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自動車開発の思い出 その4

何度も事故がありました

自動車のテストをしていると、どうしても事故があります。会社からは「プロとして事故は絶対起してはいけない」と教育されます。それはそうなのですが、間違いを起こさない人はいません。
ちなみに、サムネイルの写真はレンタルフォトなので、記事とは関係ありません。
自動車は何段階もの試作段階を経て、量産に近づきます。そして、一定の距離の耐久テスト走行が終わっていないのに、一般発売となります。「まだ、テスト中だけど、いいのかなぁ~?」と思っていました。
だから私は、発売されて間もない新車を買う事をしません。発売されてから数年経って、リコールが出るなんて事が珍しくないのはご存じでしょう。
リコールにはならなくても、リコール未満の改善はどのメーカーでも行われています。
テストドライバーの仕事は「ダメ出し」でもあるので、その辺りは良く知っていますので…。
テスト車両は例えば、市販段階で200万円の車だとしても、開発段階では一台1千万円以上します。量産確定段階でも、ラインで量産はしていませんから、手作りなのです。段階が進むにつれて少しずつ安くはなりますが、ラインで数分間に一台出来上がるのとコストが違います。
だから、絶対事故だけは起こさないように、テストのデータが全て水の泡になると、夜勤の日は日中の遊びは早く終わらせて、睡眠を取ってから仕事に行っていました。目いっぱい何かをして、そのまま出勤する強者もいましたが、私はやりませんでした。
「事故を起こさない」これが、テストドライバーの第一条件、次が起こった事象を感じ取り、正しく評価する事です。
素人さんが「こんなチューニングをして、効果がありました!」的な事をSNSやブログ、動画サイトに掲載していますが、その殆どは思い込みによるプラシーボ効果やアクセス稼ぎの嘘だと思っています。
浅い知識と軽いノリで検証しているつもりなのでしょうけれど、真似しない事をお勧めします。
例えば、私が販売しているマジ軽ナットシリーズは、2輪レース界では知らない人がいない、友人の発明。その彼が2012年に、以前から不思議だと思っている事を最初に私に打ち明けた。それをパンフレットに掲載しています。

マジ軽パンフレット裏面

では、なぜ私が最初だったのか?という事です。彼との付き合いは相当長く、工場にも出入りしていました。でも、私より頻繁に出入りしている人はたくさんいます。
もし、私が日頃から前述の素人さんのような感じだったら、話していません。
車体に発生する静電気を、タイヤから路面に流している事さえ知らない素人だったら、お話にもならないからです。
今までの友人関係から除電が理解出来る、そして、テストドライバーをしていて、車に起こる変化をちゃんと感じて、それを評価出来るからだったと思います。この場合の評価とは起こった変化の理由を、理論的に正しく結び付けられる事をいいます。
マジ軽ナットのヘビーユーザーのお客さんの中には、ミッション用マジ軽ボルトを取り付けたら、ギアチェンジが「ウルトラスムーズになりました!」と連絡を下さったがいます。大喜びしているのは分かりますが、評価にはなっていません。
静電気の除電も思い込みでやっている人がいますが、基本が分かっていません、だからとんちんかん。私はこの方式の除電の秘密を全てを知っていますので、このような事についても書きたいと思います。

話を戻して、走行テストといってもテストコースもあれば、市街地もあります。市街地はそれはそれで、楽しいのですが、多い時には10台を超える車がグループでに走るので、決まったコースでも信号に引っかかったりして、まとまって走るのは困難です。特に昼間は一般車が多いから、間に割り込まれたりもします。
歩行者の信号が点滅するのを見極めて、早めにブレーキを踏むか、アクセルを踏んで通過してしまうのが良いのか?テストコースで走行しているのとは、神経の使い方が違います。精神的には、例え最高速度200km/hで走る事があっても、一定以上の技量があるドライバーだけが走っているテストコースの方が、安心して走れます。
ある時、同僚が市街地走行で事故を起こしました。原因はよそ見だったかな。本当の理由は居眠りかも知れません。すでに市販されている車でしたが、大破で廃車となりました。
すぐに部署全体で安全対策会議となります。いろいろと対策を考えますが、事故が起きるとその対策で、どんどん無駄な時間を費やす事が増えます。
一日の走行距離のノルマが決まっているので、それは守らないといけない。
本当は休憩を取らないといけないのに、休憩をすっぽかして距離を稼ぐ事もたまにありました。今ではどういう体制でテストしているかは分かりませんが、当時はそうでした。
ある時、コーナーがいくつもあるコースがあって、そこを走ってコースから出ようとしたら、入場待ちをしていたテスト車両に、別の車両が突っ込む大事故となっていました。車から見たら、双方のドライバーが車から出ていて、怪我はないのが確認出来ました。テスト車はもうダメですが、火が出るような感じでもないので、そのまま走行テストに戻りました。決められた距離を走らなくてはならないからです。
そうしたら、それが問題となってしまいました。「大事故が起きたのに、手助けしなかった」という事のようで、現場にいた私と同僚のもう一人に報告書を提出するよう言われたのです。
そこで、「どういうふうに書こうか?」となり、同僚は文章が苦手なようなので、相談して「そうか、そういう状況なら仕方ないな」と該当部署が納得しやすい内容で提出、それ以上は追及されずに済みました。
事故ではありませんが、ドイツのテスト基地に行っていた時に、夜勤専門のテストドライバーがいます。ドイツでは、会社のテストドライバーではなく、個人契約のテストドライバーと聞いていました。テスト車両はBMWだったのですが、私が停車場所から移動し始めると、ゴットン、ゴットンと周期的に振動が来ます。「何だろう、おかしいよね?」とタイヤをよく見ると、一部だけ平らに削れていました。
アウトバーンでフルブレーキをかけてロックさせたので、そこだけ平らになっていたのです。日本人がしないような運転をする人がいる、その為のテストの為に莫大な費用を使っています。
私はそのような耐久テストではなく、高級車の比較データを取る為に滞在していました。
ドイツの基地では、ピザ窯をスリムにしたような煙突付きのバーベキュー炉があり、日本からの出張者が来る度に歓迎のバーベキューをするのが楽しかった。何しろ、本場のソーセージが食べ放題!

楽しみだったBBQパーティー

そして、ドイツのオートバイの姉妹クラブのメンバーとも会えて、休日にツーリングもしました。もちろん、会社には内緒ですが。
短い間の出張でも、ホテルまで会長が駆けつけて来てくれた。後に何度も再開する事になります。
アウトバーンの事も多くの日本人が誤解しているので、機会があれば書きますが、幅は日本の高速道路と変わりません。違うのは鉄の掟があるかないか、それだけです。
当ブログでは、テストドライバー、オートバイと乗り物の効率化、省エネ化のカギとなる除電をメインに書いています。
是非、ホームページをご覧下さい。

https://tristars-tec.jimdosite.com/


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