自動車開発の思い出 その21
役員報告が終わり、再び米国へ出張
出張で地球を一周したお話です。走行テスト等のデータを取り、評価点を出して報告書を作って役員に発表する。発表はチームのリーダーですが、とても緊張します。無事役員への報告が終わり、つかの間の国内での仕事です。
出張先で仲良くなって、オハイオ州デイトンの航空博物館に一緒に行った、エミッション(排ガス測定)へも頻繁に顔を出し、世間話をしに行くようになりました。
どのメーカーでもやっているので書いても大丈夫エだと思いますが、ミッションでは車両をシャーシダイナモに乗せて固定し、想定したモード(走り方の決まり)をコンピューター制御でデータを取る部署です。
テストドライバーだけの仕事ではないので、少し時間が空いたら他の部署に顔を出せるようになりました。
走行テスト部門ではそんな余裕はありません。走行距離のノルマがあるからです。その代わり、残業禁止の日以外は必ず残業。確かに忙しかったけれど、ちょっと時間があれば気分転換が出来る仕事で良かったと思います
とはいえ、当時はパソコンで写真を取り込んで編集なんて出来ませんから、ワープロでキャプションや説明を印字して台紙に貼り、そこにプリントした写真(ポジ)を両面テープで貼るという、何ともアナログな方法で役員報告書を作っていました。
部数は25とか30部とかだったと思います。余りに面倒なので「一冊見本を作ってそれをカラーコピーすればいいじゃないですか」と懇願しましたが、認められず…。
写真の四隅に両面テープを貼り、それを台紙に貼るという作業。それを何日もやるものだから、両面テープと指がくっついては剥がすを繰り返し過ぎて、指の腹がおかしくなりました。今なら問題になるかも知れません、
だから、カラーコピーが良かったのに!
国産車のデータを取りつつ、こちらも海外と同様な方法で評価点を付ける。詳しくは書けませんが、ドアの開け閉めのフィーリングとか、ロックを操作したフィーリングなど、走行だけではなく実際に動かした感覚までですから、もの凄い数です。その全てに評価点を付けてデータ化するのです。
評価点はお国柄が出るので、それはまた後で…。
しばらくそんな仕事をしていると、「また、米国へ出張になるよ」との話が出ました。
それも今度は全員一緒に渡航するのではなく、2グループに分かれて分散での渡航です…。「大丈夫だろうか?」と不安になります。
オヘア空港はとにかく巨大。羽田空港も下に走る高速道路の上を旅客機が誘導路に向けて走行しますが、それとはスケールが違います。別物です。
この時は私を含め3人、そこそこ英語が話せる一回り上の先輩、少しだけ話せる私、ほぼ話せない先輩、それが世界第三位の巨大空港 シカゴのオヘア空港でトランジットしなければいけないのです。
庶務に言って3人とも同じ便のチケットを取ってもらいました。もちろん、ビジネスクラス。
そして、11時間の旅です。アンカレッジ経由も経験済だから、11時間なんて近い方です。
機内でやる事はだいたい同じ。時代は昭和、当時は携帯電話はなく、ウオークマン(カセットテープ)を持って行きましたが、飽きてしまいます。
機内での映画鑑賞か音楽を聴く。
人気 旅系YouTuberのしげ旅を観ていると、最近のビジネスクラスはすごく豪華で個室になっています。長距離のみでしょうけれど、座席のひじ掛けを倒して寝ていたのとは違いますね。
最近、この当時を回顧するようになりました。
きっかけはYouTuberで勧められた、JET STREAMというラジオの長寿音楽番組です。これについてはまた別の機会で。
まぁ、いつも通り、まずはシャンパーニュで出発を祝い、お酒はそこそこにして、飽きたら機内を歩き回ったり寝たりしてやり過ごし、シカゴ オヘア空港に到着。そこでトランジットするのですが、どの搭乗口かよく分からない。
余りに空港が大きすぎるのです。それもそのはず、この空港は世界三大空港のひとつなのです。
それで、米国人とおぼしき男性に質問しました。その男性は親切で、ゆっくり説明してくれました。米国は基本的に人がいいのです。
3人で何となく分かったような感じで、「ここだよね」という搭乗口に辿り着きました。まだ不安がある私たちに、その男性が、「ちゃんと辿り着いたか」をわざわざ確認しに来てくれたのです!ありがたい。
「ちゃんと着いたね」と確認すると、彼は一声かけて立ち去りました。
もちろん、私たちもお礼を言ったのです。
国によっては、旅行者が道を尋ねると、嘘でもいいからとにかく答える国民性の国があると聞きました。もし、自分が尋ねられたら、正確に答えるか分からなければ、はっきり「私は分かりません」と答えましょうね。
別の飛行機に乗り換えて、無事空港に到着。駐在員が迎えに来てくれていて、テストコースでの仕事が再開します。
モーテルのフロントの可愛いマンディーちゃんとも再会しました。
同じ車でのデータ取りを再開するのですが、ここでひどい時差ボケが発生。危なかった。
それはまた後で。
この頃に比べたら、自動車の性能は更に向上し、厳しい環境基準となって燃料は限界(を超える)まで希薄して、実際に弊害が起きています。
どのタイヤメーカーも自動車メーカーからの要望で「いかに転がり抵抗を減らすか」の凌ぎを削っています。
下の写真はタイヤからの放電量を増やしたいので、側面に細かい筋を掘って少しでも放電量を稼ごうとしている証拠です。
乗用車のタイヤには、ほぼ全てこのような放電する為の模様が向けられています。それでも放電量は足りていません。
転がり抵抗をいかに減らか、その一つがタイヤのゴムの原料にシリカを配合する事でした。
シリカを配合すると転がり抵抗が減って、燃費が改善します。
燃費が改善するのはいいのですが、シリカは絶縁物質なので「車体に蓄積されている静電気を路面に逃がす」という、タイヤの役目の一つがおろそかになってしまいました。タイヤの原料の一つ、ゴムの強度と導電性を担うカーボンブラックの配合比率が、相対的に下がってしまうのです。
それで、苦肉の策で各社「導電スリット」というタイヤの一部分だけ、導電性の高いゴムの部分を作って、路面への放電量を増やそうと考えました。
それについてメーカーに問い合わせた動画があります。メーカーもごまかさずにちゃんと答えています。
ところが、アスファルト舗装のアスファルトはご存じの通り、石油の精製過程で出来るもので、合成ゴムやプラスチックと同じ、導電性の低い物質。
タイヤまではいいのですが、舗装路面には少ししか放電出来ません。
正にパラドックスと言っていいでしょう。
今のタイヤと舗装の技術では、これが限界です。
解決手段としては、路面への放電が当てにならないので、路面ではなく自分で放電するマジ軽ナットしかありません。
路面がアスファルトだろうが、コンクリートだろうが、土だろうが関係ありません。
タイヤを除電するにはマジ軽ナット一択しかないのです。
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