好きな作品を名言と共に解説してみる ~①宇宙海賊キャプテンハーロック・その1~
子供の頃、漫画が大好きで、学校から帰ると、小遣いをつぎ込んで買ったものから、父が少年時代に買って、物置にしまい込まれていたものまで、結構たくさん読んでいた記憶がある。
もう少し年齢が上がると、興味の対象はライトノベルに移るが、その期間は余り長くは無くて、興味は時代小説、および、これは意外に思われるかもしれないが、児童小説にもかなりのめり込んで、今に至っている。
せっかくnoteを書き始めたのだから、今でも時折読み返している作品について書いてみたいと考えた。
と言っても、僕はジャンルで固定するよりも、気に入った作者のものを何度も繰り返して読むタイプなので、かなり種類はバラバラになっているので、一貫したテーマで書くのは難しい。
とにかく、「好きな作品」という括りで取り留めもなく書いていくので、その中でも興味を少しでも惹かれるものがあれば幸いだ。
なお今回に限らず、このコーナーは趣味全開・ネタバレ全開で書き散らしていくので、合わないな、と思ったらスルーして、次回を待って頂くのがいいかもしれない。
第1回目は松本零士・作「宇宙海賊キャプテンハーロック」について書きたいと思う。
いきなり古い作品が来たな、と思われて当然だが、自分も正直、子供の頃はそれ程熱中していた訳ではない。
本格的にハマったのは、社会人になってしばらくした、20代の半ばにもう一度読み返した時で、以来何度も読み返し、ついに引っ越す時に父から譲り受けて持ってきてしまう程になった。
有名な作品なので、とっくに内容をご存じの方も多いと思うが、何せ作品の年代が年代なので、軽くあらすじを解説したい。
”人類が宇宙に進出して数百年が経過した未来。
かつて栄光を求め外宇宙にこぞって出ていった男たちの記憶は過去となり、地球に住む人々は平和と快楽に堕落していた。
外宇宙からは、植物を起源とする宇宙人の大帝国「マゾーン」が各地を征服しながら近づいていたが、外敵への備えも皆無な地球は、まさに滅びを待つばかり。
ただ一つの例外が、宇宙の海賊、キャプテン・ハーロックと、その40人の仲間たち。
主人公の少年・台羽正は、マゾーンに父を殺され、間一髪でハーロックに助けられた事をきっかけに、彼の船・海賊戦艦アルカディア号に乗り込み、宇宙の旅に出る。”
大まかなあらすじは、こんなところである。
正直自分は、漫画に限らず、「平和ボケした人類を皮肉る」という展開が好きではない。
が、この漫画は、怠惰な地球人類については、あくまで舞台設定以上のものではなく、ほとんどがアルカディア号とその仲間たちの描写に充てられているので、自分と同様、そういうのが苦手な方も、たぶん安心できると思う。
前置きが長くなったが、ぜひ知ってもらいたい名言を解説していきたいと思う。
1.台羽少年、海賊戦艦に乗る
”君はこのアルカディア号に乗り、君の信ずるもののために戦え!
誰も君に強制はしない!君の胸の中にあるもののためにだけ戦え!
もし君の考えと俺の考えが違う時、もし違っているとわかった時は
その時はだまってたもとを分かとう だまって艦を降りろ
俺は何も言わない 他の者も、誰も文句は言わない
しかし 君の信じるものと、われわれの…この俺の信じるものが同じだった時は この艦で共に戦い、共に暮らし、いつの日にか満足して、共に死のうではないか
永遠の眠りにつく日まで、力のかぎりこの艦で戦おうではないか!”
アルカディア号に乗り込む決意を固めた、台羽少年に呼びかけるハーロックの台詞。
正確には、降りる時はハーロックがはっきり違うと認めた時だけ、脱走は死刑という厳しい掟もあるのだが、それでも、「この船に乗った以上、何が起きても下りない覚悟を決めろ」みたいな事を言わず、同時に、共に戦う事になる仲間を迎え入れる熱い台詞も忘れない。
本当の意味での自由の男、という感じがする。
2.ハーロック、台羽少年の部署について語る
”まだおまえの適正がよくわからん
お前にもこの艦というものがよくわからない
ブラブラしているうちに、お互いよくわかってくる
長所も欠点も、よくわかってくる
それから正式に部署を決めても遅くはない”
晴れて乗組員に加わった台羽に、「とりあえず僕はどうすれば」と聞かれたハーロックが返した言葉。
どんな事でも、実際にやってみるまでは、自分に向いているかどうかがわからないのだから、やってみてその結果で何をするか決める。
本来これが一番正しい方法だと思うのだが、現実の組織と言うのは、入った直後、下手をすると入る前から、「どこを志望するか決めろ!決めたら滅多に部署移動などもっての外!」というのを求められるのがキツい。
3.ハーロック、海賊戦艦の理念を語る
”ここは確かに海賊戦艦の中だが、戦艦であると同時にわれわれの家だ
家の中にいる時は、あくびもするし、酔っぱらってワメくこともある、それが当然だろう?
家の中に居てまで、かしこまっていては何も出来まい?
本艦の鉄則は、やるべき時にだけ、やるべき事をやればよいのだ
後は寝ていようと起きていようと、私生活は自由だ
宇宙は広い 航海は長い それにはこのやり方が正しいと俺は思う”
勇んで乗り込んだものの、余りにもグータラな艦内の様子に幻滅しかける台羽だが、いざマゾーンとの戦闘に入った途端、全員が別人のようにテキパキ動き、あっという間に敵を撃退する様に、改めて感嘆する。
それを正直に伝える台羽に、ハーロックが語るアルカディア号の在り方。
台詞そのものも深いが、当時は珍しかった「戦闘以外ではものすごく緩い戦艦の生活」の先駆けとなったシーンでもあると思う。
今の漫画やアニメでは普通になったが、当時のフィクション作品の流れで、この言葉が出せる辺りが、松本零士のすごいところだ。
4.寝られる男こそが真の勇者
”寝られれば大丈夫だ
よく寝る男は大物になる
寸暇を惜しんで寝る男こそ真の勇者だ”
とある出来事をきっかけにショックを受けて寝込んでしまった台羽。
そんな彼の様子を聞いたハーロックの言葉である。
これはもう、大人になってからその重要さがわかる偉大な名言だと思う。
睡眠が生物にとって重要なのは言うまでもないが、男に限らず、「よく寝られる」というのは、「明日の事を考えてくよくよ悩まない」という事でもある。
どんな人でも、睡眠不足でコンディションが落ちていては、解決できるものもできない。
全ては食べて寝る事から始まるのだ。
ちなみに自分はと言えば、毎夜不安から夜更かしを繰り返し、未だに勇者とは程遠い日々を送っている(汗
5.恐ろしくも心安らぐ場所
”星の無い外洋がどんな所かわかるか?
そこがどんなに淋しい所かわかるか
俺は昔…そうだ、もうずーっと大昔だったような気がするが
親友と一緒に あの星の少ない未開の海を渡りあるいた
そこは無限に広くて、生きがいのある所だ。
一度そこへ足を踏みいれた者は、必ずまた戻ってくるという
戻って来て、死ぬまでさ迷い歩くという”
迫るマゾーンに対し、なるべく地球から遠い場所で出会う方がいいと、太陽系を抜けて外宇宙に向かうアルカディア号。
力こそが全ての無法の海、普通なら恐れて近寄れないその場所を、ハーロックはむしろ懐かしげにそれを話す。
自分はとてもこんな無法地帯で生きられる自信はないし、行きたいとも思わないが、「周りには理解されないけど心地いい場所には自然と戻ってくる」ということ、そこに身を任せる感覚を「死ぬまでさ迷い歩く」と表現するのが、何だか妙にしっくりきたので、名言に挙げさせてもらった。
今回はここまで書いたが、ちょうどこれで半分ほどになる。
残りも全て書くと、流石に長くなりすぎるので、残りは次回に回したいと思う。
物語が中盤に差し掛かると、ハーロックだけでなく、仲間たちの言葉もいいものが出てくるので、それも併せて取り上げていきたい。