょう。

ドリブン(driven)とはドライブ(drive)の過去分詞。「~に突き動かされた」「~に駆り立てられる」というのが本来の意味です。
「○○ドリブン」はそこから転じた言葉で、「○○を起点にした」「○○をもとにした」物事や人を指します
(参考:『みんなのキャリア相談』HPより「最近話題の「ドリブン」とは|意味・使い方」)

 皆さんにもきっと「何かに突き動かされる」こと、「何かがきっかけとなり、行動が駆り立てられること」ってあると思います。「サザエさんドリブン」もそれと同様に、テレビで「サザエさん」が始まると、「明日は仕事だ!」と仕事へのモチベーションが高まり、「早く明日にならないかな」、「早く仕事がしたい」、「早く職場のみんなに会いたい」…そんな前向きな気持ちが駆り立てられることを期待しています。

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3.「サザエさん症候群」への対処法!?

 では、「サザエさんドリブン」な世の中にするためにはどうしたらいいのか?それは決して簡単なことではありません。ネット上では「サザエさん症候群を防ぐ休日の過ごし方」、「サザエさん症候群の原因と対策」なんて情報もたくさん見つけることができます。例えば、金曜日までに仕事を片付けるとか、翌週の予定を立てておくとか。さらにもう少し踏み込んで、ストレスの原因を知る、ストレスをコントロールする、思い切ってそこから逃げ出すとか。確かに「対処法」としては有効であり、大切なことだと思います。
 でも、私たちが考えなければならないのは、私たちが創っていかなければならない世界は、「そんな対処すら必要のない世界」です。弊社にも残念ながら、ストレスに悩んでいる社員、メンタル疾患で休職している社員がいます。彼らを見ていると、まだ若く可能性に満ちた彼らが、なぜ体調を崩さなければならないのか?仕事を休まなければならないのか?退職しなければならないのか?自分のことのように悔しく悲しい思いになります。もちろん、自分は専門医ではありませんので、彼らに対して何らかの「診察」や「処置」をしてやることなどできません。彼らに寄り添い、彼らの話を、彼らの悩みを、彼らの想いを、彼らの心の叫びを聴いてやることくらいしかできません。その度に自分の無力さを思い知るわけですが、だからといって「仕事なんだから多少のストレスは仕方ない」、「最近の若いもんは我慢が足りない」などと言うつもりは毛頭ありません。もっと根本的な原因からつぶしていかなきゃいけない、もっと本質的な問題解決をしていかなきゃいけないと思うのです。

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4.「サザエさんドリブン」な世界を創るために

 「働きがい」に関する調査・分析を行い、「働きがいのある会社ランキング」を発表したり、「働きがいのある会社」を増やすための各種サービスを行っている「Great Place to Work®(以下、GPTW)」によると、「働きがいのある会社」とは「働きやすさ」と「やりがい」の両方がかね備わった組織であるとされています。

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※画像引用:GPTWのHPより「GPTWの考える働きがい」

 「サザエさんドリブン」な世界を創っていくためには、「サザエさんドリブン」な会社や職場を増やしていくためには、この「働きがい」というものが間違いなくひとつのキーワードになります。特に「やりがい」がポイントです。所謂「働き方改革」は、主に「働きやすさ」の改善に主眼を置いています。つまり「働き方改革」だけでは「働きがい」を高めることは正直期待できません。「働きやすさ」とともに、いかに社員の「やりがい」を高めるか?それが重要だと考えます。
 仕事の「やりがい」を高める施策にも色々ありますが、個人的に最も重要なのが「信頼関係」だと思います。信頼関係をベースに対話を重ね、仕事における目的や意味を共有する。仕事を遂行していくために、一人ひとりが自身のスキルアップや成長に積極的になり、より大きな仕事を成し遂げたいと思えるようになる。その結果、仕事に手応えや張り合いを感じられるようになる。これを循環させていくことで、「やりがい」は高まっていくものと考えます。
 最近「心理的安全性(=Psychological Safety)」という言葉もあちこちで聞くようになりましたが、これも「信頼関係」が土台になると思っています。「心理的安全性」も誤解を受けやすい言葉/考え方ですが、その目的は「チームの生産性をあげる(=成果をあげる)」ことだと言えます。それには、人と人が集まることで起こりうる感情的な衝突や遠慮を排除しなければなりません。それらは生産性をあげる以前の問題だからです。そのためにも良好な「信頼関係」が築けていることが重要です。
 信頼関係があることで、メンバー一人ひとりが余計な遠慮や忖度をする必要がなくなります。そして各々が持てる全力を出しながら、チームとしてひとつの目的に向かっていく。そんな環境を創ることが、「サザエさんドリブン」な世界に繋がっていきます。そういう意味でも「心理的安全性」の向上は、企業が、組織が、マネージャが、今後も真剣に取り組んでいかなければならない、ひとつの大きなテーマだと思います。

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5.さよなら「サザエさん症候群」、ようこそ「サザエさんドリブン」

2029年、アニメ「サザエさん」は放送60周年を迎えます。その頃にはきっと「サザエさん症候群」なんて言葉も使われなくなり、仕事が憂鬱だという人もいなくなり、「サザエさんドリブン」な世界…日曜の夜になると「早く明日にならないかな」、「仕事が楽しみ」という人が溢れる社会に、世界になっていると信じています。っていうか、もっと早くそういう世の中にしていかなきゃいけません。
 働くひと一人ひとりが仕事を通じて成長を感じながら、心身ともに充実した生活を送っている。そんな「Work Life Happiness」の実現を目指すことは、「サザエさんドリブン」な世界を目指すことでもあります。決して楽な道程ではありませんが、「心理的安全性」の向上をひとつの拠りどころとして、メンバーと信頼関係を構築する、個性や強みを引き出す、チャレンジングな仕事を創出する、メンバー同士が切磋琢磨したり、助け合ったりできる環境を創る、そして成果を出せる組織を創ることを念頭に、地道に、愚直に取り組んでまいります。
 そして「サザエさん症候群」なんてものを撲滅し、みんなで一緒に「さよなら“サザエさん症候群”、ようこそ“サザエさんドリブン”!」と笑える日を迎えたいと思います。その時はきっとサザエさん一家もみんな一緒に笑ってくれるはずです!

“明るい笑顔に幸せが ついてくる
 楽しい仲間と 陽気なサザエさん”

(『サザエさん』作詞:林春生、作曲:筒美京平、歌:宇野ゆう子、1969年年、株式会社EMIミュージック・ジャパン )

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Twitterアカウント(@wanovation_2020)でも毎週日曜日に「#サザエさんドリブン」と呟いています。よろしければそちらもご覧いただければ幸いです。

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