聖なる寿司殺し〜ザ・キリング・オブ・セイクリッド・スシ〜第2殺
「ここは寿司屋だ。お宅の国の路地裏じゃねえ。お引き取り願おうか。」
「問答無用!」
男は恐ろしく素早い身のこなしで俺の懐まで一気に間合いを詰めてきた。俺は咄嗟にカウンター内のまな板に手を伸ばす。男は右手の出刃包丁を逆手に持ち替え俺の心臓めがけて刺突したが、すんでの所で俺はまな板をかざして防御した。出刃包丁がまな板に深々と突き刺さる!
「なんてパワーしてやがる・・・」
額から一条の汗が流れ目に入ったが、意に介する間も無い。間髪入れず、男は左手の出刃包丁を俺の首に突き刺さんとした。仰け反ってかわそうと試みるも、到底避け切れそうもない。ここまでか!?と、その時、男の顔面めがけてカウンター奥からウニが飛来した!大きく育った上物のウニが男の顔面に突き刺さる!
「俺の店で勝手なことするんじゃねえ!とっとと出て行きやがれ!」
店主がカウンター奥から啖呵を切った。その両手にはウニと冷凍カツオが握られている。その背後より、店主の弟子が大量のウニを正確なコントロールで男の顔面に投げつけ始めた。
「アウチ!」
弟子の絶え間ないウニ投擲攻撃を受けて男がよろめいた隙に、俺はカウンターの内側へ転がり込み、店主から冷凍カツオを受け取った。そして店主に目配せをすると、店主は黙ってうなずいた。
「ファック・オフ!」
男が凄まじい声量で一喝すると、弟子は腰を抜かして失禁、店主は三歩後ずさった。男は顔に刺さったウニの棘を忌々しげに抜いた。
「ミスター・ゲン!隠れても無駄です!出てきなさい!」
男がカウンター内にずかずかと入り込む。
「今だ!」
俺が叫ぶと、店主が手元の高速リフト起動ボタンを押した!高速リフトより射出された勢いに乗せ、俺は満身の力を込めて冷凍カツオで男の顎を殴りつけた!!男の左の眼球が飛び出した!!男はそのまま仰向けに倒れ、ピクピクと痙攣している。俺はまたも驚愕で目を見開いた。男の顔面の左半分の皮膚が破れ、中から骨ではなく金属骨格が露出しているのだ!
「テメェ、一体何者だ・・・」
俺は男の胸ぐらを掴んでこちらに引き寄せた。
「私はスシ・ガーディアンを殺すためにアメリカ政府から改造を受けた強化人間だ。スシ・ロボットのテクノロジーを応用し、あらゆる寿司職人のフォームに対応出来るようになっている・・・」
「それがこのザマか。悪いが、洗いざらい吐いてもらおう」
「もう遅い。既に対スシ・ガーディアン用暗殺部隊"NINJA"がこちらに向かっている。もう一つ・・・」
そこまで言うと男は笑い始めた。
「もう一つ、何だ?」
「ミスター・ゲン、あなた首には巨額の賞金がかかっている・・・先ほど、私の国の大統領が世界中に発信しました。遠からず、あなたのもとへ世界中から刺客が送り込まれることでしょう。アメリカからの刺客も私だけではない。私はあくまでも斥候・・・序列は下位だ。あなたはどこまで生き延びられるでしょうか?」
「知るかよ。だがその前にお前は死ぬ。」
俺は男の首を180度捻り、息の根を止めた。その瞬間、窓ガラスを突き破り、店内に黒い物体が転がり込んできた。手榴弾だ!
「伏せろ!」
俺は店主と弟子をカウンター奥に押し込み、二人の上に覆い被さった。背後で手榴弾が炸裂した。男の死体は金属骨格を残し、弾け飛んだ!爆煙の中に四つの人影が現れた。今時時代劇でも見ないような胡散臭い黒い忍者装束に身を包んだ男たちだ。
「ミスター・ゲン、あなたの命は我々NINJAが貰い受けるでGOZARU」
「何がGOZARUだ舐めやがって。かかって来やがれ!」
NINJAの四人はアサルトライフルを構えた。仮にも忍者が銃なんか使うな。俺は厚焼き玉子用のフライパンと出刃包丁を手に取り、四人に向かって歩みを進めた。
【続く】