星ヶ丘高校吹奏楽部の物語(6)
「うーん…...里愛ちゃんに、美紅ちゃんが無視するようなことをしたり、里愛ちゃんが嫌だなと思うことをした覚えってある?」
美紅はそんなことは心当たりがない。
「私は、中学のときも含めてそんなことは心当たりないです。」
うーん.......だったら美紅ちゃんが気づいていないだけなのかなぁ。
「美紅ちゃんが心当たりないなら、里愛ちゃんに話を聞いてみるしかないよね。私、帰りに里愛ちゃんに話を聞いてみるね。」
「早苗先輩、ありがとうございます。迷惑をかけてすみません。」
「ううん。これも先輩の役目だからね。」
早苗先輩、かっこいい。「私も来年からは、あんなかっこいい先輩になりたい」美紅はそう思った。
美紅はそれから、練習時間ギリギリまで精一杯練習した。最後には、忘れかけていたが、来たときから楽しみにしていた先輩たちの合奏見学をした。やっぱり先輩たちはとても上手だった。特に早苗先輩のソロがかっこよかった。美紅は早くあの合奏の中に入りたいと思った。
私(早苗)は、合奏が終わった後急いで片づけをして里愛ちゃんに声をかけた。
「里愛ちゃん、ちょっと話したいことがあるから一緒に来てくれない。」
「あ、はい。わかりました。」
「里愛ちゃん、美紅ちゃんと中学時代とかになにかあった?今日の朝、なんで私の横に美紅ちゃんもいたのに私にだけあいさつをしたの?」
「..........」
「里愛ちゃん、私にだと言いにくい?実子とかのほうがよかったら実子と話してもらうけど。」
「早苗先輩で大丈夫です。......美紅とは、自己紹介のときにも言いましたけど、中学時代同じ吹奏楽部で同じパートでした。私は、美紅と同じ小学校ではなく、県外から転校してきたんです。3年のとき、美紅はパートリーダーでした。みんなから尊敬されている先輩でした。私は、美紅と仲がよかったんです。でも、美紅がほかの仲のいい友達としゃべっているのを聞いてしまったんですけど、私のことが気に入らなかったみたいで「初心者のくせにでしゃばり」とか言ってたんです。私と仲がいいってずっと周りの人たちに言ってたんです。だけど、高校は同じところに行きたくなかったので第1志望は星ヶ丘高校じゃなかったんです。だけど、結局第1志望には落ちてしまって、星ヶ丘高校にきたんです。美紅は陰で悪口を言っているのにみんなの前では「私と、里愛は仲いいよって言い続けるんです。私は、それに耐えきれずにこんなことをしてしまったんです。私たち2人の問題なのに、先輩に迷惑をかけてしまって申し訳ないです......。」
~登場人物紹介~
星ヶ丘高校吹奏楽部
<3年>
田中早苗(トランペット・パートリーダー)
<1年>
佐藤美紅(トランペット・仮)
吉田里愛(トランペット・仮)