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R-18にされた人生

 初めに言っておこう。僕はドラマの登場人物だ。なぜそれに気付いたか?下手な脚本の映画とかドラマを観ていると「登場人物が脚本に動かされている」感覚を覚えることがあると思うが、登場人物側も自分が脚本の都合で動かされていることを自覚することが稀にある。僕がそれだ。

僕が出ているドラマは全年齢対象のコメディ。僕は主人公一家の18歳の長男だ。ドラマのお上品な内容のせいで生涯童貞を捨てられそうにないのが目下の悩みである。登場人物は脚本家の想定していない行動は出来ないのだ。ただ、ドラマが毒にも薬にもならないので平穏な生活を送れてはいる。ドラマが打ち切られない限り、このマンネリズムを享受しながら生きていくだろう。

そう思っていた。

 異変はある朝起こった。僕がいつものように朝食のために居間に降りると、両親が神妙な顔でテレビを見ていた。

「どうしたの、そんなに辛気臭い顔で」
「しっ、静かに!」

 父が口の前に人差し指を当てて僕を制した。僕も皆が見つめているテレビ画面に目を遣った。

「繰り返します。各地で暴徒と化した集団が人々を襲っているとの知らせが入りました。暴徒は一様に、人に噛み付くという行動を見せているとのことです。テレビの前の皆様は、窓には近付かず、家の中で事態の収束をお待ちください」

 僕はこの上なく嫌な予感がして窓の外を覗いた。道行く人々が一様に何かから走って逃げている。いや、よく見ると凄まじい勢いで走る集団が人々に襲い掛かっているのだ。

 僕は確信した。前からこのドラマの脚本の質はあまり良くないと思っていたが、視聴率がいよいよ悪くなったのか、露骨なテコ入れが入ったのだ。ほのぼのホームコメディ路線ではダメだという判断が下り、何をトチ狂ったかゾンビものに路線変更したのだ。

 その時、窓ガラスに襲われた人間の血と肉片がベッタリと貼り付いた。僕は絶望に天を仰いだ。

___ああ、これからR-18の人生が始まる…

【続く】

#逆噴射小説大賞2020 #小説 #逆噴射プラクティス

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