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【映画】ホース・ガール【感想】

お薬出しておきましょう。
よくSNSのやりとりで相手を揶揄する場合に見かける言葉ですが、相手が見えない分、その言葉を向けることは少し慎重になったほうが良いのでは。
相手が何をきっかけに精神のボーダーを超えてしまうのか分かりません……そんなことを考えてしまった作品。

主人公のサラはクラフト用品店で働く30代くらいの女性。時々スポーツクラブでズンバのレッスンに参加、またかつては馬主だったが手放してしまった馬に愛着が残るあまり乗馬クラブへ頻繁に顔を出している(クラブのスタッフ等は迷惑気だがサラは気が付かない)
そして夜は大好きなドラマ「煉獄」を見る。
サラは誕生日にDNAキットをプレゼントに貰う。
そしてそこからサラの日常が少しづつ壊れていく。

端的に言ってしまうと、妄想型統合失調症が悪化してゆくドラマ。

サラという女性は、働きやすそうな職場、面倒みが良いルームメイトに囲まれ社会や人と交流があるように見えますが、家族がおらず(母はうつ病で自殺、祖母も精神をおかしくして死去)滅多に会わない父、親しい友達は精神のバランスを崩してリハビリ中、恋人はおらず内気なためよくよく見れば誰とも心が開けず孤立した生活をしているひと。

それでも世界とバランスが取れているうちは言動も行動も平常だったのが、DNA検査キット/狂死した祖母との共通点/夢遊病・時間喪失/奇妙な夢など体験するうちにどんどん妄想が加速してゆく。

彼女が偏愛するドラマ「煉獄」にクローンが登場したことと、自分と祖母との容貌の類似に「私は祖母のクローンなのでは」という妄想がこびりつき離れなくなる。

ここまで来たら、周囲も彼女のおかしさに気がつき、ルームメイトも職場のひとも彼女に対して「然るべき治療と施設へ」の手配はしますが、この手の場合、彼女の身辺に家族又は親しいひとのケアが絶対に必要になるんですよ……。

心配しているのは本当で善良なひと達なのですが、悲しいかな妄想に堕ちてゆくサラを救うにはもっと根本的で親密なケアが必要で、誰もそこまでは踏み込んでいくことが出来ない……のは仕方無い……誰でも自分の生活があるのだから。

ラストのSF的な結末は、多分比喩なのだと思います。
馬を盗み出し、アブダクションを妄想し、あの世界に取り込まれる幻覚は、現実では彼女がもうひとりではどうしようもない状態にあり、だれかの助けが(救いあげてくれる存在)が必要なのだという意味なのだと自分は解釈しました。

彼女のメンタルが崩れる要因に遺伝というのも大きいと思うものの、社会からの孤立だったり福祉の限界だったりが垣間見えて何とも言えない裏寂しい気持ちになりました。

※馬はおそらく換喩(=サラ)のこと。

※マシュー・ギュブレイ・ギュブラーが、ちょっと重要な役割で登場していて「おっ、マシュー!!!」とテンション上がりました 笑

監督:ジェフ・バエナ
脚本:ジェフ・バエナ、アリソン・ブリー

おしまい。

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