【実践】廃材を使用した3Dプリンターの材料開発をしてみよう!
「廃材を利用して3Dプリンターのものづくりができない?」
持続可能なものづくりが求められる世の中で、デザインスタジオTriple Bottom Lineでもこのような依頼が来ることがあります。コーヒーかすや、木くずなどの有機廃棄物を混合した3Dプリント素材などはよく見るのですが、今回TBLが取り組んだのはケミカルウッドと呼ばれる樹脂の切削屑でした。
この記事では、この樹脂の切屑を使用して3Dプリンター用のフィラメント材料を開発するまでの流れをご紹介します。
使用するプラスチックの切屑
使用するケミカルウッドという樹脂は、試作品の形をつくる際に良く使用される樹脂でCNCなどで切削をし形をつくる際に使われます。その切削の際に必ず出る切屑は、通常産業廃棄物として廃棄されます。
3Dプリンターの材料開発をするには
3Dプリンター用のフィラメント製造は、卓上で完結する簡易な設備も存在はします。ただし、材料をムラなく混合し、工業的品質のフィラメント開発を行うには大型の設備が必要です。Triple Bottom Lineでは残念ながらこれら設備を保有していないため、今回は開発効率と品質を担保を重視し外部の工場の力をお借りしました。
切り屑を混ぜるプラスチック
廃材となるケミカルウッドの切屑に加えて、3Dプリント用のプラスチック材料を混ぜることで、適切な強度と弾性を確保します。このステップでは、適切な材料を選び、最適な配合割合を見つけることが求められます。
今回検討した素材の要件は透明樹脂でした。候補としてはPLAやPC、PETGなどが挙がりましたが、PP素材を選定しました。PPはポリプロピレンという素材で、軽量で弾力のあるという特徴があります。
まずは混ぜてみよう
3Dプリンターの材料開発は、実際に混ぜてみないとわからない場合が多いためまずは支給するケミカルウッドの切屑をペレット式の3Dプリンターでそのまま混ぜて造形のテストをしていただきました。
ペレット式の3Dプリンターの材料タンクに直接ペレットと切屑を混ぜた状態のものを投入するためグラデーションのようなムラがあるサンプルができました。色味や素材感としてはケミカルウッドのピンク色が反映され、透け感があるマットな素材として評価は上々です。
ただし、切屑の粒度にばらつきがあり、粒の大きいものは造形物の表面に析出してしまいました。混ぜる廃棄材は0.3mm以下で細かく粉砕されているときれいにフィラメント造形できるとのことなので、本番では支給した廃棄材を一度ふるいにかけて大きい粒を排除していきます。
フィラメントの製造中…
テスト造形の結果を受けて、最終的な配合の割合や必要なフィラメントの量などを決めていよいよ造形開始です。
ただ、実際の材料の混合(混練)からフィラメント製造までは工場へおまかせです。TBLとしてはPP素材の3Dプリントの経験が浅かったため、フィラメント製造中の期間に並行してナチュラルなPPフィラメントで出力の条件出しを進めていました。
フィラメント完成!
最終的に完成したフィラメントがこちらです!元のケミカルウッドのピンク色と比べて少しオレンジっぽい色味になりました。オリジナルのケミカルウッドの色とも違う、PPとも違う独特で唯一無二の素材の完成です。
実際に造形もしてみました。ベースとなる素材はPPで、ナチュラルなPPフィラメントと近い出力条件で造形することができました。
さいごに、廃材を再利用した高品質なフィラメントの製造方法の技術やノウハウにご興味ある方は、ぜひTriple Bottom Lineまでご連絡ください。