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多くの人にエールを送る、FOAMSTARSのキャラクターストーリー(キャラクターデザイン)に震えた話。
●はじめに
この文章は元々私が2024/3/20 ふせったーに投稿した物に加筆修成を加えた物です。
※全ストーリーモードのネタバレを含みます。
※あくまで個人の感想と想像ですので、公式の見解とは全然違う可能性の方が大きいです
以上の事をご了承の上でお読みいただければと思います。
●FOAMSTARSとは
「FOAMSTARS(フォームスターズ)」はトイロジックが開発しスクウェア・エニックスにより2024年2月6日に発売されたPlayStation 5/PlayStation 4用TPS泡パーティーシューターゲームです。
チームPVPシューターですが、一撃でやられる武器が無い、弾(泡)が大きい、一度ライフが0になって(フォームドアップされて)もセーブ(救助)が可能、遮蔽物越しでも相手の位置が常にピンで分かる、一番活躍した(恐らくキルレが良い)プレイヤーが大将として選出されるルール「スマッシュ・ザ・スター」など、初めてシューターに触れるカジュアル層にとっても比較的優しいシステムが起用されているのが特徴です。
オープンβテスト時にそんなゲーム性自体を楽しいと感じていましたが、製品版で追加されたソロミッション(個別キャラチュートリアルも兼ねたストーリーモード)で語られたキャラクター達のバックグラウンドと描写のされ方があまりにも素晴らしかった。
正確に言うならば、現在を生きる多くの人々に向けて考えられた丁寧なキャラクターデザインをされているのでは、と感銘を受けました。
ので、物凄い個人的な解釈でですがこの感動を言葉にしたいと思います。
●特別な様で身近なキャラクター達
フォームスターズでストーリー(ソロミッション)が用意されているのは初期実装されている6人。SFとファンタジーが融和された世界観に合わせ、エンタメ性と笑いと時にシリアスを交えながらストーリーは展開されます。
ですが、各スター達の境遇や今の活動のきっかけは現実の私達にも他人事ではなく、見方を少し変えると「現代を生きにくい人々」にかなり当てはまるというか、フィーチャーした設定なのではないか、とも思いました。
ソアの「躰からシャボンが出る体質」は外見や体質(アルビノや多毛症など)による差別や偏見の問題と重なり、幼少期時点で片足の無いトニックは身体障害者、ペンギンに育てられたグウィンは捨て子・里子とも見れるし、アルバイターのジェッターは低所得労働層。どうしても現実では負の側面が伸し掛かる属性です。
(また、メルティが過疎化した村出身でヤングワーカーだったり、バブロさんもスラム街出身で小さい頃から新聞売りしてたり、情報が少ないので詳しい考察はできませんが、やはり一筋縄ではいかない人生を歩んできたのは伺えます)
その問題や障害といったものごとに対し、彼らが彼らなりの考えや行動で問題を受け止め、乗り越えてゆく姿が明確に語られ、分かりやすく描かれているのが素晴らしかった。
偏見や固定概念に染まってない小さな子供の「綺麗」という何気ない言葉に救われたり、モノづくりとそれを成し遂げた達成感から生きる活力や楽しみを見い出せたり、目の前で困っている子どもに手を差し伸べる優しさはきっと正しい事だし、様々な家族の形があって然るべきだと。
周りが押し付ける普遍的な幸福や、人としてあるべき姿という世間体の物差しに縛られる必要は無いよと、自分の価値観を大切にして生きて、それで他の誰かも笑顔に出来たらそれはきっと良い事だ、と思えるストーリーに救われます。個人的に「目の前の人の笑顔を守れたらそれはヒーロー」という答えを出してるジェッターが最高に好きです。
そんな魅力的なキャラクター達の中で一際異彩を放っていた男、ケイオス・エンダー。個人的に一番好きな…というかこの文章を書く事に至ったキャラクター。
彼について少し長く語らせて頂こうかと思います。
●ケイオス・エンダーという男
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彼は最初はギーク系アンチヒーローキャラなのかと思っていたのですが、もしかして自閉症スペクトラム障害のキャラとして描かれている可能性もあるのでは?と思いました。
(海外スタジオの作品になりますが、オーバーウォッチのシンメトラ、ウォッチドッグス2のジョッシュなども自閉症スペクトラム障害のキャラクター)(余談ですが洋ドラ「アストリッドとラファエル」も自閉症のアストリッドが彼女ならではの視点と分析力で事件を解決に導くドラマで非常に面白いです)
一言に自閉症スペクトラム障害といっても該当する特徴や傾向、会話の成立具合などは様々ですが(そのあたりはググって頂ければ出てくるので割愛)「ある物事への拘りが強い」「人とのコミュニケーションが苦手」「得手不得手の分野が明確で、得意分野に関してのスペックが非常に高い事が多い」という特徴が割と共通であるかと思います。
パリピを「バイ菌」とし「殺菌」する事に執着する強い拘り。冷静である時と激昂時の差が激しく、また感情も昂ぶりやすい。独特な価値観による台詞使いが多いことも特徴が重なりますが、とにかく気になったのは情報処理能力とそれに伴うバイタリティが高すぎる事です。
おそらくフォームガン(とバトルスーツ)も手製。公共の電話回線とラジオ回線をハッキングし、トニックが解除に時間をかけるレベルのファイアウォールを通信回線に仕込み、バブロさんのパーティー会場のブレーカーも落とす電子工学スキルの高さ。集めに集めにまくったバブロ研究はデータ量もさることながら、自分の耳で聞いた音声を分類しパターン予測するレベル。しかもその分類の細かい事。(ミッション2で出てくる声から判断したパターン分類番号がD6-00251、最初の分類番号がA1-00001、全5桁使ってない可能性もあるとはいえパターンと番号を瞬時に結びつける能力は常人を逸脱している)
そしてパリピ殺菌の為にその象徴であるバブロさんを殺菌すれば世界は浄化される筈と結論付けた結果、数年は引きこもり生活であっただろうに運動神経を磨き、身体を鍛え、FSGP(競技人口が最も多いスポーツの世界的な大会)に出るまでに至る。
冷静に考えたら一人の人間のスペックとしてバランスがおかしい。このゲームの舞台関係上キャラクターをより際立たせる為にかなり高スペックのキャラが集合してますが、幾らギークキャラとはいえエンダーは出来る分野が広すぎではなかろうか。
また、ただのギークでなく自閉症スペクトラム障害かと思ったもう一つの理由が、彼が部屋に引きこもる原因となった卒業パーティーの回想で口にした「誰も自分に見向きもしなかった」という言葉です。
…いや、パーティーには行くつもりも無かったし誰にも誘われなかった、という言葉もあるので判断は非常に難しいです、正直ゲーム内の情報ではこれは彼の性格の問題か、生まれ持っての性質の問題か分かりません。
ただ自閉症スペクトラム障害だけでなく、身体障害者はじめ多くのマイノリティの人々は少数派であったり社会的に公表しにくい状態であったり、一昔前までは見えていない者の様に社会が構築され、フィクションの世界でも同じく扱われてきた現実もあります。(そして今も多くの人々が、共に過ごしやすい社会になるように努力されています。)
笑われた、馬鹿にされた、ではなく、誰も見なかった。まるで見えない壁があるかのように隔てられていた。この言葉は、現実の人々と重ねて使われていたのでは無いか。もしそうだったら、そう思うとあの卒業パーティーのスチルを見ていて胸が二重に痛みます。
話を戻し、そんな個性的な言動をするエンダーですが、ソアがエンダーの「パリピを殺菌するにはどうすればいいか」という言葉ついてはぐらかす事無く真剣に悩んでいたり、その後でメーネルに狙われているだろう彼をトニック達も心配してたり、多くのフォームスター達の反応を見るに「個性」として彼のあり方が受け入れられてるのがよく分かります。フォームスターズの社会は宇宙進出もしてますし、現代よりも多様性に富んでいるからか、フォームスマッシュ選手たちがみな人格者だからか、ここも判断は難しいですが…。
(ただエンダー自身の根底には未だパーティーへのトラウマによる人間不信があって他人の善意も自分の善意も素直に受け止められていない部分が多々見えるのがもどかしい、同時にその気持ちもめちゃくちゃ分かるから心苦しい。)
そんなエンダーのストーリーのEDは「誰かに与えられた物ではなく、自力で成し遂げた勝利にこそ価値がある」という物。己を貫くエンダーにぴったりのアンサーですよね。ただ、彼が今までの境遇故に、アンチヒーロー故に一人の道を進まなければいけないのかもしれない…と思うと少しばかり複雑です。寄り添うワックスが尊い。
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その一方で、ソアのEDにもエンダーは登場します(所謂光のエンダー)。服装はシンプルなビジネススーツですが、特徴的なマスクを着けたまま。勿論その方がキャラクターが分かりやすいというメタ的な理由もあるかもしれませんが、私は「マスクを着けてる姿こそがケイオス・エンダーのありのままの姿だから」だと良いなと思いました。
本当に自分らしくいる為には素顔にならなけれいけないのか? いえ、逆に素顔だからこそ自分を表現できない人間もいるものです。匿名性を盾に取った傍若無人な行動の事を言っているわけでは無く、素顔という防御力ゼロの状態より、マスクという自分のアイデンティティ、一つアーマーを纏うことで安心して何か取り組める、臆せず我を出せる。それだって十分「自分らしさ」ではないでしょうか。
(余談ですが、あのソアのEDで一緒にいるのがあの二人というのは彼女のストーリーに登場したからというのもありますが、1から独自のイベントを開催し発展させたボンバヘッドと、情報収集と分析に長けているエンダーなのでめちゃくちゃ適任だし説得力があるなぁと思ってます)
…と、ここまで散々考察しましたが、これはあくまで私の想像なので、開発側にそんな意図はなく、本当にただ単にめちゃくちゃ万能型の天才だけどコミュニケーション能力だけが壊滅的だったギークの青年かもしれません。
ただもし彼が自閉症スペクトラム障害だったとしたら、日本の開発スタジオでそういったキャラクターのデザインがされるようになった時代の変化と進歩を歓迎したいです。
●キャラクター越しに向けられたメッセージ
ここまで触れたキャラクターとは、少し違うステータスと描かれ方をしているのがアギトです。
個人的にアギトは「これから大人になっていく若年層へ向けフィーチャーされたキャラクター」だと思いました。
アギトはフォームスター達の中でも若いキャラクターとして描かれている様に感じます。
忖度せず天真爛漫で少し学識で未熟な部分もある、でもいつだって目の前の好きなことに全力投球、できない事はないとでもいう位に自信満々。
そんな彼が一層眩しく思えるのは物怖じしない度胸、何より好きな事・新しい事に挑戦し続けるエネルギッシュさ!(ゲームすれば回復するとかスタミナオバケか)
でも全てが順風満帆だった訳では無い、そこに至るまでに経験した挫折、挑戦と失敗、結果は伴わなくとも積み重ねた時間こそが自分を作る礎であり、それが未来の自分を輝かせる物になるのだと、彼のストーリーでは語られています。
なのでアギトのEDが地球を飛び出し宇宙規模でのFSに出場する、性別や人種どころか種族さえも越えてゲームを通し多くの人と繋がってゆく。可能性は無限大だと思わせる作りになっているのではないでしょうか。
ただ「皆スターだってゲームで綺麗事を言われても、今の自分は輝いているとは程遠い」という感情も勿論あります。
そのフォローをしてくれるのが、このゲームにおける『見守る者』であるマスターのラジオ(密着取材!エクセレントプロフェッション!)。
ラジオ的には「これからを担う若者に向けて」と銘打ったメッセージではありますが、正直マスター自体が正体不明というか、宇宙人もいるフォームスターズの世界なら長命種とか上位種(それこそスキンの吸血鬼)でもおかしくないと思うので、彼からみたらいい大人もまだまだ若人とカウントされるんじゃないでしょうかね…。
ラジオ自体結構長いので全文は省略しますが掻い摘んで。
「誰もが自分だけの輝きを持っている」
悩んで苦しんでいる間、輝きは見えなくなっているだけで失われていない。人の輝き方はそれぞれ違う、人それぞれ価値観がある、価値観が違う人がいたっていい。そう思って認め合えば世界はもっとより良くなる。そして人との関わり合いが彩りある人生とよりよい未来を作ってゆく。
贈る言葉として完璧すぎる。人生においても、キャラクターデザインについても、このマスターの言葉が全てのアンサーじゃないのかな…と思える。凹んだ時に聞きたいラジオNo.1です。
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●最後に、優しさと共にエールを
マイノリティも健常者も、大人も子供も、全ての人をフィーチャーし励ますストーリー。
何故このゲームのタイトルが「フォームスマッシュ」でなく「フォーム『スターズ』」なのか、キャラクターを通し今を生きる全ての人が輝く物(スター)を持っているのだと、そう伝えたかったのだとしたら、それはとても素敵な事だと思います。
(ただストーリー全体として、結局メーネルの根本的な問題と能力ついては解決・解明してないよなとか、各々のストーリーの原因を探ってくるクロエさんがチョットコワイとか、エンダーブレーカー落としてるのメーネルにバレとるやんけWhy!とか、ボンバヘッド氏の情報が偏りすぎてて全然考察できんとか、世界滅亡の危機でもピザ頼むバスベガス市民多すぎんか!? とか、色々ツッコミはありますが……。
メーネルに関しては今後追加予定のミッションで追々明かされると信じて…。)
今日も元気に泡散らかすぞー!!
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●4月5日 追記
(3月28日に公開された「スクエニの創りかた」FOAMSTARSの回を見て)
ディレクターのリッキーさん(齋藤 力さん)「(新作ゲームを作るにあたり)遊んでくれた人がハッピーになる、幸せを感じるゲームを作りたい」「人間は『身近な人との関係性が良ければよい程幸福感を感じる』という研究結果もあるので、遊ぶ人だけでなく見ている人も楽しめたりコミュニケーションのきっかけになれるゲームにしたかった」
プロデューサーの岡谷さん「キャラクター達はキャラデザイン選考(優先)ではあったが、多くの人、グローバルな人に愛される世界とキャラを意識した」
…いやぁ、お二方の言葉が聞けて良かった、物凄い納得しました。
キャラクター達の個性はファンタジックな属性の方が際立ってるいるものの、親しみやすさや個人としてのリアリティはちゃんと現実の人々に寄り添いフィーチャーしたからこその賜物ですね。PVPゲーにてキャラの細かいバックグラウンドを気にする人はそこまで多くないかもしれないけれど、おざなりにしたらきっと気になってしまったと思います。個人的にプレイアブルキャラに対し「自分を投影、自分に投影」という感覚を結びつける人は少なからずいると思うので(勿論ロールプレイを徹底する人もいますけども)フィクションを際立てても、プレイヤーを置いてけぼりにせず、でも設定を押し付け過ぎず、絶妙なバランスで表現されているのが本当に素晴らしいなぁと再確認しました。
(余談ですが、泡シューターに決定したのはいいものの従来のオブジェクト単位の演算では画面上に弾10発しか撃てない!の発言でめちゃくちゃ笑いました。プレイヤーには全然分からないけど泡を積む表現を着地地点の地形をリアルタイムに変化させるプログラムで解決した発想が凄すぎる…プログラマーの皆様もありがとう御座います…!!)
●キャラ考察に夢中になって言い忘れたケイオス・エンダーのED考察
個人的にエンダーに関しては「こういうキャラクターがいる」という描写がされた時点でメッセージだとは思うのですが…。エンダーだけ同じマスターからの援助の申し出を断り、かつ与えられた資金も破棄する。「色んな価値観の人がいる」という(お金で勝利は得られない、多くの人に通じる援助も人によっては助けにならず、返って侮辱になる)という、現実でもあるあるな結末…。「人との関係を拒絶し続ける」エンダーだけEDの曲も違う事と、彼も彼の価値観的に丸く収まっていないのでバッドエンドとも見て取れますけれども、個人的には「今はまだEDにたどり着いていない」と受け取りたい。
これは個人的な願望でもありますが、結果的にそうだったのはいえ(原因でもあったけど)バスベガスを救った彼に対しトニックがお礼を言ってくれた事、ソアのEDに登場している部分を踏まえて「今の君は他人の協力や助けを必要としていないかもしれないが、もし君の協力や助けを必要としてくれている人がいたら、その時は手を差し伸べてもいいんじゃないか。」とも受け取れるんじゃなかろうか…と思いたいです。(ソアのパーティーには割と前向きでしたしね、エンダー)
…余談ですが、ジェッターのEDが何故「イメージトチガウ」EDだったのか…。でも機能はしっかりしてそうだし、あれはあれでバスベガス市民は笑ってくれそうなんだよなぁ。全てがイメージ通りプラン通りとはいかない事もあるけれど、結果的に良い方向で収まったならそれはそれでヨシ!という事なんだろうか…。ジェッター、最後までオチを任される男(ヒーロー)…!!!
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