ひとり出版社をつくる㉑「お金の話~初期投資~」
ひとり出版社をつくるシリーズ、当面、お金の話で進めていきます。
今回は、「初期投資」の話。前回(ひとり出版社をつくる⑳「お金の話」)の流れからはちょっと逸脱しますが、この初期投資の考え方がいちばん大切だと思うのに書くのを忘れていたので、割り込ませます。
独立開業で気になる初期投資の存在
「独立開業」を考え始めると、最初に気がかりになるのは「初期投資」だと思います。
たとえば飲食業を開業する場合は場所代に加えて厨房設備や什器などの設備投資費、仕入れ代などが重くのしかかります。スタッフを雇うと人件費もかかります。開業資金は2000万円くらいは必要なんじゃないでしょうか。
全額自己資金で賄えればいいですが、そんな人いますかね。おそらく多く場合、金融機関の借り入れに頼るはずです。
他人資本を入れることで資金的な身の丈よりも大きなビジネスをスタートできますが、当然返済負担が加わります。自己資金なら仮に失敗しても「やってしもた……」ですみますが、他人資本が入るとそうはいきません。
つまり初期投資額が大きくなるほど商売のリスクは高まります。
ひとり出版社設立で必要となる初期投資はいくら?
ではひとり出版社をつくるために必要な初期投資(開業資金)の項目には何があるでしょう。
結論は、ネット回線につながったパソコンとプリンタがあれば出版社を始められます。
そのほかFAX番号も必要とか、原稿を読み込むスキャナがあったほうが便利(これは絶対に必要)とか、細かなことはありますが、初期投資で必要な設備を象徴的にあげるならばその程度です。
いまどきパソコンを持っていない人はすくないでしょうし、そういう人が出版業をしようとは思わないはずなので、パソコンを新調する必要はないですね。
買うとすればプリンタでしょうか。すごい枚数をプリントするので。家庭用より、もうすこし高性能のプリンタ。
スタブロブックスの場合、ブラザーのMFC-J6997CDWを新たに導入しました。
MFC-J6997CDWは、プリントスピードは速いし、以前使っていたブラザーの小ぶりのプリンタよりインクは断然長くもつし、買って大正解です。
(追記)さらにいえば、プリンタ機能に加えてFAX機能とA3出力のすべてを兼ね備えているのはMFC-J6997CDW一択だったと思います(これ以上の機能や能力を求めるとコンビニなどに置いてある冷蔵庫サイズのリース機になる)。
あとキャノンのスキャンスナップPFU ScanSnap iX1500も購入しました。
これも大正解(↑最新版)。大量の赤入れ原稿を一気にスキャンしデータ化できるので超便利です。これがない仕事は考えられません。
商品紹介のようになりましたが、ブラザーのプリンタは10万円未満、スキャンスナップは4万5000円程度。合計15万円くらいです。
あとは株式会社をつくるために必要な諸経費。freeeの会社設立サービスを使って法人登記の手続きをはじめとした諸々を自分でおこなったので、実費は25万円程度だったはずです。ちなみに、freeeの会社設立サービス、非常によくできています。
話をまとめると……
スタブロブックス株式会社設立のための初期投資(開業資金)は15万円+25万円=40万円です。(繰り返すように、その他FAX回線費用やISBNコード取得代など細かなものもありますが……)
40万円あれば、株式会社で出版社をつくれます。
初期投資のリスクはめっちゃ低いといえます。でも、これで出版社をやっていけるのかといえば、そんなわけがありませんね。
ということは、出版社を立ちあげるだけならリスクは低いものの、出版社を続けていくためには、初期投資の実費では計れない何かが必要、ということになります。
何でしょうか?
ひとり出版社の設立で大切な資産は「自分」
小見出しで結論を言ってしまいましたが。
そうです、「自分」です。
出版業で付加価値を創出し、利益を生み出すのはパソコンでもプリンターでもなく、貸借対照表には計上されない自分という資産です。
ものづくり企業のように、設備して利益生んで減価償却して、また設備して利益生んで減価償却して……その繰り返しで規模を拡大していける業界ではないです。出版業は。(ものづくり業界も今はそういう時代ではないですね。規模追求した大量生産大量消費時代は今は昔……)
自分という資産が企画し、本をつくり、市場に流通させ、認められると利益を得られる。市場にスルーされると利益は得られない。ただそれだけです。
価値を生み、利益を生む自分という資産は、貸借対照表には表れません。この会計上は見えない自分の存在こそが、出版社の設立でいちばん求められる初期投資の正体だと思います。
つまり設立時点でもっとも問われるのは、その時点までの自分にどれだけ投資をしてきたか、ということです。
……。
とまあ、カッコいいことを言っているようですが、これは私自身が今、リアルに痛感している課題です。市場という厳しい目利き力によって、私という資産価値が値踏みされている。
ひとり出版社には、そういうおそろしさがあります。
つづく。