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飛行機飛ばしてて死ぬかと思った話4つ

こんにちはトリムです。

飛行機を飛ばしてて死ぬかと思った瞬間を4つほど話してみたいと思います。

と言っても、幸い航空事故的なものには遭遇したことはありませんので、今もこうして生きています。

飛行機に乗ったことが無い人でも、車や自転車に乗っていて「危ない!」と感じたことの1度2度はあると思います。ヒヤリハットとか言われるやつですね。

それの航空機バージョンみたいなものだと思って聞いてください。

ただし、あくまでも僕個人の感想として「死ぬかと思った」話なので、一般的に想像される航空事故などとは内容が異なることをご了承ください。

では、順番に暴露していきます。


①空中で旅客機に近づいてビビった話

これは僕が小型のビジネスジェットみたいな飛行機に乗ってたときの話です。5人乗りとか7人乗りくらいのサイズ感をイメージしてくれると良いです。

飛行場から離陸した後、飛行経路に乗るために上昇していくのですが、上昇中にタワーの管制から突然指示が入ります。

管制「maintain 2000ft」

みたいな感じ。「2000ftを維持しろ」ということですね。

無線に応答しつつ速やかにパワーを絞って指示された高度にレベルオフ(水平飛行への移行)します。

離陸直後はフルパワーでグングン上昇してますし、管制から指示が入ったったときにはもう1500ft近くまで上がってたので、指示が聞こた瞬間に思いっきりパワーを絞って「上昇率を殺しながら無線で応答を返す」ような、なかなか時間的に猶予がない操作でした。

車で言えば、走行中にいきなり「50m先で止まれ」と指示されたようなものだと思ってください。「相手が指示を話し終わる前に操作を開始しないと間に合わない」みたいな。

で、なんとか指示された高度を超えないように上昇を止められたなと思ったら、次の瞬間

ブオンッ!つって自分の真上を旅客機が通過して行きました。

こんな感じで視界に収まってない

近くの別の飛行場から離陸してきた航空機と経路が重なっていたんですね。ニアミス回避のために高度でクリアランスを取ろうとして指示してきたのが、管制の「maintain 2000ft」でした。

実際はニアミスになるほど接近はしてませんが、初めて空中でこの距離感で旅客機とすれ違ったので、まずその大きさにビビりました。

海でダイビングしてたら真上をバカでかいサメが通っていったイメージ。

しかも、このサメの速度が250km/hくらい出てると思ってください。

もし管制の指示を聞き逃したり操作が遅れてしまったら、あのバカでかい飛行機にもっと近づいてたなと考えるとゾッとしました。

実際は管制もパイロットも航空機同士が近づくようなミスはしませんが、もし空中でぶつかったりしたら簡単に死ねるなと実感した瞬間でした。

②エンジン爆発させかけた話

ソロフライトの訓練をしていたときの話です。

いつものような機体に乗り込んでチェックリストを進めていきます。

飛行機の機体にもよると思いますが「エンジンスタートプロシージャー」みたいな名前でセクションごとに手順があります。

・エンジン始動前の手順
・エンジンスタートの手順
・タクシーの手順
・離陸前の手順
・・・
・エマージェンシーの手順 など

それぞれ数十項目ずつくらいのリストがあって、当然これらは全て暗記してるし体でも覚えていて、その上で飛行機を飛ばしています。

で、エンジンスタートのためにチェックリストを進めていたところ、なんと手順が頭から飛んだんですよね。

「あれ、次なんだっけ?」みたいな

考えても出てこなくて、少し前の手順を振り返って流れで思い出そうとしても全く出てこない。

その時乗っていた機体は、ボタンポチでエンジンがかかるようなものではありません。

燃料入れるタイミング・着火するタイミング・どこでスロットルをどのくらい開けて、プロペラを調整して・・というエンジンの回転数とか温度とかモニターしながら手動で操作するエンジンのかけ方です。

ですので、ここで下手に間違った操作をするとエンジンがぶっ飛ぶ可能性があるわけです。

別件で「エンジン始動をミスってエンジンを1つぶっ飛ばした人の例」を聞いていました。そのエンジンをぶっ壊した人は壊したエンジンの値段から、その後「1億円プレーヤー」と呼ばれていたそうなので、自分も「1億円プレーヤー」なってしまうとかなりビビっていました。

んで、結局どうしたかというと一か八か体の記憶に任せることにしました。頭で言葉は出てこなくても、体の動きは体が記憶しています。

つぎは右手でこの辺を触って、目線はこの計器を見て、左手でこのスイッチ入れて・・みたいな。

つまりスラムダンクで流川が目をつぶってシュートを決めたアレです。

ということで、一応ちゃんとエンジンはかかってその後フライトすることはできましたが「あの手順あってたかな?」とずっと不安を抱えたまま飛びました。

地上でエンジンが火を吹いたとしても死ぬことはないと思いますが、飛行機のエンジン一つをおしゃかにて社会的に死ぬかと思った話でした。

③当たったら死ぬヘリコプターでの着陸の話

これはヘリに乗ってまだ数回目くらいのときに、ヘリコプター乗りの洗礼を受けた話。

ヘリに乗り始めた人は、最初は飛行場内でホバリングで離着陸を練習します。そして「下手くそながらもなんとかできるようになった」くらいのときです。

その日は、ついに飛行場から出てヘリの訓練エリアへ向かいます。

で、どこに行くのかというと「とある山」に向かっていきます。

飛行機と違ってヘリコプターは低高度を飛行する乗り物なので、山肌を縫うような飛び方もします。文字通り山の間を通って飛びます。

そしていよいよ目的の山へ近づいていくと、遠目では見えなかったものが見えてきます。

普通に木がびっしり生えている山なのですが、山頂だけ円形に木が伐採されています。てっぺんハゲのようなイメージです。

これは訓練用に作られた場所なので、ちょっと参考になる写真が見つからなくてすみません。

とりあえず、5mとか10mとかの木が生え揃っている山で、山頂だけ直径30mか40mかわかりませんが、そのくらいの円形の空き地になっています。

で、もうわかると思いますが、この山頂にぽっかり空いたスペースにヘリで着陸しろということです。

僕より上の世代だとわかると思いますが、マジンガーZのパイルダーオンみたいなイメージです。

もちろんヘリが着陸するために十分なスペースはあるとはいえ、こちとらまだヘリに乗り初めてまだ数回のド素人です。

ご存知の通りヘリコプターは何メートルもあるローターブレードをブンブン回しながら飛んでいるわけで、このローターが少しでも木に接触したら即死です。

車でいうところの「少しでもかすったら爆発する縦列駐車」みたいなところでしょうか。

もちろん、ヘリコプターは車より全然大きくて「テールローターがどの辺の位置にあるか」なんて初心者パイロットの感覚だと全然把握できていません。後ろ向いても見えないですし。

加えて山の上なので、ホバリングを安定させようとしてるヘリを乱れた風が煽ってきます。

そんな中でパイルダーオンしなければならない。

周囲360度を木に囲まれた状態なので、どっちの方向にズレて接触しても死にます。

「当たっちゃダメだ」「当たっちゃダメだ」と全集中で手汗をかきながら着陸した記憶があります。

で、なんとか無事に着陸して、周りを見渡すと本当に360度木に囲まれてて山の外は見えない状態です。

死ぬかと思ったと同時にヘリってスゲーなと感動した経験です。

もちろんこのあと、着陸した穴から抜け出さなければならないので、再び死の恐怖と戦うことになりましたという話です。

④海に突っ込みそうになった話

ソロフライトでナビゲーション(航法)の訓練をしていたときの話です。

ナビゲーションというのは、事前に計画を作ってから飛んで、上空で地図を見ながら場所を把握したり、風を計算して計画していた時間や燃料を調整したりして、申告した時間から誤差プラマイ2分以内で着陸するみたいなやつです。

その日は天候も穏やかで、温かい日差しが降り注ぎ、訓練生にとっては易しいナビゲーション日和でした。

ナビゲーションの途中で特定のポイントからポイントへ向かって洋上を飛行していたとき、進路上に雲が現れました。

VFRで飛行していたので雲を避けなければいけません。

有視界飛行方式(VFR:visual flight rules)
目視で飛ぶ。つまり雲の中とか天気悪いとかで視界を失う状態では飛んじゃダメなやつ。

ナビゲーションで飛行時間の計算があるので、左右に避けると飛行距離が変わって計算が面倒です。速度・経路を維持したまま雲の上か下に避ける方が簡単です。

その時は、雲の状態をみて「雲の下」を通ることにしました。おそらく1000ftも下がれば雲を回避できそうです。

高度を変えるためにパワーを絞って速度を維持したまま降下の姿勢に入れます。

その時問題が起こりました。

気がついたら海面がめちゃくちゃ近いのです。

==その時の僕の脳内==
1 海面が近い
2 高度計チェック
3 予定の高度より低くなっている
4  3とほぼ同時にパワー足す&ピッチを上げて降下レート止める
5 高度下げすぎたことが教官にバレたら怒られるから
 なるべく大きい動作はせずに違和感がないように高度を戻そう
6 ジワッと高度が戻せるように絶妙な上昇レートになる飛行姿勢を作る
==ここまで0.2秒==

さて、水平飛行に戻して落ち着いたところで考えます。

何が起こったのかというと僕は一瞬落ちていました。

ブラックアウトとかレッドアウトとかではなく寝落ちていました。飛行機を降下姿勢にいれたまま。

意識が飛んでいた時間がもう少し長かったらそのまま海面に突っ込んでいたかもしれません。

そのあとは、普通にナビゲーションを継続したのですが、高度を下げすぎたことを教官や管制の人にバレてないかどうかだけが心配でした。
バレてたら飛行機降りたあとのデブリーフィングでめちゃくちゃ怒られるので。

結果としてミスしたことはバレずに済みました。たぶん。

ここで言い訳をしておくと、コクピットって太陽光がめちゃくちゃ入ってきて温かいし、飛行機の絶妙な音と振動で眠くなるときがあるんですよ。

車でも高速道路で一定速度で真っ直ぐ走ってると、暇すぎて眠くなることありませんか?アレと同じ感じです。

訓練生のときは毎日深夜2時くらいまで翌日のフライトの準備して、朝6時には起きて当日のウェザーチェックして飛行計画作り直すみたいな生活をしてたので、そりゃ眠くもなるってもんです。

ということで海に突っ込みそうになったヒヤリ・ハットでした。

飛行機飛ばしてるときは寝ないようにしましょう。

まとめ

航空機の事故率はとても低いですが、万が一事故が起こったときはほぼ確実に死ねる乗り物です。

僕は性格的に集中力に波があるタイプなので、もし飛行機乗り続けてたら今ごろ死んでたかもなーとか思っています。

今のところまだ生きているので良かったです。

それでは、皆さんもぜひぜひ「安全第一」でお過ごしください。

ご視聴ありがとうございました。





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