[翻訳] 逆張りの美学 by Phil Galfond
プレイヤープールが持つプレイの偏りに対して、自然発生的に生まれた無意識のエクスプロイトというものがあります。そして、これがまたプールが持つ新たな偏りとなり、エクスプロイトをする機会となっています。
今回取り上げるフィル・ギャルフォンドのニュースレターでは、プレイヤープール全体の傾向に対して逆張りのプレイをすることが利益に繋がることがある、そのプロセスを解説しています。
形勢逆転 - プレイヤープールを理解してウィンレートを加速させる
エッジを得るためには、自分のやり方と相手のやり方に違いがなければならない。今日、私は「人と違うことをする」ということについての考えを一歩進めたいと思う。
なぜゲームの中で、積極的に普通ではないことをする必要があるのかを説明しよう。
プレイヤープールと "適応的均衡"
ポーカープレイヤーである限り、いや人間である限り、必ず傾向というものがある。最高のプレイヤーであっても傾向があるし、それ以外のプレイヤーであれば、より強い傾向を持っている。
ご存じの通り、この強い傾向というのがリークであり、そのリークをエクスプロイトすることで、大きな価値を生み出すことができる。
また、プレイヤープールが持っているひとつのリークが、別のリークに繋がっている、ということがよくある。
例を見てみよう。あなたは地元の$2-5ゲームをレギュラー達とプレイしている。
プレイヤープールの全体的な傾向として、リバーでunderbluff (ブラフ過少) だったとする。
この状況下でレギュラーたちはリバーベットに対して頻繁にフォールドするようになるだろう。
この傾向は自然淘汰によって、増幅されていく。
このゲームで生き残り、プレイを続けていく勝ち組は、リバーのベットに正しくoverfold (フォールド過多) で対応できる人たちである。
ひょっとすると勝ち組の誰かが友達に教えたり、無料または有料のトレーニングコンテンツを作ってこの戦略を共有するかもしれない。そうすることで更に人々はリバーでoverfoldすることを学ぶだろう。
プレイヤー達は(コーチ側も生徒側も)リバーでoverfoldしていることを自覚する必要はない。コーチはただ自分がどうプレイしているかを見せて、生徒はそれを真似すればいい。なぜそれで勝てるのか理解していないとしても。
このようにして、underbluffという共通の傾向が、overfoldという新たな強い共通の傾向を生み出す。そして、また多くのプレイヤーが無自覚のまま、それに対応する良いアジャストを行うようになる。
私は、これをポーカーにおける適応的均衡 (Adaptive Equilibrium) と呼んでいる。※この用語はゲーム理論のものではない。
プレイヤープールは意識的あるいは無意識のうちに、悪い傾向に対して、良いアジャストを行い、その2つの傾向が存在する状態で落ち着くのだ。
機会
プレイヤープールが持つあらゆる非GTO的な傾向は、エッジを生み出す機会となる。
この場合、プレイヤーがリバー全般でoverfoldすることは間違ってはいないが、我々はこれをエクスプロイトすることができる。
このプレイヤープールにおいて、我々はリバーで可能な限りブラフするべきなのだ。
そして面白いことに、あなたもまたリバーでoverfoldするという同じエクスプロイト戦略を採用するべきなのだ。なぜなら、他のプレイヤーたちは我々と同じアジャストをしてきていないのだから。
エクスプロイトの有効期限
きっとあなたは「実際、どれくらいの間、彼らに対してoverbluff (ブラフ過多) のエクスプロイトが通用するだろうか」と考えるだろう。永遠に続けられる保証はどこにもない。
underbluffの傾向が人々をoverfoldへ導いたのと同じ理由で、overfoldの傾向が人々をoverbluffへ導く可能性があるからだ。
プレイヤーたちによる意識的なアジャストや無意識的な自然淘汰のプロセスが、今度は別の方向で発生するかも知れない。
ただ、あなたのような抜け目ないプレイヤーにとっては嬉しいことに、この現象はゆっくり進行する。
そして、今後もこのようなことは何度も起こり、その度にあなたはそれに応じて、戦略を反転させることになる。
しかし、中には反転が起こりにくいリークもある。underbluffの傾向は心理的なところに由来している。人はもともと勝ちに行くより、損失を避ける方向に傾きやすいものだ。
もしあなたがローステークスでプレイしているのであれば、多くのプレイヤーは他プレイヤーの傾向に併せて戦略を変えるようなことをしないので、そのプレイヤープールはいつまでも同じようなプレイ続けるだろう。
数学は味方
しかし、別の疑問が浮かんでくるだろう。
「でも、プレイヤープールが傾向に併せて全体的に戦略を変えることはないとしても、私個人に対してアジャストしてくることはあるんじゃないの?」
私には「そうかもね」としか言うことができない。しかし、ここでは以下のことを覚えておいて欲しい。
1) まず、プレイヤーは知覚する必要がある。
あなたがどのようなアジャストをしているか、あなたほど知っているプレイヤーは誰もいない。
自分のプレイがクレイジーに感じたとしても、それはプレイしたすべてのハンドが自分には見えていて、自分自身に注意を払っていて、自分が何をしているのか正確に知っているからだ。
6~9人テーブルで、あなたのことを十分考えられている人は他に誰もいない。
また、他のプレイヤーはそれほど多くのショーダウンを見る機会もない。オンラインであれば、ショーダウンやスタッツは比較的早く蓄積されるし、これらに敏感なプレイヤーも多いだろう(ただオンラインであれば、プレイヤープールははるかに大きくなるとは言え)。
ライブポーカーでは、例え小さいプレイヤープールで、かつ相手が抜け目ないプレイヤーだったとしても、相手はスタッツを見ることはできないし、それほど多くのショーダウンを見ることもない。
相手のアジャストを知覚することは、思っているより難しいことなのである。
2) 次に、どうアジャストするのかを知る必要がある。
多くのプレイヤーは、自分がリバーでoverfoldしてると自覚がないまま、overfoldしている。みんなそれぞれのヒューリスティックに基づいて、コールしたほうが良いハンドやスポットを判断している。
彼らの多くは、それほど戦略について詳しいわけではない。勝っているプレイヤーであっても、アジャスト方法を正しく理解しているとは限らないのだ。
3) 仮に知覚できて、アジャストしようと思ったとしても、大抵の場合、十分にアジャストできない。
例えば、あるプレイヤーがハーフポットのリバーベットに対して、70%の頻度でフォールドしていたとする。そのプレイヤーはあなたがブラファーだからとコールを増やすことに決めて、負けてるかも知れないハンドをいくつかコールに回すだろう。しかし、それでもフォールド頻度は50%に減る程度だ。
これでは、あなたはまだに1を獲得するために0.5のリスクを払っているにすぎない。
これをブレイクイーブンにするためには、相手はフォールド頻度を33%まで落ちるようアジャストする必要があるのだ。
よく、自分のカウンター戦略に相手がアジャストしてくることを心配する人がいるが、実際に相手がどれだけ戦略をシフトさせなければいけないのか理解していない。
仮に6番シートのボブは抜け目ないプレイヤーで、他のプレイヤーに対しては70%の頻度でフォールドするところを、あなたに対しては28%に変更してきたとする。それでもあなたはボブにブラフをすることでわずかにお金を失うだけであり、他のすべてのプレイヤーにブラフをすることで稼ぎ続けるだろう。
結論:根拠のない恐怖や不安に惑わされて、強力なエクスプロイトを実行することををためらってはいけない。
原因か、結果か
プレイヤープールの中で、このように2つの傾向が関連していることがなぜ重要なのか。それは、より大きなエッジを得るためにはどこを狙えばよいのかを示しているからだ。
もしスタッツを集計していなければ、人々がリバーでoverfoldしていることを知覚するのは難しい。
そのため、恐らくあなたが先に知覚することは、人々がunderbluff (ブラフ過少) であることだ。ショーダウンをいくつか見る中で、それほど多くのブラフがないことに気付き始めるだろう。
あなたはまず最初に明白なアジャストから実行するべきだ。つまり、リバーでフォールドすること。
そして、次にあなたはこのような疑問を持つべきだ。
「もしプレイヤーたちが十分ブラフをしていないとすれば、それは別の傾向を引き起こす原因になっているだろうか。あるいはこれは別の傾向から影響を受けた結果だろうか」
Underbluff傾向を原因と考えた場合:
人々がunderbluffだから、みんなoverfoldしているんだ。
(あなたは今プレイヤープールの反応について、新たな傾向を発見した)
Underbluff傾向を結果と考えた場合:
人々がunderbluffなのは、みんながovercallしているからだ。
(あなたはプレイヤープールのリークの原因について、新たな傾向を発見した)
強力な傾向に気付いたときは、それを補完するリークを探すように意識しよう。そうすると、自分は他プレイヤーとは逆行することになる。
ブラフ過少なプレイヤープールの中で、唯一ブラフをする人になろう。
フォールド過少なプレイヤープールの中で、唯一フォールドする人になろう。
結論
人と違うことをしよう。でも人と違うこと自体が目的ではない。
抜け目なく、注意深く。新たな手がかりを見つけて、次に進もう。
Source: Turning the Table (Hey, it's Phil)
翻訳は以上です。読んで頂いてありがとうございました!
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