青いプレート石

陽気な旅人

 西の魔女からハーブの本やら何やら送られて来たときに、そっと紛れ込んできた青いプレート石。色も形も見慣れない、異質な風貌をしているが、魔女の海外の友人から送られてきた、旅好きな石だ。西からの旅も本人ならぬ、本石が希望してきたもので、旅好きというのも頷ける。
 届いた当初は、私も慣れずに距離があった。が、サランラップに包まれて、我が家を望んで来てくれたのだから、せめて名前を覚えようと頑張っていた。けれども、見かけとは裏腹に掴みどころのない名前は、私にとっては難関だった。

 我が家は娘が3人おり、カホンという打楽器があったり、アコースティックギターをかき鳴らしたりと、何ともまあ賑やかな家なのだが、魔女との穏やかな癒やしの暮らしから、本当にここへ来て良かったのだろうかと、申し訳なく思うこともあった。中でも、自閉のある末娘の癇癪や突然の叫び声は、堪えるものがある。
 
 ある日のこと。寝室の出窓に置いている石たちと一緒に置いて、いつものように、リビングに他の石を連れていく。すると、どうしてもこのプレート石が頭の中にチラチラと主張してくる。
 あれ?もしかして、こっちに来たい?試しに末娘に迎えに行ってもらうと、不思議なことに気持ちが落ち着き、頭の中に出てこなくなった。そのようにして、私に働きかけてくるさまが、何とも愛おしく感じ、これからは一緒に連れてこようと決めた。
 その翌朝、起きがけに「クリソコラ」と名前がスッと浮かんだ。そうそう、この子は「青いプレート石」ではなくて、「クリソコラさん」だ。一気に親近感が湧き、仲良くなれた気がして嬉しかった。
 それからは、他の石が大人しくしているカゴの中から、ひょっこりとこちらを覗いていたり、ムードメーカーのように楽しい気分を届けてくれる、陽気な性質を発揮してくれていた。
 
 私はクリソコラさんを、クリスタルの本で調べて女性性を活性化させると書いてあったので、女性のような感覚で接していた。けれど、またもや車に乗り込む瞬間に、クリソコラ「くん」だ!と頭に電撃が走った。バックパッカーのような青年の印象だ。石なので特に性別はないはずだが、これからは「クリソコラくん」と呼ぼうと決めた。
 今日、こうしてクリソコラくんのことを書いているのは、彼が朝から話しかけてきて、ニコニコと僕の話を書いてくれと伝えてきたからだ。
 
 クリソコラくん、これで良いですか?
 彼と触れていると、不思議と気持ちが上がってくる。憎めない、陽気な性質なのだ。なるほど、女性性の活性化というのは、どうやら本当のことらしい。

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