月が綺麗な夜だから🌛
先日は大変お騒がせしました、一週間経ってようやく落ち着きを取り戻したぼにっくです、こんばんは🌛🌛
ことの顛末は長くなりそうだったのでnoteに認めることにします。
G県O市のショッピングモールにて、事件は起きる。
緊急事態宣言によりカラオケが営業自粛、もれなく練習場所難民となったぼにっくは仕事終わりに河川敷で練習に励むも風による砂埃→スライドへの影響が心配&日の入りが早くなってきたため満足に練習できず...
自宅から小一時間ほどかかってしまうが、背に腹は変えられないということで事件現場となるショッピングモール内楽器店のスタジオを借りることに。
このスタジオはネット予約可能で、個人で借りる場合は当日の0時〜受付開始というルール。
この日も眠い目を擦りながら19-21時の枠を勝ち取る。
仕事を早々に切り上げ、相棒を車に積んで意気揚々と自宅を出発。帰宅ラッシュのため幹線道路は予想どおり混んでいて、早めに出て大正解と思いながら渋滞も気長に運転。BGMは「7人のトロンボーン奏者によるソロ曲集3」コタローさんのロパルツをリピートしながら口ずさむ。
18時45分ごろ、スタジオ最寄りの駐車場(2F)に到着。駐車場はそこそこ混んでいる。DQNカーが車椅子マークの駐車スペースを陣取っていて、髪色が派手なお兄ちゃんがだるそうに煙草をふかしている。
何もかもがいつもどおりだ。
10分前からでないと受け付けして貰えないのを心得ていたので、車内でTwitterのTLを確認しながら「喉がイガイガして息苦しいな...」と感じる。そう、その日は在宅勤務なのを良いことにお昼とおやつに🍇を食べたことを思い出す。「もしや、、、、アレルギー。。。。」花粉症なのである程度覚悟はしていたものの、まさか大好きな🍇でなるなんて...
ショックが隠し切れないまま、楽器を背負ってショッピングモール内へ。
新人ぽい店員さんが受け付けしてくれて、「前回もこの人だったかな、」と思いながら会計を済ませる。
私の前枠に誰か入っていたようで、時間になるまで店内で時間を潰す。ヘットマンのボールジョイントとスピンドルオイル置いてくれたらいいのに。
時間を数分過ぎてから(スタジオあるあるですね)ようやく案内されて、スタジオ内へ。
この日はアレルギー反応が出ていたこともあってあまり調子が良くない印象、通常どおりのメニューで音出し、その後は基礎練としてコプラッシュとロッシュを1曲ずつ。
後半はラフマンのヴォカリーズ、リムスキーをさらってギブアップ。
楽器にスワブを通して、ロータリーの音が気になったのでオイルをさす。最近スライドの動きが気になるのでメンテナンス出そうかな。それとも洗ってスライドオイルからクリームに変えてみようかな、などと試案する。
終了時間5分前に身支度を整え、スタジオの重い扉を押す。
ふたつ目の扉を開けた瞬間、違和感にハッとする。
静かだ...そして薄暗い...
何が起きたか理解できずにスタジオの出口で硬直していると、どこからともなく店員さんがやってきて「お疲れさまでした!」の一声にハッ!!と我にかえる。
「あっ、えーっと」
「お客様!!お車はどちらに停めましたか??」
え??車?????
この段階で、私の中の何かが警告を出している。これはもしかして、何か良くないことが起こり始めてるのではないか?と。
「すぐそこの2Fの...」
「あーーーーっ、、」
食い気味で残念がられる。
その反応に、あれ、、また私何かやらかしちゃったかな??と一瞬思ったものの
いやいや、この理不尽な状況は断じて私が招いたものではないはず、、、、、と首を傾げてみる。
でも店員さんのこの反応をみて、私はきっともう駐車場には戻れないんだ、ということを悟る。暗がりの店内、止まったBGM、降りている巨大シャッター。もう私は、愛車のところには戻れないのだ。
明日の仕事どうしよう...
という、社畜の鑑過ぎる思考にまで及びそうになっていたとき、店員さんが少し迷惑そうに
「実は閉店が20時で、もうそちらの駐車場には行けないんです...」
いやいや、待ってよ。
スタジオに入るとき何も言ってなかったし、予約は21時まで取れたし、その分の料金も前払いしましたよね...
??????????
この時点で私は自ら思考を停止する。
「ただ、ちょっと店内を通れば行けると思うので....」
????????????????
行けると思うってなんだ...
ここで店長さん登場。
さらに、おそらくピアノと思われるレッスン生さんと保護者の方、先生も奥から登場。良かった、ひとりではないようだ。と思ったのも束の間、店長さんの口からも「もしかして、駐車場はそこ(2F)ですか?」
この段階で、落ち着き過ぎているレッスン生御一行様。明らかに私と違うぞ...そうか、この人たちは閉店になることを知っていたんだ...
そこから何やら店長さんが内線電話で誰かとやり取り。「お客様が駐車場に出られなくなってしまって...」
出られなくしたのは君たちではないか...
電話を切ると店長さんがいきなり道案内を始める。
いや、、ちょっと待って、、、、、、、
おそらく、全面的に私の表情に出ていた。
「あ、イオ◯の中はお詳しいですか?」
「いや、、全然」(詳しいわけあるかー!)
「すみません、、お客様は悪くないんですけど、僕たちが営業時間を間違えて設定してしまっていて...」
突っ込みどころ満載の言い訳タイム。
なんでも良いから一刻も早くこの閉店後の気味悪い巨大商業施設から抜け出したい。
「...というわけで、こちらから行けますので、ご案内します!」
なんだか歩くことになりそうだなあ...と、渋々店長さんのあとをついていく。
「このエレベーターが動くので...」
ボタンを押しても反応がない。文字どおりうんともすんとも言わない。
その間も店長さんは道案内の説明を繰り返す。
「エレベーターを降りたら、こちら(手で方向を指す)に向かって歩きます、そこでまたエレベーターに乗って2階に降ります、そうすると駐車場に着きます...」
私は気付くべきだったんだ。この繰り返される説明が意味することを。
ようやくエレベーターが動いていないことに気付いた店長さんが、何やら無線でもう一度誰かと連絡を取っている。
「ちょっとここで待っていてください、1階からなら行けるかも知れないので!」
そう言い残して颯爽と止まっているエスカレーターを降りて行ってしまった。
私はひとり動かないエレベーターの前に残され、1階から呼んだときのみ動くよう設定されているエレベーターについて思いを馳せる。一体全体、そんなプログラムに何の意味があるというのだろう。
程なくして店長さんがエスカレーターを登って2階に戻ってくる。
「1階からなら大丈夫みたいです!」
なぜ君はエレベーターに乗って上がって来なかったのか、小一時間ほど問い詰めたかったが、自粛した。
「止まってるエスカレーター降りたことあります?」
「ないですね!」
「ですよね〜」「足元気をつけくださいね〜」
止まっているエスカレーターは、ただの階段と同じなのに何度も躓きそうになり、乗り物酔いと同じように気分が悪くなった。
楽器を背負ったまま転げ落ちるわけにはいかない。細心の注意を払う。
すると後ろから声がして、振り返るとレッスン生御一行様がお喋りしながらエスカレーターを降りてくる。余裕だ...
そしてそのまま、1階の出口から颯爽と出て行ってしまった。この地上駐車場は決してスタジオから近くないため、やはり事前に分かっていたのだ。
私だけが閉店後の不気味なショッピングモールに、閉じ込められている。
やっとエレベーターの前に辿り着き、店長さんがボタンを押すと、階を示すランプが灯る。エレベーターが動き出した。少しだけ安堵する。
エレベーターのドアが開くと、店長さんが「どうぞ」という仕草をしたので私は深く考えずに先に乗り込む。
すると店長さんが、エレベーターの外から3Fのボタンを押す。
「3Fに着いたら、こっち(指をさす)に歩いてくださいね、そこのエレベーターで2階に降りれば大丈夫です!迷ったら電話してください!(今日一番のマスク越し営業スマイル)」
言い終わるか終わらないかのうちに、ドアを閉めるボタンを押す。ドアがサーっと閉まる。
「やられた...」
エレベーターが上昇し、3Fに到着。扉が開いた瞬間、絶望する。真っ暗だ...屋上駐車場に着くなんて一言も聞いてない...
最近は車に撥ねられると異世界転生するようだけど、エレベーターのほうがよっぽど説得力がある気がした。あ、でもそれだと転生じゃなくてただの移動か。
エレベーターを降り外に出てみるも、先ほど店長さんが「こっちに」歩くと指をさしていた方向がサッパリ分からず途方に暮れる。
ここでじっとしていても埒が明かないので、取り急ぎ車がチラホラ見える明るい方向へ歩いてみることにする。
その日は奇しくも中秋の名月で、月明かりに照らされた屋上駐車場はまるで眠っている竜の背中を歩いているみたいだった。
絶対に起こしてはいけない...そんなことを思いながら、ゆっくりと足を踏み出す。
車で通るとあまり感じないけれども、駐車場は意外と凹凸があり、益々隆起した竜の背骨を連想させた。
しばらく歩くとひとつめの出入り口に到着。灯りが灯っているものの、「出口専用」の表示。
背負えるタイプの楽器ケースなので、楽譜や譜面台諸々はトートバッグで持ち歩いているものの、いつも肩からずり落ちて安定しない。重過ぎるんだ。何が入っているのか、自分でも把握していない。会社用の鞄もプライベートの鞄もそう。何が入っているのか、自分でも分からない。きっとある日突然四次元に繋がっていても、気が付かないと思う。
肩に掛けるのを諦め、左手でだらしなくトートバッグを持ち、右手にはスタンドを持ち、背中にはトロンボーンを背負い、ドン・キホーテのような風貌でさらに歩みを進める。
程なくして、一番奥の出入り口に到着。
駐車している車もあり、先ほどまでの絶望感から一転、安堵のため息が出る。
エレベーターに乗ろうと自動ドアの前に立った瞬間、背筋が凍る。
現在地の●が、「食品売り場」を指している。
食品売り場...楽器店と正反対ではないか!!!!!!!
がっくりと肩を落とし、これまで来た方向をぼんやりと見つめる...
出てきた出口と思われるところから、さらに奥に灯りが見える。
方向音痴にはいささか自信があったが、これほどまでとは。。
またトボトボと、今度は暗がりの方へ向かって歩き出す。
エレベーターを降りたら異世界で、綺麗な月明かりに照らされて、私は独り、トロンボーンを背負い竜の背中を歩いている。いつしか、「こんな日があっても悪くないかも知れない」と思い始めていた。
出てきた出入り口をとおり過ぎ、しばらく歩いていると、奥の灯りから人影が見えた。
妄想が佳境に入り、ついに竜を起こしてしまった私はトロンボーンとスタンドで立ち向かうところだったのだが、すぐに振り切り人影に意識を集中する。
あの制服は...間違いない!!!!警備員さんだっ!!!!!!
何やら警備員さんもこちらに気付いた様子が分かった。次の瞬間...
「助けてください〜」
私の口からとんでもない言葉が飛び出していた。なんだそれ。セカチューか????(ドラマも映画も一度も観たことがない。)
「あ、駐車場に戻れなくなってしまったお客様ですね????」
(ああああああ正確には全然違うけど)
「そうです!!!!!」
「良かったー、捜していたんですよ、広いから迷っちゃいますよね」
「ええ。反対方向に行ってしまってました💦」
「こちらです、どうぞ」
どうやら戸締りできないので私を捜しに来てくれたらしい。頭がまだ異世界に繋がっているので、私の目にはこの警備員さんが神様に見えている。
警備員さんについていくと、無線で何やら一言二言会話があり、エレベーターが動き出した。また独りで置き去り(?)にされるのかと思いきや、今度は警備員さんが先に乗ってくれたので、ほっと肩を撫で下ろす。
ふたりで2Fに降りると、防火シャッターの向かい側に到着して、見覚えのあるMINIが見えた。広い駐車場にポツンと1台だけ...とてもとても寂しそうだった。
「あのお車ですか?」
「はいっ!!ありがとうございました、すみませんでした!!」(謝る必要はなかったのだが...日本人だなあとしみじみ思う)
警備員さんに深々とお辞儀をして、自動ドアを開ける。
籠って蒸し暑い空気に、秋の匂いが混じっている。
ああ、やっと帰れる...
MINIに楽器を積み込み、運転席に座ってステアリングを握る。
とんでもない一日だったな、と思いながら
帰り道に高い空からどこまでも同じ月が追いかけてくるのをずっと意識している。
私が閉店後のショッピングモールを必要以上に怖がっていたのは、そういう夢をよく見るからだ。
ショッピングモール、アウトレット、駅、
どこまで行っても、どこにも辿り着かない。薄暗くて、静かで、まるで今日のショッピングモールとそっくりで、私はひどく混乱したのだ。
自宅アパートに近づくほど、段々と現実感が増していき、家に着くころには「やはりあのチャラい店長許すまじ」と思えるほどになっていた。
そんなわけで、ぼにっくさんの世にも奇妙な物語は無事に帰宅することで幕を閉じる。
🌛満月は人を狂わせる。Lunaticの語源🌛
ご心配いただいた皆さま、本当にありがとうございました。大変お騒がせいたしました、、、、
乱文乱筆となってしまいましたが、こんな経験はなかなかないと思ったので、ここに認めておきます。
気が付くと季節が移ろいで、何気なく過ぎてしまう毎日ですが、意外と非日常は身近なところにあるのかも知れませんね。
最後までお付き合いいただき、本当に本当にありがとうございました。
とろんぼにっく〄