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制度設計理念から見つめなおす成年後見制度の課題感

■成年後見制度の制定

2000年に「措置から契約へ」という言葉をテーマに介護保険制度と同時に導入された制度が成年後見制度です。

当時は【身上監護を行う介護保険制度】と【財産管理を行う成年後見制度】で『車の両輪』と呼ばれていました。

しかし、現在ではこの言葉は使われなくなり、全く別の制度、全く別の方向性で動いているように見えます。

当時は認知症や軽度の精神障碍の人を保護する制度がなく(準禁治産制度はハードルが高い)、悪質商法の被害が広がり、社会問題にまで発展していました。
そこで、介護保険制度と共に成年後見制度がスタートをしたという背景があります。

■任意後見契約とは?

本人が元気なうちに信頼できる家族や知人と契約をして、
本人が認知症などを発症した際に一定範囲の代理権を与える制度です。
そのため、法定後見とは並立しない全く別の制度となっています。

上記で記載した通り、任意後見契約は、本来自分の将来の後見人を決めておくことができる自由な制度であるべきですが、日本の現在の制度では被後見人が指定した「任意後見人」は後見監督人に監督されている、且つ、与えられる代理権の範囲が限定的であり、制度としては少し不自由な印象があります。

活用されるべき任意後見制度が世間に普及していない理由としては、
【代理権に限界がある】点と【制度の意味が一般国民に認識されていない】点が大きいのではないかと考えられます。

■成年後見制度の三大理念

・自己決定権の尊重
・残存能力の活用
・ノーマライゼーション
上記の理念から分かる通り、成年後見制度は本来、本人に不足する能力を補うための制度(意思決定支援的な発想)であり、後見人が全てを代理するような制度(代理決定的発想)ではありませんでした。

しかし、この三大理念を耳にすることはだんだん少なくなってきました。。

■成年後見制度の歪み

ほとんどの後見人はもちろん真面目に取り組まれている一方、以下のような問題が出てきていることも事実です。

①親族後見人の横領
親族が後見人となるケースが90%以上であった制度発足当時に発生した問題です。
ただ、「横領」の判断基準が難しく、推定相続人の目線で見た場合に、後見人が被後見人の金銭を利用していることを「横領」であると裁判所が捉えた可能性もあります。

②専門家による多額の横領
①以後、裁判所が法律専門家に後見人指名するようになり、専門家の後見人が全体の80%を占めたことで発生した問題です。(もちろんごく一部です)

③制度と判断能力状態の乖離
利用割合を見ると、後見が80%、補助・保佐が15%以下、任意後見はごく僅かとなっています。
しかし、本当に80%が「後見相当」の判断能力低下状態なのか、という点も疑問です。

④市民の制度に対する不信感
制度に関するマイナスな情報を市民が知るにつれ、不信感と反発が強まっています。
2016年に成年後見示度利用促進法が出ましたが、特に効果は見られませんでした。

⑤利用者の少なさ
申立件数は年間35,000件程度の状態が10年近く続いており、
制度の適用候補者が1,500万人いるのに対し、利用者は僅か20数万人制度(1.5%)と非常に少ないです。

以上を踏まえ、成年後見制度の趣旨や意義をもう一度考え直す必要があるかもしれません。

■「後見制度支援信託」の導入

後見人の「横領」事件に対応するために導入された制度です。
これは、家庭裁判所の指示により、一定額以上の金銭を信託銀行で強制的に信託するという運用となっています。

こちらは一見良い制度に見えますが、後見人に対する不信が前提となるため、成年後見制度が制定された当初の意図と反している印象を受けます。

また、この制度は、後見人によって勝手に預金が解約され、信託銀行に移ってしまうため、例えば、遺言書で銀行預金ごとに相続人を指定していた場合は、遺言書が無効になってしまう等の問題も発生しています。


以上のような、問題点をはらんでいる成年後見制度ですが、
昨今では改善に向けた動きも見られます。
次回はそんな成年後見制度の運用を改善するための取り組みについて解説いたします。

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最後までお読みいただきありがとうございました!
次回以降は、未来に目を向けて、成年後見制度が今後どのように変わっていくのかについて解説をしていきたいと思います。

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