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私が死んだ記憶

ああ、死んだな、と悟った。

電車で席に座っていた。
奥の方の車両から、悲鳴とともに何か破裂音が響いた。
その音はこちらに近づいてくる。
すぐに私たちの車両にやってきた。
それは中年のよれた服を着た、覇気のない男と、その手に握られたライフルだった。

電車はちょうど駅に停車中だった。
私は隣の友達のことを意識しながらも、何も考えずに立ち上がり、電車から降りようとした。
みな逃げ出すだろうとタカをくくっていたのだ。
しかし、実際には、みな席を立つことなく、座って目を合わさないようにして息を潜めていた。
目立たないように。目をつけられたら、狙われる。

そして、みなのそれは正しい判断だった。
ひとりだけ立ち上がり、逃げ出そうとした私は格好の獲物だった。
男はライフル銃を窓に向けて、一枚一枚ガラスを打ってきた。
私の行く手をふさぐためだった。

狙われたことに驚き、恐怖した私は、正常な判断を奪われていた。
私はホームから電車の壁に張り付き、息をひそめようとした。今さら遅かった。

男はドアから身を乗り出し、私を見つけた。
私と男は目があった。
男はもたもたとした明らかにライフルを使い慣れていない動作で私に標準を合わせた。
私は逃げ出すことができない。
撃たれた。

一発、二発、三発。

そのうちの一発は見事に私の左胸を射抜いた。
ぐわっと衝撃が走り、心臓が大きくなり、血が溢れ出すのを感じる。
これは致命傷だと直感した。

死ぬなら道連れ。
私を打っておいて無傷なんて、そんなことは許さない。

私は至近距離から打つそいつにしゃにむに手を伸ばし、その銃口を手で捕らえた。
そのままライフルを掴み、手前に引っ張ると、あっけなくそのライフルは私のものとなった。

恐怖に顔を引きつらせ、車内に逃げ込もうとした男。しかし、恐怖ゆえに私のライフルから目が離せない。
その男に向かってゆっくりと標準を合わせ、引き金を引いた。
後ろの乗客に当たるかな。
少しそんな思いが頭をかすめる。だが、だからといって手を緩めることはなかった。

一発

二発

三発

銃口を引いたとき、世界がスローモーションで見えた。
男に弾着し、男が跳ねる。
血しぶき。

男にとってもそれは致命傷だろう。

ちっ、三発しかないのか、と私はくやしがる。
もう手元に残りの弾丸がないことと、男にも逃げる余力がないことを確認した途端、
私は左胸がひどく重たいことに気がついた。

ああ、死ぬのだ。

「死にたくない」と、それでも本能が働いて、私は左胸の流れ出る血を少しでも減らそうと手で必死に押さえている。。。

そこから後の記憶はない。

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