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欧州のビオホテルについて感想

欧州のビオホテル~エコツーリズムから地域創造へ~というタイトルにてスイス在住の滝川薫さんに報告頂きました。
千葉県出身。北スイス・シャフハウゼン州在住の著者、ジャーナリスト、ガーデンデザイナー。東京外国語大学イタリア語学科卒業後、渡欧。スイス・オーシュベルグ造園学校にて植栽デザイン課程修了。スイス・オーストリア・ドイツをフィールドに、持続可能な建築・エネルギー・地域発展・環境をテーマとした視察セミナー、通訳・翻訳、執筆といった発信活動を20年来行う。スイスでは夫と共に庭園・緑地のデザインにも携わる。
2022年から日本の同志と共にSJSスイス-日本サステナビリティ交流会を発足し、ウェビナーシリーズを実施する。著書に「欧州のビオホテル~エコツーリズムから地域創造へ」(ブックエンド)、「サステイナブル・スイス」(学芸出版社)、「欧州のエネルギー自立地域」(編著、学芸出版社)など多数。
①ビオホテルとは何か
ビオとは日本で普及しているオーガニックと同義語であり、欧州では有機認証を受けた農家や加工業者、その生産品を「BIO」で表します。また、農薬や化学肥料を利用する一般的な農業である慣行農業と区別され、自然の自立機能を利用し、土壌を豊かにし、動物に優しい飼育方法など生物多様性を向上させ、気候保全に寄与する資源循環型の農業です。なぜBIOが必要であるポイントとしては遺伝子組み換えでないことを保証、残留農薬の問題が少ない事、定期的に厳しい検査や加工品も厳しい規制、農家にもフェアな対価が支払われるなど様々な点が挙げられます。
ビオホテルの活動はビオの食事を中心軸としてCO2の排出削減やエコロジー建築に広がっています。最大の特徴はビオホテルを中心にビオ地域、ビオ村といった地域の経済の中心になっていく地域循環型社会の実践が出来つつある点です。
報告では、まず、ビオホテルを取り巻く問題意識から話が始まりました。欧州でも気候中立や農と食の大転換、エネルギーの大転換の意識から生物多様性と持続可能な地域経済と社会づくりの意識が背景にあります。
欧州のビオホテルはNPOビオホテルズ協会の認定基準があり、100%ビオの食と資源マネジメントと持続可能な食・農・観光の推進で競争力強化を目指しています。
フード基準ではビオ認証食品・飲料、出来る限り地域のビオ食材を利用。電子レンジ設置の禁止、ベジタリアンメニューの提供などがあります。
ノンフード基準とし建築に際してもエコロジカルな資材・対策の採用、コスメはオーガニック&ナチュラルコスメ認証のみ(COSMOC認証)。CO2排出量を算出、2年に一度再認証、一人一泊40㎏が上限、再エネ電力のみ利用、リサイクル紙の利用など。
CO2を尺度とした総合的な資源マネジメントとて、ビオホテル協会のホテルの宿泊者の平均CO2排出量は1人一泊7.5kg(朝食付き)であり、21社がカーボンニュートラル化(全食事含む)となっている。
ホテル環境認証ももっとも信ぴょう性の高い基準でありその点においてブランド化に成功している。欧州6か国70のメンバーホテルがドイツ語圏を中心に存在する。
ビオホテルは7つの特化分野別マーケティングとしてロマンス、家族、ウェルネス、グリーンミーティング、休暇、健康、カーボンニュートラルが挙げられる。その意味でビオホテルの楽しみは持続可能な衣食住にあります。ビオ食材、地域食材の伝統料理からオーガニックコスメやリネン、タオル寝具など、地元職人による自然素材の家具やベッド、自然を生かした運動プログラム、バウビオロギーと断熱に重点を置いた建築、無垢材、自然素材の内装からオーガニックガーデンまで全て環境に配慮されたもので統一されている。

②ビオホテルと地域創造の例 ビオホテルの有機農業推進効果
ビオホテルではホテルベット1床あたり農地1~2ha、合計4200~4800haの有機農地の維持につながっている食品購入量(2015年)は1200万ユーロ(14.4億円)である。地域を中心とした有機農家を潤し、地域のホテルに影響を与えて、従来のホテルでもビオ消費が増えた。西オーストリアのホテル・チェーザヴァリーザでは数年で地域のビオ農家を1件から16件に増やし、ビオ農家にとっての大切な取引先になっている。
③ビオホテルは地域のエネルギー大転換を牽引 
ビオホテルでは熱・電気消費把握とCO2排出量削減があり、さらに再エネ利用義務もある。そのために太陽光発電やバイオガスコージェネの自家消費や地域熱供給、木質バイオマス発電などホテル事業だけでなく地域内業者とのネットワークでエネルギーの循環を行うようになっていった。カーボンニュートラル化に成功する背景にはホテルだけでなく地域のエネルギーも一緒に考えていった。

まとめとして2000年ごろに始まった情熱的な中小企業のオーナー経営者たちによる民間のイニシアティブである共同体が発足した。100%ビオと総合的CO2削減での最も信ぴょう性とブランド力の強いホテルの環境認証になっている。ビオ衣食住の質と楽しさを伝え、学べる場所であり、気候中立に必要な農と食、暮らし、企業活動の持続可能化への先導役にもなっている。さらにビオを主軸とした持続可能な地域づくりを掲げる地域も出てきている。

グループ討論のテーマは『ビオは中小企業家の仕事づくりになり得ると思いますか?』としました。高度経済成長の大量生産大量消費社会からバブル崩壊、経済の低迷期を迎え、さらにリーマンショック、東日本大震災を経験し、コロナ感染症やロシア・ウクライナ問題に直面している日本において中小企業が環境問題を考え、そして持続可能な経済を確立することは可能でしょうか?欧州で行われている中小企業の取り組みと何が違うでしょうか?その様な過去の経済と海外の取り組みを踏まえ、「ビオホテル」を通じて今後の中小企業の在り方を討論し、自社で出来る取り組みや在り方を見いだせるグループ討論となればと思いテーマ設定しました。
グループ討論では環境について様々な意見が出されました。ビオホテルのオーナーの経営の哲学としてビオを核にし、地域のリーダーになるという「在り方」に感銘を受けた。グローバルな時代の中で共通意識を持って環境問題に取り組み、それをライフスタイルにしている姿に、日本人はなぜかそういった「生き方」について意識がいかず、日々を過ごしている人が多いと再認識させられた。「ビオ」というキーワードで生活スタイルの変化、大量消費から選択消費への変化について学ぶことができ、中小企業家の在り方について考えさせられたなどの意見がでました。しかしもちろん、自社で出来ることが見つからない、関連する地方自治体や大企業が取り組んでないからできない、日本の環境の意識に対する遅れの為行動できない、など出来ない理由を並べてしまう事がもどかしいとの意見も多数ありました。

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