聖なる寿司殺し〜ザ・キリング・オブ・セイクリッド・スシ〜第3殺
「なああんたら、寿司屋での最大のマナー違反は何か知ってるか?」
俺はフライパンと包丁を構えた。先代のスシ・ガーディアンである俺の師匠、ギンジより伝授された奥義、「本手の構え」だ。
「それは寿司を頼まねえことだ。更にはあんたらはこの店を荒らした。今からマナーを守らなかった奴の末路を教えてやる」
「笑止!」
俺は右端の男へ包丁を投擲!が、後ろへ身体を反りこれを回避!包丁が壁に突き刺さる!残りの三人から容赦の無い銃撃が加えられるがフライパンで全て弾き返す。跳弾が先ほど包丁を回避した男の腹部に直撃した。しかし男は倒れない!
「てめぇらもさっきの奴と同じ強化人間か!」
「違う!これを見ろ!」
男は面頬を外して床に血を吐き捨てた。その顔を見て俺は言葉を失った。
「てめぇまさか・・・」
「「「そのまさかだ」」」
残りの三人も面頬を外した。四人とも同じ顔、それも実によく知った顔だった。
「「「「我々はお前の師匠、ギンジのクローンだ」」」」
「左様」
入り口より老人の声がした。NINJAの四人がサッと道を開ける。黒い和服姿の老人の姿が俺の目に飛び込んだ。
「あ、貴方は・・・!どうして・・・!」
「死んだと思っていたか?我が弟子よ」
他でもない我が師匠、ギンジだ。ギンジは杖をつきながら、ゆっくりと店の中へ入ってきた。
「かつて、儂もお前と同じ、日本の古き良き伝統的な寿司文化を守るということに使命感を燃やしておった。お前はよく知っているだろう。だが、現実はどうだ。機械で作った無機質な寿司が世の中に出回り、教養もエチケットも無いような客が品格のかけらも無い回転寿司に群がっておる。日本の伝統的な寿司はもう瀕死じゃ・・・」
「だからこそ守ろうとしてるんですよ!」
「いや、もう終わらせてやるべきなんじゃよ。今や世界中で寿司と言えるのかすら怪しい代物が跳梁跋扈しておる・・・一度今の寿司文化そのものを終わらせ、そこから理想的な寿司文化を新たに始めればよい。ゲンよ、儂の決意は固い。儂が寿司を殺す。」
俺はギンジの言っていることが俄には信じ難かった。あれほど日本の寿司文化の再興に熱意を燃やしていた男がこのような妄言を垂れ流すとは。
「さっきの男も言っていただろう、世界中のスシ・ガーディアンがお前の首を求めてやって来ると。この状況に持って行くには寿司文化乗っ取りを目論むアメリカと組むのが最も手っ取り早かった。儂は自らの遺伝子を提供し、無敵のクローン軍団を作り上げた。それがこの四人、NINJAじゃ」
NINJAの四人はその言葉を聞いて自らの力を誇示するように正拳突きを始めた。
「「「「ハァッ!ハァッ!ハァッ!ハァッ!」」」」
俺は顔を覆った。
「元々お前をここで始末しようかと思っていたが、止めじゃ。それより、これから襲い来る世界中のスシ・ガーディアンをお前に倒してもらう方が効率的じゃ。お前は儂の弟子だ、その辺の連中には負けんじゃろう。全てが終わった後、手ずからお前を殺すとしよう。さあ、世界寿司大戦の始まりじゃ」
ギンジは高らかに笑うと踵を返して出口に向かった。
「おいお前たち、帰るぞ」
「「「「ハイ!」」」」
俺は何も言わず刺身包丁をギンジに向かって投擲した。振り返りもせず、ギンジは首を右に逸らして回避した!
「仕方の無い奴だ。折角見逃してやったのに」
「師匠、すまないが貴方は俺の、いや寿司の敵だ。ここで倒す」
ギンジはふうと溜息をつくと杖の取っ手部分を引き抜いた。露になったのはギンジの全盛期に愛器としていたマグロ包丁だった!仕込み杖だ!かつてはこのマグロ包丁でギンジは幾人ものマナー違反者を解体してきたのだ。
「全力で来なさい。最後の手合わせだ」
「師匠とはもう呼ばん、ギンジ、行くぞ!」
【続く】
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