星ヶ丘高校吹奏楽部の物語(4)
今日は、土曜日のため、午後からの星ヶ丘高校吹奏楽部の体験練習だ。体験練習も残り、あと今日を含め2日しかない。美紅は、やっぱり憂鬱な気分だった。それは、中学時代に仲のよかった里愛に冷たい態度をずっと取られているからだ。美紅は、その理由を何回も考えるが、理由がわからないままである。部屋でそんなことを考えながらも、今日の体験練習のことを考えている。
「今日も里愛にあんなあんな態度をとられるのかぁ。」と。
第一に美紅は、里愛の気に障ることは中学時代、していないはずなのだ。モヤモヤしたまま何日も過ごさないといけなくなりそうだ。そんなことをダラダラと考えているうちに体験練習に行く時間がきてしまった。
星ヶ丘高校に着いた。校内に入るといつもは軽い足取りなのだが、なんせ、仲のよかった里愛に2日も冷たい態度をとられてしまったためにその足取りは重かった。
やっと音楽室に着いた。そこまで遠い距離では、ないのにもう疲れてしまっていた。音楽室のドアを開けた。
「こんにちはぁ。」
ここにきたら、いつも通り過ごそうと思っていたのにいつものあいさつができなかった。
「こんにちは、美紅ちゃん。いつもはもっと元気なのにどうしたの?」
ゆかり先輩が美紅のいつもと違う様子に気づいてくれたのだが、美紅は、
「私、いつももっと元気でしたっけ。」
と、言ってごまかしてしまった。暗い気持ちのまま、いつも通りトランペットの場所にきてしまっていた。「いつも通り、いつも通り・・・・」と心の中で唱えながら。
「早苗先輩、実子先輩こんにちは。あと、体験練習は今日を入れて2日間しかないですけど、この吹奏楽部に、このトランペットパートに入りたいと思っているので、よろしくお願いします。」
「美紅ちゃん、こんにちは。こちらこそ、トランペットパートに入ってくれたら、うれしいわ。」
早苗先輩が優しくそう答えてくれました。早苗先輩のおかげで、美紅は少し元気を取り戻すことができた。
~登場人物紹介~
星ヶ丘高校吹奏楽部
<3年>
田中早苗(トランペット・パートリーダー)
加藤ゆかり(フルート・パートリーダー)
<1年>
佐藤美紅(トランペット・仮)