一般的な天気予報と航空気象の違いは?パイロット的な天気の見方・使い方
日頃目にしているいわゆる「天気予報」と、パイロットや航空業界の気象予報士さんが見ている天気との違いについて話てみたいと思います。
両者の一番の違いはその目的です。
一般的な天気予報は、人々の生活や経済活動への影響がある要素を予想していると思います。
例えば
「晴れ・曇り・雨」という天候によって、雨なら傘が必要だし、晴れならピクニックや屋外イベントが出来るとか。
「気温」によって最適な服装を選択できます。経済活動で言えば、暑いとかき氷が売れるし、寒いとおでんが売れるとか。
「湿度」なら、今日はジメジメするから髪型がまとまらないとか、熱くて湿度も高いと熱中症になりやすいとか。
こういった、私達の生活にどのような影響があるかの判断材料を提供するのが一般的な天気予報かなと思います。
対して、航空気象はその目的が違います。
目的はざっくり言うと2つ。
①フライト可能かどうか
②(可能なら)フライトの計画をどうするか
この判断をするための航空気象です。
では、フライトの可否や計画を決めるうえで、どのように気象を見ているのか簡単に説明してみます。
①フライト可能かどうかの判断
Go or NOGO って言ったりしますね。
何がフライトの可否を決めるかというと、主に飛行場に離発着できるかどうかです。
飛行場・航空機の種類などによって制限の数字は変わりますが、次のような要素で決まります。
・風
・視程
・シーリング
■風は横風の強さです。
基本的に、真正面からの風であればどれだけ強風でも飛べるんですけど、横風が強いと離発着が難しくなります。
飛行場は、その場所や地形によって、よく風が吹いてくる方向に合わせて滑走路が設置されてるので、ほとんどの場合は風上に向かって離発着できるよになってます。
ただ、やはり自然相手ですので、横風が強くなることもあります。
飛行機みたいに、あんな大きい羽がついてる物体が横風を食らうと煽られてフラフラしそうなのはイメージできるかと思います。
離陸もそうなんですが、横風が強いときの着陸とか結構大変なんですよね。
ということで、横風成分が一定以上だと離発着ができません。
■視程というのは何キロ先まで見通せるか
見通しの距離ですね。一定の視程が無いと滑走路が見えないので離発着できません。
例えば雲の中に入ったら視程がゼロということになります。
普段空にある雲ですが、これが地面にくっついてる場合は、霧(濃霧)ですよね。
あとは、強い雨が降っている時や空気が何かしらで汚いときなんかも視程が悪くなります。
■シーリングは雲底の高さ
シーリング、日本語にすると天井。雲底(雲の底)の高さです。
視程の話とも関わってきます。
例えば、地上では遠くまで見通せる天候であっても、シーリングが低いと離陸直後に雲に突っ込んで視程がゼロになるということです。
着陸の場合は、滑走路に接地する直前まで、滑走路が目視できないということになります。
飛行機は離発着が一番重要だし危険なので、ある程度のシーリング(雲までの高さ)がないと離陸も着陸もできません。
こんな具合で
・風
・視程
・シーリング
で、そもそもフライトが可能かどうか(GO NOGO)を判断します。
METER・TAF
では、この風・視程・シーリングをどうやって確認するかというとMETERとかTAFという飛行場ごとの予報を見られるようになってます。
こんなやつです。
これを訳すと
・RJTT 羽田
・301800Z 30日18時00分(UTC)の観測 世界標準時刻の意味 Z=ズルタイム
・16005KT 160度05ノットの風
・9999 視程10KM以上
・FEW010 1000FTの高さに1/8〜2/8の雲 (雲底と雲量)
その後は気温とか湿度とか気圧とか、その他もろもろの気象状態が続いている。
これを離陸する飛行場と、着陸する飛行場の両方をチェック。フライト直前まで観測が更新されるので、前日までの予想(予報)を修正して、当日フライトの可否を判断する。
②フライトの計画に対する影響
飛行場や航空機の条件としてのフライトの可否と並行して、飛べるならどう飛ぶの?というところ。
天候によって、経路を変える必要もありますし、風の強さが変わればフライト時間も変わります。
すると、到着時間の変更が必要になるかもしれませんし、搭載する燃料の量を変更する場合もあります。
あとは、フライトの目的によって影響がある場合も。
例えば、写真撮影が目的のフライトの場合。
いくら天気が良くても、撮影したい場所にポツンと雲があったら仕事できないですよね。
こういう場合は、じゃあ2時間くらい待てば雲がなくなるかもなーみたいに天気を見たりします。
パイロットは天気予報もできるのか
パイロットは天気予報もできる?と質問された場合の回答としては
・一般の人よりは出来る
・ただ、一般の人が思っている天気予報とやってることが違う
ちなみに、せっかくある程度気象の勉強をするならと、個人的に気象予報士の資格を取得するパイロットもいます。
ギリギリ飛べる時が一番つらい
余談ですが、
飛べるか飛べないか微妙なラインの天候で、「ギリギリ飛べる」と言うときが一番精神的につらいです。
直前まで、フライトがキャンセルになるかどうかソワソワした状態が続きますし、そそれでいざGOとなると「うわーこの悪天候で飛ぶのか・・・」となります。
パイロット経験ある人なら共感していただけるはず。
まとめ
ということでパイロット的な天気の見方・使い方の例でした。
天候不良でフライトが遅れたりキャンセルになったりすることもありますが、パイロットも頑張ってますのであまり怒らないであげてくれると嬉しいです。
ではまた。
参考情報
METER・TAFが見れるサイト
http://www.imocwx.com/i/
https://www.japa.or.jp/safety-info-links/weather-japan
滑走路と風
https://trailsofwind.figures.cc/