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プロでも意外と知らない、熱吸収材

レースの部品を作っていた親友(特許取得者)に、2ストローク空冷のオフロード車のシリンダーヘッドのアルゴン盛り(溶接補強)をずっと頼んでいました。でも、忙しくて全然やってくれないのです。
それで、つてを辿って別の金属加工屋さんにやってもらいました。なぜ、アルゴン盛りをするかと言うと、空冷はシリンダーの温度がかなり高くなります。
チャンバーの取り回しの関係でシリンダーヘッドの形状が左右対称ではないと、熱膨張率が均等になりませんね。金属ですから熱膨張と収縮を繰り返します。すると、弱い所にクラックが入る事があります。それで、カットしてある側のシリンダーヘッドにアルゴン盛り、つまり補強をあらかじめしておくのです。

左右幅が均等でないシリンダーヘッドの場合はあらかじめ、アルゴン溶接で補強しておきます

転ぶ前の杖的な処置で、今はレースでも余りやっていないのか旧車レースでもない限り、もう空冷はありませんからね。
それで、加工から戻って来たシリンダーヘッドを見てビックリ。何枚ものフィンが見事に曲がっています。残念ながら、そのシリンダーヘッドの写真はありません。モノは資源ごみに出してしまいました。写真があったら、ビックリすると思います。

「え~、溶接のプロなのにクールミット知らないの?」と違う意味でビックリしました。クールミットは、ゆるい粘土のようなもので、溶接時のもの凄い熱を吸収するものです。

ゆるい粘度のような熱吸収材①クールミット

別の人にマフラーの凹み直しの修理に出した時も、「もし、良ければ、クールミットも同梱包しますけど…」と言ったら、「何ですか、それは?」と聞かれました。「溶接のプロなのに、知らないんだな」と…。熱で歪むのだから、当然クールミットを使うと思っていたのです。プロの溶接職人さんでも精度が余り必要がない分野だと使わないようです。
やっと、前述の友人を説得して溶接補強をやってもらえました。
高温にしたくない溶接周辺部に塗るので、空冷でフィンが深いから割りばしで押し込むのですが、なかなか上手く入れられない。
それで、思いつきました。私は料理もするので、ひらめいたのが生クリームの絞り袋です。スプーンでクールミットを絞り袋に入れて、フィンの間に「ブチュー」っと流し込むのです。すると、想像以上に上手く入って行き、パティシエのようww。
早く、簡単に入れ込めました。溶接作業はもちろん直視出来ませんが、ものすごい高温でアルミが真っ赤になります。

ならば、「マジ軽ナット」は安くて高性能になりますが、自衛隊さんいかがでしょうか?
溶接補強が終わった後は、旋盤を借りて燃焼室加工とスキッシュエリア加工をしましたが、今回はここまでです。

大変だった燃焼室容積変更とスキッシュエリア加工

クールミットは日本製でそれ程高価ではありませんが、彼は「本当は、アメリカ製のもっといいやつがあるんだよ。でも、すごく高い。軍事用だからね」なるほど、と納得。
軍事用ならそれはかなりの精度が必要な訳で、高くても高性能な物を使うのは当たり前です。
この加工をやったのは、15年以上前でしょうか。当時は自動車やオートバイに静電気の悪影響が及んでいるなんて思いもしなかった。
シリンダーヘッドの加工するより余程リスクが少ない、と言うかありません。
吸入・圧縮・爆発・排気というエンジンの行程でも静電気が発生して、各部品の動きを悪くしている他、排気ガスにも影響しています。
除電で効率良い燃焼になり各部品が少ない力で作動するのに、排ガスが未除電と同じなんてあるはずがない、そうずっと考えていました。いつかは除電での排ガスのクリーン化を証明したいと思っていたら、また協力者が現れました。
10月13日にHondaエコマイレッジチャレンジ 本田宗一郎杯に参戦する神奈川県立平塚工科高等学校の社会部。自動車科がある高校ですが、この夏構内の自動車整備施設の大規模な入れ換えをしました。
この高校はなんと認証工場だそうで、排ガスの測定装置があるのです。
先生に話したところ協力して頂けるそうです。一生懸命やっていると協力者は必ず現れるものです。
もちろん学校のカリキュラムが優先されますから、はっきりは分かりませんが、近いうちに実証実験が出来る見込みです。どうですか、やっとここまで来ました!
除電の技術協力をしている、神奈川県立平塚工科高等学校 社会部(〇で囲んだのが看板)の隣 #703 N-CYCLEのピットで展示中。
いい感じの「のれん」が目印です。参戦している社会部の顧問の先生、または、隣で展示しているN-CYCLEで除電の効果を聞いてみて下さい。とても詳しいです。

除電チューニングの入り口はタイヤから。いくらエンジンの出力を上げても、タイヤの回転でロスしたらせっかくの苦労が目減りしてしまいます。


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