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被災した輪島塗のものづくりを未来に繋ぐ「Re NOTO WARE」
自然災害は、予測もなくやってくる。
2024年1月1日の夕方、僕は毎年初詣に行っている淡路島の伊弉諾神宮にいた。
家族でお参りも終えて、石垣に座っているとなんか揺れた気がする。携帯に能登半島で最大震度7の地震があったという通知が入った。
すぐに輪島にいる職人さんや珠洲で塩を作っている職人さんの顔が思い浮かんだ。
帰りの車で、能登地域の地震関連のニュースを流しながらハンドルを握った手は汗ばんでいた。
津波の二次被害もあったり、冬の寒い時期で雪の降る地域での避難生活は想像しただけでも過酷になると思うと、復興という文字までは長い年月がかかると思った。
阪神淡路大震災を経験したのは、僕が中学1年生のとき。
普通だと思っていた日常が一気になくなってしまった。
1995年1月17日5時46分。地震はなんの前触れもなくやってくる。
食器棚のお皿は飛び散らかり、家族で倒れるものがない部屋で固まって過ごしていた。
当然電気もつかないし、水やガスも出ない。
夕方には長田エリアの火災がひどくなり空が赤く、雪が降ってきたかと思ったら灰だった。幸い垂水区の被害は中心部に比べると少なかったとはいえ、灘区に住んでいたおばあちゃんの家は全壊。生き埋めになっていたところを助けられて、僕の自宅に避難してきた。
水は毎日、ポリタンクで湧水を汲みにいき、炊事は石油ストーブでできるもの。
普通の生活がこんなにもありがたかったのかと子供心に思った記憶がある。
そんな経験をしたこともあり、2016年の熊本地震のときもその地域にいる仲間の安否を確認し、すぐに現地にいき被災地で僕たちができる支援をしたり、神戸から支援できる義援金集めや物資を集めて送るなどスタッフと協力しながらやってきた。
そんな熊本地震のときに仲間の池田親生(CHIKAKEN)がつくった熊本支援チーム。
広島や熊本の水害などでもすぐに現地に入って被災地のサポートをしている。
能登半島地震のときも彼らは1月2日には現地に入り、物資の配達や炊き出しをやっていた。代表の池田親生に連絡し、輪島の漆器産地に対して何かやりたいから現地に行きたいと申し出をし、タイミングを合わせて行けたのが1月30日。
鯖江の職人さんのところに顔を出して、車で石川に向かった。
マンパワーでできることはマンパワーで
熊本支援チームが拠点を置く能登半島・七尾市の施設に立ち寄った。
膨大な物資の仕分け作業を見て荷捌きや炊き出しが必要ならなんでもやるよと声をかける。「こっちはたくさんボランティアがいるので大丈夫です!」と元気な声で返ってきたので、七尾で茅葺屋根の古民家で宿を営む仲間のところに寄って、被害状況を確認し、蔵の荷物整理を手伝った。蔵の屋根は損傷していた。
そこには昔使われていたであろう昭和20年代ぐらいに作られた漆器が山ほど出てきた。
「使い道もないので古道具として安く売って今を生きるための現金が欲しい」と被害者本人の話を聞き、まとまった金額で買い取ることにした。
その後、熊本支援チームがまだ足を踏み入れていない輪島エリアに車で向かった。
15時ぐらいに七尾を出発したこともあり、輪島から帰ってくる自衛隊の車や各地から支援に行っているボランティアチームの車とすれ違うなか、家が倒壊しているエリアに入っていく。
2022年5月、クライアントの取引先で珠洲で塩を作っているところに取材に行ったことがあった。そのときは輪島の朝市通りの近くのホテルに泊まり、観光客で賑わっていたことを思い出す。今はその気配が全くなくなった景色に唖然とした。
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煙のにおいがまだ残る朝市通り。
瓦礫の山や、マンホールが1mほど地面から浮き上がっていたり、段差ができてしまった道を進む。
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このエリアは輪島の朝市が有名な観光地であるが、漆器産地の中心地でもある。
トランクデザインの経営理念は「日本のものづくりを未来に繋ぐ」をかかげ、日々、産地の未来を作っていくためにコツコツ活動している。
産地全体のためにできることはなんなのか、知っている職人さんや工房のためにできることはなんなのか、数年後の産地のために何ができるのか。を地震があってからずっと考えていた。
いつも展示会でご一緒する輪島キリモトさん、工房にも遊びに行かせていただいた四十沢木材工芸さんには、目下資金が必要になるからと思い被災地に入る前に義援金を送らせていただいた。でも、これはほんの瞬間的な支援でしかないので未来に仕事として残すことを考えていた。
輪島×越前 2つの産地が手を取り合って生まれた「Re NOTO WARE」
輪島から七尾に戻り、その足で福井県の鯖江に向かった。
輪島は日本でもトップクラスの漆器産地。そして鯖江は業務用漆器をはじめとした越前漆器の産地。
鯖江の職人と共同でつくったLrという越前漆器のブランドをきっかけにトランクデザインと鯖江の職人の間ですでに繋がりがあった。
こんな非常事態のなかで、産地間で手を取り合い支援できることはないかと思い、七尾の蔵で買い取った漆器を鯖江の職人に見てもらった。
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この時代、家庭で漆器を使う人はどれほどいるだろうか。ましてや若い世代は漆器との距離が遠いように思う。この状態のままでは今の時代なかなか食卓で使えるシーンがないので、スプレー塗装が得意な丸廣意匠さんにお願いをしてリペアと塗り直しをしてもらうことにした。
七尾の蔵に眠っているものの中には割れてしまっている器も多かったが、すべて鯖江に送ってもらった。
使われなくなってしまった漆器を、いろんな方の日常に溶け込むように色や模様を決め「Re NOTO WARE」として生まれ変わらせる。「産地の復興」「ものづくりを未来に繋ぐ」の願いを込めてブランドを立ち上げた。
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また、四十沢木材工芸も工場の復旧作業に伴い在庫で置いてあった木地(漆がまだ塗られていない状態のもの)の処分に困っていたため、こちらも買い取らせてもらった。
すぐに取り掛かれるものでも塗り直しに2ヶ月ほどかかるが、丸廣意匠さんに作業をお願いした。
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産地を超えて仕上げをし、いろんな人が使ってくれることで産地にお金が落ち、将来の仕事づくりに役立つ循環づくりの一助になれればと願っています。
売上の一部は、輪島漆器の組合を通し均等につくり手に行き渡るようお願いするつもりです。
お子様から大人まで使いやすいお椀や、お客様をお迎えする時に役立つトレー、仕切りが入って使いやすいわっぱのお弁当箱。ぜひ産地の支援とともに日常生活で使っていただきたい。
昭和当時これらを作った職人も喜ぶと思います。
2024年2月 堀内
Re NOTO WARE
【販売店舗】
垂水ストア&オフィス
兵庫県神戸市垂水区天ノ下町11-10 [Googleマップ]
JR/山陽 垂水駅より徒歩5分
10:00-18:00 水木定休(祝日は営業)
塩屋 カフェ&ストア
兵庫県神戸市垂水区塩屋町3-14-25 2F[Googleマップ]
JR/山陽 塩屋駅より徒歩5分
11:00-18:00 土・日・祝日営業
【オンラインストア】
https://trunkdesign-store.com/collections/re-noto-ware