位置エネルギーと速度(運動エネルギー)の関係を理解すれば航空機の高度変更の方法がわかる
位置エネルギーの感覚的な説明と、航空機ではどのような使い方をしているのかという話をします。
位置エネルギーとは言葉では以下のように定義されます。
位置エネルギー(いちエネルギー)とは、物体が「ある位置」にあることで物体にたくわえられるエネルギーのこと。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%8D%E7%BD%AE%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC
この言葉だけだと意味わからないですし、ここは物理の授業ではないので、感覚的にわかる言い方で進めていきます。
位置エネルギーと速度エネルギーの関係
航空機では位置エネルギーは速度との関係で使います。
物理学的には「物体は外部から何かしらのエネルギーが加わらないと動かない」ということになっています。
例えば、地面にボールが置いてあったとして、外からの力が加わらない限りは、そのボールは動きません。
男の子がやってきてボールを蹴ると飛んでいきます。外からの力が加わると動きます。
これがエネルギー保存の法則。
しかし、ボールが下り坂に置かれていたとすると、ボールを蹴らなくても(力を加えなくても)勝手に転がります。
高さが低くなって速度が生まれる。
位置エネルギーが速度エネルギーに変換されたということになります。
高いところから物を落としたときも同じ。下に向かって投げなくても、勝手にスピードがついて落下していきます。高さが減って、その代わり速度が増える。
逆に、転がっているボールが上り坂に差し掛かったとします。
すると、ボールは坂を登りながら(高さが増えながら)速度が落ちる。
これが、速度エネルギーが位置エネルギーに変換されたということです。
ジェットコースターなんかわかりやすいかもしれませんね。最初の位置エネルギーで最後までコースを走り切るやつ。
位置エネルギーと速度エネルギーの関係はこんな感じで、感覚的に理解しておけば大丈夫です。
飛行機の位置エネルギーを使った高度の変え方
前提として「航空機は基本的に一定の速度を保って飛行している」ということだけ知っておいてください。
180ktで飛ぶのであれば、180ktを維持して飛びます。速度を一定にしておかないと、航法ができないからです。
航法というのは、
この速度で何分飛んでいるからこのくらいの距離で、目的地には何時何分に到着するはず。
という計算をしたり計画したりするもの。速度が一定でないとこの計算ができません。とりあえず飛行機は一定の速度を保って飛んでいます。
ですので、航空機が飛行中に高度を変更するときも、速度は変えません。
飛行機の高度変更はピッチの上げ下げで行っているというイメージを持つ人もいると思いますが、それだけだと不正解です。
NASA / Public domain
※ピッチというのは機種(ノーズ)が上むいてるか下むいているかの動きのこと
ピッチを上げると確かに高度は上がりますが、それだと速度が減ってしまいます。エネルギーが一定の状態で高度をあげようとすると、速度エネルギーが位置エネルギーに変わるからですね。
ですので、高度を上げるときはまずエンジンのパワーを足します。ここで余剰のエネルギーが生まれる。
すると、航空機の速度が増加しようとするので、速度が増えないようにピッチを上げて姿勢を調整します。
こうすることで、速度一定を保ったまま、足したパワーの余剰分のエネルギーで高度が上がっていくという流れ。
上昇率を増やしたいときは更にパワーを足して、同じように速度が変わらないようにピッチを調整すればOKです。
高度を下げるときはこの逆。
まずはパワーを絞る。で、速度が減らないようにピッチを調整。
すると、不足したエネルギーの分、高度が下がっていきます。
こんな具合で、高度を変えるだけでもエネルギーがどうなっているという理屈を理解した状態でないと操縦できません。まぁ慣れれば適当にできるようになりますが。
車で速度コントロールをやってみて
位置エネルギーと速度エネルギーの関係は車でもあります。
アクセルの開度一定(パワー一定)で道路に勾配があると速度が変わってします。
車を運転する機会がある人は試しに速度を一定に保つアクセルワークにチャレンジしてみると面白いです。
ちなみに、カーブでの速度維持は危ないのは辞めてください。
あくまでも「ほぼ直線の道路で、勾配が上がったり下がったり変化する道で」です。
決めた速度からプラマイ5キロ以内を維持し続けることにチャレンジする。例えば60kmなら、速度計が55〜65の範囲から外れないようにキープする。
慣れて来たらプラマイ3キロ以内とか挑戦してみるといいかも。
で、このときに速度計にばかり目線や意識が止まっていると外を見れなくなるので事故ります。
あくまでも目線は外・正面を見続けながら、速度計を一瞬だけチラっチラッと定期的に確認。1〜3秒に1回くらい。ちなみにこういう計器の見方をクロスチェックといいます。
速度計の今の位置(数字)と変化レートを把握しながら、速度を一定に保つ。
上り坂で速度が減らないように、下り坂で速度が増えないように。
パイロットがやっている計器チェックやコントロールをちょっとだけ体感できると思います。
ではまた!